今日は,暖かかったのですが,空はどんより曇っていた1日.
三時過ぎに思い立って,北鎌倉まで.行きはJR,帰りは浄智寺奥の山越えルートをとりました.
中へ入って参拝したのは明月院だけですが,どのお寺の山門も,楓の緑に彩られて,曇といっても清々しい気分になります.
暮春の北鎌倉で出会った花を,紹介していきたいと思います.今日はその第1日目.道ばたの花々.野草は別使いにします.
色鮮やかなのは,ツツジ.種類も多彩.
昨日取り上げた山吹も,今日であったのは八重が多かったように思います.
最も愛らしいと思った花は,ドウダンツツジ(灯台躑躅/満天星).
「灯台」をドウダンと読ませるのは奇妙ですが---
放射状に出る枝の状態が,昔夜間の明かりに用いた「結び灯台」の脚に似ることから,灯台ツツジといわれ,それから転訛(てんか)した」とのこと
https://kotobank.jp/word/ドウダンツツジ-103881
http://www.yasashi.info/to_00008.htm
ヒメウツギ.白さが際立つ花です.
群がって咲いていたのが,シャガ.
こちらは,明月院の手前の土手.
そして,浄智寺山門の手前の群生した姿は,見事なものでした.
わが家では,雑草扱いになりつつありますが.
シャガ(Iris japonica)は漢字で「射干」と表すのが一般的ですが,「胡蝶花」「著莪」とも書きます.
シャガの表記をめぐる話は,ややこしくて簡単には説明できませんが---
(一度ヒオウギのブログで,同様の解説を載せてあり,以下,ほぼ,再録になります
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/12/115813)
▽日本のヒオウギ(Iris domestica)の漢名が「射干」.シャガ(Iris japonica)はこの「射干」を音読した名前となってしまいました.
▽日本のシャガ(Iris japonica)の漢名は「胡蝶花」.日本では「胡蝶花」は三色スミレの異名としても用いられていますが,「胡蝶花」と書いて「シャガ」とも読みます.
そして,ややこしいことはさらに重なります.
▽ヒオウギ(Iris domestica)の日本の漢字表記は,今では「檜扇」が一般的ですが,漢名の「射干」も用いられ,短歌の世界では,「射干」に「ひおうぎ」のルビがふられているのがむしろ一般的.ちなみにヒオウギの実=「ぬばたま」は「射干玉」です.
▽上記のような混乱は,植物の名前を間違えることにもつながり---
かの斎藤茂吉は,シャガをヒオウギと思い込んでいたのではないかとの指摘があります.https://blog.goo.ne.jp/mayanmilk3/e/eb18c19f25fb1eb8af12976f94fa4962:この方の指摘は正しいと思います.
https://ja.wikipedia.org/wiki/シャガ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒオウギ
また,私がいつも引用に使わせていただいている「古今短歌歳時記 鳥居正博 教育社」では,シャガとヒオウギを詠んだ歌が,一緒にまとめられています,
その中から,シャガを詠んだと思われる歌だけピックアップしてみます.
(既に昨年,ヒオウギのブログhttps://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/12/115813
で取り上げましたが,追加して掲載します)
シャガを詠んだ歌
胡蝶花(しゃが)の根に籠(こも)る蚯蚓(みみず)よ夜も日もあらじけむもの夜ぞしき鳴く 長塚節 (長塚節歌集)
熊笹のほしいままなる繁りなりかたより咲けりしゃがの幾本 佐佐木信綱 山と水と
なぞへには胡蝶花(しゃが)のしげみに風ふきて貧しく住みし去年(こぞ)のおもかげ 佐藤佐太郎 歩道
しづかなる著莪(しゃが)ひと群(むら)を雨うちて午後の曇の果つる際を見つ 宮柊二 小紺珠
いにしへの嘆ける人の逃れみち流されみちに咲くしゃがの花 福田栄一 詠吟
悲しみに馴れつつおればあたたかく岸べの胡蝶花(しゃが)が近づいてきぬ 花山多佳子 樹の下の椅子