鶯を詠んだ短歌  姿を見せないことが多いウグイスですが,鳴き声は古来から愛されてきたウグイス(同属のフィリピンウグイスは似ていますが異なる鳴き声です)は,万葉の頃から歌に詠まれてきました. 春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげに鶯鳴くも 大伴家持  うちなびき春さり来ればひさぎ生ふる片山かげに鶯ぞなく 源実朝  あたたかき心こもれるふみ持ちて人思ひ居れば鶯のなく 伊藤左千夫  世をかへてあらたに君を恋ひむ日も同じ声もてうたへ鶯 川田順

春から初夏は,鳥の鳴き声を特に多く聴くことができるように思います.

昨日,観音崎公園を歩いたときにも聞こえてくるのですが,鳥の名前は分かりません.

唯一分かるのが鶯.

今の時期,鎌倉の山道や山沿いの寺院でも鶯の鳴き声をたくさん聴くことができます.

 

他の鳥の鳴き声も聞き分けられたらいいのにと思いますが---


www.youtube.com

 

鶯は,鳴き声は聞こえても,姿を見ることはなかなかできません.「いつもヤブの中にかくれていて姿を見せないことが多い」https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1384.html

鳥なんですね.

英語では,わざわざbushを付けた名前で呼ばれています.(うぐいす=Japanese bush warbler https://en.wikipedia.org/wiki/Horornis

 

 

私は二度ほど見かけたことがあります.

一度はもう10年程前.畑の横のブッシュの中で鳴いていました.ただし,この時は枝に隠れていて,全身を見たとは言いがたい状況でした.

もう一度は,つい10日ほど前.何と,わが家の庭の木の下枝に来ていました.鳴いていたわけではないので,断言できない---.とはいえ,私の見るところでは鶯.私に気づいてか,さっといなくなってしまいましたが.

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/ウグイス

https://en.wikipedia.org/wiki/Horornis

Cettia diphone (crying).JPG

なお,ウグイス属には,日本のウグイス(Horornis diphone)の他,

フィリピンウグイス(H. seebohmi),チョウセンウグイス(H. borealis)
などが属します.

https://ja.wikipedia.org/wiki/ウグイス https://en.wikipedia.org/wiki/Horornis

 

別種とされるウグイスの鳴き声はどのようなものなのでしようか?

フィリピンウグイスの鳴き声を聞くことができるサイトがありました.比べてみて下さい.

ウグイス https://ebird.org/species/jabwar

フィリピンウグイス https://ebird.org/species/phbwar1

日本ウグイスと同じく,幾種類もの鳴き声を持つているようですが,その内「ホーホケキョ」に相当する音声もあります.しかし,似ているけれど明らかに異なります.日本の方が美しい?

 

 

 

姿は見えずとも,その鳴き声で,古来より愛されてきた鶯は,万葉の頃から短歌にも詠まれてきました.

 

 

鶯を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

春山のキリに迷(まど)へる鶯もわれにまさりてもの思はめや  柿本人麻呂歌集 万葉集巻十 一八九二

(春の山に立つている霧の中に迷うてゐる鶯も,私以上に思ひ迷うて,ものを考へこんでいませうか. 折口信夫

 

鶯の通ふ垣根の卯の花の憂きことあれや君が来まさぬ  作者不詳 万葉集巻十 一九八八

(鶯が始終往来する,垣に咲いてゐる卯の花で,うるさい心配事でも起こつたので,あの方が一向いらつしやらないのか. 折口信夫

 

あしひきの山谷越えて野づかさに今は鳴くらむ鶯のこゑ  山部赤人 万葉集巻一七 三九一五 

 

春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげに鶯鳴くも  大伴家持 万葉集巻一九 四二九〇

 

春の香をかぜのたよりにたぐへてそ鶯さそふしるべには遣る  紀友則 古今集・春上

(花の香を風という使者に寄り添わせて,鶯を誘う道案内に送ろう. 高田祐彦)

 

春のほどはわが住む庵(いほ)の友になりて古巣な出でそ谷の鶯  西行 山家集

 

うちなびき春さり来ればひさぎ生ふる片山かげに鶯ぞなく  源実朝 金槐集

 

あたたかき心こもれるふみ持ちて人思ひ居れば鶯のなく  伊藤左千夫 左千夫歌集((((ここに脚注を書きます))))

 

和田山は雨けぶらへり昨日(きそ)よりも越えととのへる今朝の鶯  佐佐木信綱 佐佐木信綱歌集

 

うぐいすのあかとき告げて来鳴きけむ川門(かわと)の柳いまぞ散りしく  長塚節 長塚節歌集

 

世をかへてあらたに君を恋ひむ日も同じ声もてうたへ鶯  川田順 陽炎

 

鶯の身じろく音の あはれなり。 命死なざるものゝ かそけき  釈迢空 水の上

 

水の上に死の鶯の眸(まみ)とぢて恥うつくしき日々は過ぎたり  塚本邦雄 青き菊の主題

 

おい黙れ。何でだまるの。いざ聴かむ。かのうぐいすの気色ばみたる  玉城徹 蒼耳