シャクヤク(芍薬)を詠んだ短歌 大船フラワーセンターの芍薬を見に行つてきました.とても沢山の品種が揃えられ,十分満足できました.オオタニベニなどの名も. 芍薬のあえかにしかもうす紅にうるほひあまる花に手をふる 太田水穂  押し黙りながむるわれにくれなゐに燃えては熱(ほ)めく芍薬の花 川田順  ほのかなる白のふくらみ庭陰の山芍薬に一花の生(あ)る 千代国一  吾にはげしき夏くる兆し芍薬の花芯にほそきくれなゐ見ゆる 安永蕗子

わが家には,シャクヤクが二株あって,その内の一株はかなり前から咲いています.

ほとんど手入れしなくても,肥料を忘れなければ咲いてくれる芍薬は,孝行者です.

「もっと手入れされたシャクヤクを見てこよう」と,大船フラワーセンターへ行って来ました.

この園の植物の充実度は全体としてかなり高い中,特にシャクヤク園は全国有数の規模を誇ることで知られています.

https://garden-vision.net/garden_visit/visit_ohuna_s.html

https://www.fcofuna-kanagawa.jp/guide/

花が終わった株もありましたが,十分満足することができました.

それにしても,なんと沢山の品種があることでしょう.以下の写真はほんの一部.正確には分かりませんが,100種ぐらいあった気もします.

 

こんな名前が付けられた品種もありました.ショウヘイベニという名前も見つけましたが,既に咲き終わっていました.

 

シャクヤクは,ほぼ全てが,Paeonia lactiflora Pall.という一つの原種ユキノシタ目ボタン科ボタン属)が元になっています.

初めは薬用として中国から入つてきたシャクヤク(⇒芍薬は「はっきり目だつ(勺)薬草」の意味).

江戸時代以降,沢山の園芸品種が生み出されてきました.一方ヨーロッパでも品種改良が進められ,現在はボタンなども含め,幅広い品種が作出されているとのこと.

シャクヤクの品種について,主にニッポニカの記事からまとめると以下の通り.

https://kotobank.jp/word/シャクヤク-841116

日本にシャクヤクが伝わったのは,奈良時代といわれています.ただし,これは薬用(鎮痛,鎮静の効果を持つ).漢字の芍薬は「はっきり目だつ(勺)薬草」の意味.

鑑賞用の品種が広まったのは,江戸時代.特に元禄期に一挙に品種がふえました.

シャクヤクの原種は,シベリア、中国、モンゴルなどに分布するPaeonia lactiflora Pall.で,日本で改良された品種は日本シャクヤクと呼ばれます.

一方,ヨーロッパには中国から導入され,フランス,イギリスなどで品種改良が行われましたが,これらはヨウシュシャクヤクと呼ばれています.

洋種はおもに八重咲きで,芳香のあるものが多いのに対し,日本種には花芯がいろいろと変化した独特なものがあります(一重咲き、八重咲き、金しべ咲き、おきな咲き、冠咲き、手まり咲き、バラ咲きなど).

そして,最近はボタンなども含め,幅広い種間交雑がなされ,多数の園芸種が作出されているとのこと.

 

シャクヤクを詠んだ短歌

(古今短歌和歌集より)

 

芍薬のあえかにしかもうす紅にうるほひあまる花に手をふる  太田水穂 螺鈿

 

押し黙りながむるわれにくれなゐに燃えては熱(ほ)めく芍薬の花  川田順 鵲

 

瓶にさす花もたずして生ひいでし葉の上(え)に細し五月雨のあめ  松村英一 やますげ

 

花すぎて手入れ終へたる芍薬のただ青々し真日照らふ園  吉田正俊 黄芪集

 

あした開き夕べ閉ぢつつ芍薬の花は昨日より今日しどけなし  柴生田稔 麦の庭

 

ほのかなる白のふくらみ庭陰の山芍薬に一花の生(あ)  千代国一 天の暁

 

吾にはげしき夏くる兆し芍薬の花芯にほそきくれなゐ見ゆる  安永蕗子 草炎