身近な秋の実1  秋はドングリ以外にも多くの木の実がみのる季節.この二三日の間に出会った木の実の画像を紹介します.チャノキは妙法寺.アオキは八雲神社の裏山で.マンリョウ,センリョウ,サンザシが真っ赤になるまでにはまだ時間がかかりそうです.一方,妙法寺で出会ったサネカズラの実は,この時期でも一部は赤く鮮やか.美しい実です. 名にし負(お)はば 逢坂山(あふさかやま)の さねかづら人に知られで くるよしもがな 三条右大臣

秋は木の実の季節でもありますね.昨日は取り上げた安国論時には,ドングリが沢山落ちていました.

今日は,この二三日の間に出会った木の実の画像を紹介します.

 

チャノキは妙法寺.アオキは八雲神社の裏山で.

この時期の木の実はまだ青いものばかり.

 

お正月定番のマンリョウ,センリョウも青い実で,見逃してしまいそうです.

 

サンザシの実は赤くなって来ていましたが,真っ赤になるには時間がかかりそう.

花も実も美しい植物.

赤く熟した実は,そのままではおいしくないそうですが,サンザシ酒やドライフルーツとして利用されているそうです.私はまだ食べたことがありませんが,

コノテガシワの実は不思議な形をしています.

熟した後の種は薬用になるとか.

最期に,妙法寺で出会ったサネカズラの実.

鬢付け油として利用したため,ビナンカズラの別名もあるそうです.

今の時期でも一部は赤く鮮やか.美しい実です.

サネカズラは,属名Kadsuraは日本語の葛(かずら)から.珍しい?

(ニッポニカ)

山野に普通にみられ,本州から沖縄,さらには,韓国の済州島,中国大陸南部の暖帯,台湾に分布.干した果実は,滋養強壮や鎮咳(ちんがい)の漢方薬,南五味子(みなみごみし).ただし,南五味子をとるのは本来は同属の植物で,中国産の別種K. longipedunculataとのことです.

 

このサネカズラ.どこかで聞いたことがある名前だと思いませんか?おそらく次の和歌から.百人一首にある歌です.

 

名にし負(お)はば 逢坂山(あふさかやま)の さねかづら人に知られで くるよしもがな  三条右大臣 後撰集・恋,701

 

(恋しい人に逢える「逢坂山」,一緒にひと夜を過ごせる「小寝葛(さねかずら)」その名前にそむかないならば,逢坂山のさねかずらをたぐり寄せるように,誰にも知られずあなたを連れ出す方法があればいいのに.

https://ogurasansou.jp.net/columns/hyakunin/2017/10/17/1090/

 

万葉集から後の勅撰和歌集等では,サネカズラが詠われますが,直接,サネカズラ自体を詠んでいるわけではなく,「掛詞」として用いられています.

上記の百人一首の歌では「さねかずら」を「さ寝」(=一緒に寝ること)にかけています.

ただし,万葉集とその後の和歌集では,使われ方が違っているとのこと.

 

サネカズラ 日本国語大辞典

はい回った蔓が末で逢うということから「逢う」 「のちも逢う」にかかる.また,蔓をたぐるということから,「繰くる」と同音の「来る」にかかる.さなかずら.

*万葉(8C後)二・二〇七

「狭根葛(さねかづら) 後もあはむと 大船(おほぶね)の 思ひたのみて」(長歌の一部)

*後撰(951−953頃)恋三

「つれなきを思ひしのぶのさねかつらはては来るをも厭なりけり〈よみ人しらず〉」

語誌(二について)

⑴「万葉集」には二例あり,いずれも「後も逢ふ」にかかっている.同意の「さなかづら」も「万葉集」では,「後も逢ふ」 「いや遠長く」 「絶えず」にかかり,「さ寝」を導く序ともなっているが,中古以降は用いられなくなる.

⑵中古以降の用法としては,挙例の「後撰集」や「あふ事は絶にし物をさねかつらまたいかにして苦しかるらん」〔木工権頭為忠百首−恋〕のように,「来る」 「苦し」 「絶ゆ」などを掛詞や縁語として多用し,「さね」に「さ寝」をかけたりして用いられた.

 

 

玉櫛笥(たまくしげ) みむろの山の さな葛(かづら) さ寝ずはつひに 有りかつまし  藤原鎌足 万葉集巻二 九四

 

楽しい万葉集

たのしい万葉集(0094): 玉櫛笥みむろの山のさな葛

玉櫛笥(たまくしげ:化粧道具を入れる箱)のように開けて見る,みむろの山のさな葛(かづら).(あなたと)さ寝ずにはとってもいられないですよ.(夜が明けるまであなたと一緒に居たいのですよ.)

・「玉櫛笥(たまくしげ)」で「みむろの山」を,「さな葛(かづら)」で「さ寝」を導いています.

・「みむろの山」は,「神がいらっしゃる山」のことで,この歌では三輪山のことではないかといわれています.

 

 

玉葛(たまかづら) 実ならぬ木には ちはやぶる 神ぞつくといふ ならぬ木ごとに  大伴安麻呂 万葉集巻二 一〇一

 

楽しい万葉集

たのしい万葉集(0101): 玉葛実ならぬ木にはちはやぶる

実のならない木には,(荒々しい)神がつくと言いますよ,実のならない木それぞれに,

大伴安麻呂(おおとものやすまろ)が巨勢郎女(こせのいらつめ)に言い寄った時に,「そんなにつれない態度をすると,(荒々しい)神がつきますよ,」と詠んだ歌です,

「玉葛(たまかづら)」は「実」を導く枕詞です.「ちはやぶる」は「神」を導く枕詞です,