テッポウユリが咲きました.
青空も似合いますが,雨に濡れながらも,梅雨空を背景に,すくっと咲いているさまは,うっとうしい気分を爽やかにしてくれます.
中部地方以西は,全地域で梅雨入りが発表されました.
関東地方の梅雨入りも,例年より早めで,「梅雨前線が北上する2日金曜には、関東甲信や北陸も梅雨入りの発表がありそうです」とのこと.https://tenki.jp/forecaster/gureweather/2023/05/30/23455.html
五月雨の季節になりますね.
梅雨と五月雨
梅雨と五月雨は,「梅+雨」「五月+雨」と言葉の組み合わせは似ていますが,使い方が違いますね.
梅雨は時期を,五月雨は雨そのものを表すのが一般的な使い方でしょう.五月雨には梅雨と同じように時期を表す意味もあるとのことですが---そのような使い方をしているのを見たり聞いたりしたことが,私にはありません.
日本国語大辞典によれば
梅雨:六月前後の、雨やくもりの日が多く現われる時期をいう。また、その時期の気象状況。----五月雨さみだれ。
《季・夏》 〔文明本節用集(室町中)〕
五月雨:陰暦五月頃に降りつづく長雨。また、その時期。つゆ。梅雨ばいう。さつきあめ。
*古今(905−914)夏・一五四
「五月雨に物思ひをれば郭公夜ふかくなきていづちゆくらむ〈紀友則〉」
*俳諧・奥の細道(1693−94頃)最上川
「五月雨をあつめて早し最上川」
上記,日本国語大辞典の使用例にあるように,五月雨は古今集以降の短歌に詠われています.
古今短歌歳時記(鳥居正博)によれば,鎌倉末期の夫木抄には,五月雨の題下に九一首もの歌が挙げられています.
一方,“古歌では「さみだれ」で詠まれるが,「梅雨」はでてこない” とのこと(古今短歌歳時記).
理由としては,次のようなことが考えられます.
▽梅雨という言葉自体が,比較的遅く生まれた言葉(日本国語大辞典の例示では「文明本節用集(室町中)」).
▽「梅雨が日常語的なのに対し,五月雨は雅語的色彩が強い」(古今短歌歳時記)
五月雨を詠んだ短歌
(古今短歌歳時記より)
五月雨に物思ひをれば時鳥(ほととぎす)夜ふかくなきていづちゆくらむ 紀友則 古今集
五月雨のそらもとどろに時鳥なにを憂しとか夜ただ鳴くらむ 紀貫之 古今集
五月雨にみだれそめにし我なれば人をこひぢに我ぞぬれぬる 凡河内躬恒 古今六帖
さみだれの月はつれなきみ山よりひとりも出づるほととぎすかな 藤原定家 新古今集
つれづれの蘆屋(あしや)の海人(あま)のをぐしさす五月雨髪や干さで寝(い)ぬらん 藤原家隆 夫木抄
五月雨は今ふりやみて青草の遠(おち)の大野を雲歩みゆく 太田水穂 つゆ艸
さみだるる せと の をばやし したぐさ に けさ を にほへる くちなし の はな 会津八一 寒燈集
さみだれは何に降りくる梅の実は熟みて落つらむこのさみだれに 斎藤茂吉 赤光
さみだれの夜ふけて敲(たか)く 誰ならむ。まらうどならば,明日来りたまへ 釈迢空 海やまのあひだ
さみだれの雨間の夜なり灯を受くる草木の葉うら深き闇もつ 初井しづ枝 花麒麟
さみだれの雨あしながし唐寺の丹ぬりの壁に夕ふかくして 大熊長次郎 蘭奢待
おとろへて蛇のひものの骨を嚙むさみだれごろのわが貪着よ 坪野哲久 新宴
鶏はめしひとなりて病むもありさみだれの雨ふりやまなくに 佐藤佐太郎 帰潮