かきつばた(杜若・燕子花)1  実は,まだ間近にカキツバタを見たことがありません.今年こそはどこかで--とは思つていますが.「アヤメ属のなかではもっとも古くから栽培された」「日本原産」とされるカキツバタ.アヤメ(花あやめ)と異なつて,万葉集,古今集でも詠われています.杜若衣(きぬ)に摺りつけますらをの着そひ猟(かり)する月はきにけり 大伴家持  か: からころも き: 着つつなれにし つ: つましあれば は: はるばる来ぬる た: たびをしぞ思う 在原業平 

5月はアヤメ,カキツバタの季節.といっても,カキツバタを近くで見たことのない私.

Iris laevigata - Wikipedia

ハナショウブを中心とした菖蒲園で見ることができるのでしょうか?多くは,より華やかなハナショウブ中心のようにも思いますが---

実はまだ菖蒲園に行ったことがありません.今日思い立って鎌倉明月院の菖蒲園に言ってみたのですが,「6月に開園」とのこと.

明月院に限らずどこかの菖蒲園を訪れてみるつもりです.

 

カキツバタは,「アヤメ属のなかではもっとも古くから栽培され、季語として親しまれ、家紋にも用いられている。江戸時代に園芸化が進み、多くの品種がつくりだされたが、現在は少ない。ニッポニカ 杜若とは - コトバンク 」とのこと.

 

「最も古くから栽培」という点は,古典文学で頻繁に取り上げられていることからも納得です.

 

例えば,万葉集で,アヤメ/あやめ草といえば現在の菖蒲(しょうぶ)のことですが,

カキツバタを詠んだ歌は7首あるとのこと.

 

万葉集』には杜若の歌は七首.「につらう」のほか「にほふ」「咲く」に掛かる枕詞としても知られている.(古今短歌歳時記 鳥居正博 教育社)

 

杜若丹(に)つらふ君をゆくりなく思ひ出でつつ嘆きつるかも (万葉集・二・二五二一) 作者未詳

 

杜若衣(きぬ)に摺りつけますらをの着そひ猟(かり)する月はきにけり 万葉集・一七・三九二一)  大伴家持

 

 

「かきつばた」は,英語版ウィキペディア情報によれば,日本原産とのことです.

Iris laevigata - Wikipedia

実際はどうなのかは他の資料はあたっていませんが,「最も古くから栽培」(ニッポニカ),「カキツバタは中国には産しないから、そもそも歴史的漢名はない」(跡見群芳譜  跡見群芳譜(花卉譜 カキツバタ) )などの記述とは軌を一にするような気もします.

 

なお,英語でJapanese Irisと言った場合には,カキツバタだけではなくアヤメ,ハナショウブも含まれるとのことです.

Japanese iris - Wikipedia

 

因みに

▽「かきつばた」の語源説としては「古来、花汁を用いて布を染めたので”書き付け花”とよばれ、転化してカキツバタとなったという(ニッポニカ)」が有力.

 

▽漢字「杜若」は,誤用(中国語では別の意味)とされています.

 現在の中国版ウィキペディアには,ヤブミョウガ(Pollia japonica)を指す言葉として記載   杜若 - 维基百科,自由的百科全书

 

▽漢字「燕子花」も誤用(中国語では別の意味)との記載があるものの---

 現在の中国語版ウィキペディアには,カキツバタ(Iris laevigata)を指す言葉として記載.  燕子花 - 维基百科,自由的百科全书

日本語からの転用でしょうか?

 

万葉の時代から下って平安時代になると何と言っても在原業平三河の八橋で詠んだとされる短歌が有名.

 

か: からころも

き: 着つつなれにし

つ: つましあれば

は: はるばる来ぬる

た: たびをしぞ思う

古今集・羈旅・四一〇) 在原業平