西瓜を詠んだ短歌  美味しくなつている小玉スイカ.負けずと大玉スイカにも新品種が開発されています.今年もう一回食べたいもの. 西瓜割れば赤きがうれしゆがまへず二つに割れば矜(ほこ)らくもうれし 長塚節  ごろごろと土間にころがる青西瓜一つ一つに大きかりけり 三ヶ島葭子  碧き珠の大西瓜なれ食ひて見ねば讚め得ずとにかく刃をあておろす 阿部静枝  西瓜切る妻の傍に座を占めてその眼見張りてゐるや男童 大岡博

夏の果物といえば,スイカ

一時期,人気に陰りが出たように思いましたが,最近は美味しい小玉スイカが沢山開発され,人気を盛り返してきているように思います.

ネットで検索すると沢山の人気品種の名前が:

ひとりじめ,スウィートキッズ,黒子玉,姫まくら,マザーボール,たべて味たべてみぃ,まなむすめ,大和小町クール----

http://www.sunfruits.co.jp/gallery/item/?f=wa0016

 https://mi-journey.jp/foodie/40417/

https://www.tsukijiichiba.com/user/product/25354



もちろん,今までも大玉の品種開発も進められています:

祭りばやし,祭りばやし777,縞王,味きらら,「祭ばやし」「縞無双」「植木」「富士光」「春だんらん」「肥後浪漫」 「紅大(こうだい)」 ---

http://www.monoqshop.jp/shopdetail/000000000285/ 縞王 スイカ 味きらら スイカ 



日本の果物・野菜の品種開発力は,世界でも有数ですね.

 

漢字「西瓜」は中国語で,スイカという呼び名もこの漢字由来と考えられています.スイカの日本渡来は江戸時代ですが,中国からではなく,ヨーロッパ経由と言われています.スイカとは - コトバンク 西瓜・水瓜とは - コトバンク

明治以降,種々の栽培品種が外国から導入されましたが,日本独自の品種として選抜されたのが「大和」〜「大和4号」.これらを母体として次々と新しい品種が生み出されていったようですhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/66/8/66_314/_pdf https://suika-net.co.jp/user_data/history

 

イカ(Citrullus lanatus)は、世界で広く栽培されている果物で、1,000以上の品種があるとのこと.

Watermelon - Wikipedia

イカに最も近い野生品種(コルドファン・メロン)がスーダンで発見されたことなどから,

https://www.smithsonianmag.com/smart-news/researchers-uncover-watermelons-origins-180977872/

イカの起源はスーダン近辺の南アフリカと考えられます.

A chromosome-level genome of a Kordofan melon illuminates the origin of domesticated watermelons | PNAS

Watermelon - Wikipedia

大昔から栽培されていて,リビアの先史時代の遺跡「ウアン・ムフギアグ」から野生のスイカの種子が発見されています.また,古代エジプトファラオの墓からもスイカを栽培していた証拠が発見されています.

https://www.smithsonianmag.com/smart-news/researchers-uncover-watermelons-origins-180977872/


はじめは,果物としてよりも水分貯蔵に役立っていたのではないか(スイカはとても長持ちする)と考えられっているスイカ.古くは黄色だったものが11世紀以降,赤いスイカが選抜され,同時に甘みも増したとのこと.

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/a/082500029/

現在は,以前と比べものにならないほど美味しい西瓜を食べることができます.8月も半ばを過ぎました.今年もう一回は,西瓜を食べようかと思っています.

 

 

西瓜を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

砂畑にごろりごろりと転がりて寄りどころなしや末生(うらなり)西瓜  窪田空穂 さざれ水

 

西瓜割れば赤きがうれしゆがまへず二つに割れば矜(ほこ)らくもうれし  長塚節 長塚節歌集

 

やや暑き山の日ざかりの心よく大き西瓜をわりにけるかも  古泉千樫 青牛集

 

ごろごろと土間にころがる青西瓜一つ一つに大きかりけり  三ヶ島葭子 三ヶ島葭子全歌集

 

碧き珠の大西瓜なれ食ひて見ねば讚め得ずとにかく刃をあておろす  阿部静枝 冬季

 

西瓜切る妻の傍に座を占めてその眼見張りてゐるや男童  大岡博 南麓

 

西瓜の汁とび散るほどにかすかなる血だまりはるかなる潮だまり  平井弘 前線

 

西瓜ぱくりと割るる爆笑この国の男それぞれの深紅の孤独  佐佐木幸綱 火を運ぶ

 

吐き捨てし西瓜の種子は日盛りに乾きつつあり恥の如しも  久葉堯 海上銀河