残暑を詠んだ短歌  今日の鎌倉は「残暑」の1日.台風による気候の変動,そしてお盆休みも終わった現時点では,違和感なく残暑という言葉を使える気がしますが,残暑という言葉が一般的になったのは,比較的最近のことかもしれません. 幼子をもつゆゑにころすわが怒り白き残暑のひかりの中に 木俣修  あはあはと日の射してゐる竹群(たけむら)の梢も桃の梢も残暑 佐藤佐太郎 [付録:お盆の日付の不思議] 

今日は,お盆の8月15日には行けなかった墓参りに.

よく晴れた芝生墓地は,アキアカネが飛び交い,さるすべりが満開でした.

アキアカネの写真撮影は,残念ながら叶いませんでした.昆虫ではオオスカシバがアベリアの蜜を吸いに来ていました.赤褐色の帯が,特にきれいに見えました.

[お盆の日付の不思議]

 元々のお盆の行事は旧暦7月15日.仏教の盂蘭盆に起源を持ち,民間に広く浸透していました.https://kotobank.jp/word/盂蘭盆

 旧暦7月15日は,今年だと8月30日に当たります.現在,この旧暦でお盆を行っているところはないのでは?と思って調べてみると---沖縄,南西諸島では,この「旧暦盆」で行事を行っているとのこと https://www.lifedot.jp/column-001/

 お寺などで行われる盂蘭盆会は,新暦の7月15日に行われるところが多いと思います.地方によっては民間でもこの日をお盆としています.こちらの名前は「新盆」.暦の新旧にかかわらず,「7月15日」という日付を優先して行事を行うと言うことでしょう.新暦移行後,節句などの多くの行事がこのような原則で行われていたのに倣ったのかと思います.

新暦8月15日がお盆」は,現在,広く定着しています.しかし,「新暦8月15日はお盆」とした理由はよくわかりません.8月15日には,根拠がみあたりません.「新暦8月15日がお盆」は「月遅れ盆」と呼ぶことがあるとのこと.上記「新盆」の一月遅れをお盆としたということですね.7月15日ではお盆の季節感がないため一ヶ月遅れとしたようにも思います.そうだとすれば,かなり大胆な知恵ですね.

「月遅れ盆」の定着が,いつ頃からなのかについては,ネット上の情報はわずか.昭和20年代かもしれません.

宮城県三陸の行事を記録した冊子「波伝谷の民俗」によれば

https://www.thm.pref.miyagi.jp/archives/book_pdf/minzoku/hadennya_minzoku.pdf

「盆行事は昭和30年代には月遅れの新暦で行われていた.旧暦から新暦に移行した時期は明確ではないが,昭和20年代にはすでに月遅れであったという」

この記述からすると,「新盆」に移行することなく,旧暦に従ったお盆(今年だと8月30日)から,「月遅れ盆」に移行したのだと思います.日本の多くの地域でも,旧暦盆⇒月遅れ盆への移行という過程があったのでしょう.

 

 

 

鎌倉の今日の気温は,最高気温32℃,最低気温27℃.夜8時の時点で,28℃.湿度はなんと95%!

残暑です.

立秋過ぎてすぐの日々,残暑という言葉はやや使いにくい気分でした.しかし,台風による気候の変動,そしてお盆休みも終わった現時点では,違和感なく残暑という言葉を使える気がします.

 

ただし,残暑という言葉が一般的になったのは,比較的最近のことかもしれません.少なくとも,短歌では,残暑という言葉は,現代短歌で初めて表れる言葉とのこと(古今短歌歳時記)

日本国語大辞典では,初出としては,漢文で書かれた「釈氏往来」(12世紀)が挙げられていますが,漢文でもそれほど多く用いられているわけではないようです.

中国でも,古今短歌歳時記(鳥居正博)によれば,「唐代の詩に時折見られる」のみ.

 

 

残暑を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

秋きても猶夕風をまつがねに夏をわすれぬ陰ぞ立ちうき  藤原定家 六百番歌合

 

宮城野や秋なほあつき木のもとの露なき草に風をまつかな  賀茂真淵 賀茂翁家集

 

秋の立つ昨日の風は身にしみてけふは暑さに又かへりぬる  小沢蘆庵 六帖詠草

 

樫の木に幹より赤き液が滴(た)立秋すぎのしづかに暑く  山下陸奥 冬霞

 

地震すぎて四十八年と思ふとき秋の暑さははだへにとほる  鹿児島寿蔵 練馬

 

幼子をもつゆゑにころすわが怒り白き残暑のひかりの中に  木俣修 落葉の章

 

あはあはと日の射してゐる竹群(たけむら)の梢も桃の梢も残暑  佐藤佐太郎 群丘