「自粛してください.家にいてくださいとなっても,そもそも家が精神的に安全な場所という前提がない人たちも一定数いる」「社会とか経済の損失以上に,文化と精神的なものも救っていただきたいと思います」「そもそも,なぜ夜がだめなのかっていうところ.時間帯として制限されて,完全に夜8時から働いている人たちの居場所を奪う政策だったなっていうふうに強く感じています」「医療がひっ迫した場合,僕らの仲間の難病の方々は,果たして救ってもらえるんですか」 NHK新型コロナ 市民と専門家の緊急対話

「歌舞伎町の研究をしていて,そこで働いている方々に話を伺う機会が多いんですが,当事者たちの気持ちは『すごくスケープゴート(身代わり)にされている』という部分があったと思うんです.

満員電車と人数は同じくらいなのに,夜の時間帯でなぜコロナが区切られるのかという不満や,どうして『夜の街』が普通の街よりも危険だと考えているのか伺いたいと思います」

 

「自粛してください.家にいてくださいとなっても,そもそも家が精神的に安全な場所という前提がない人たちも一定数いる.

路上で飲んでいる女の子たちとか,ほとんど家出して家に帰ってなかったり,親から縁を切られてっていう,そもそもの安全が保たれていない若者たちというのは,どうしても,そういうところでフラットな,流動的な夜の街に流れてきてしまっていたりとか,夜の街がセーフティーネットになっている側面があると思う.

ただ自粛をしてください,家にいてくださいじゃなくて,家という場所が安心できる場所じゃないっていうところ」

 

「特に公共施設の利用を緩和してほしいと思っていて,私も今大学生で,家で勉強するのが困難な日とかに,図書館の利用が1時間しかできないっていうのがすごくつらくて,勉強するとか,

そういう公共施設の,そもそも自宅での環境が整っていない人のための公共施設が,1時間ほどで抑えられてしまうのが,とてもしんどい.そういう側面,社会とか経済の損失以上に,文化と精神的なものも救っていただきたいと思います」

 

「また夜の街が集中砲火になるっていう動きが見えてくる気がして,すごく心配.

実際,歌舞伎町で緊急事態宣言下も営業しているお店って,行列ができてしまうんです.生きるために働いているので,結局(午前)1時以降おなかがすいたり,始発を待つ時間帯に入れる飲食店がなくて,結果的に行列ができて,席を詰めて3密状態での営業が行われていたりっていう現状があって」

 

「そもそも,なぜ夜がだめなのかっていうところ.時間帯として制限されて,完全に夜8時から働いている人たちの居場所を奪う政策だったなっていうふうに強く感じています.

すごく印象に残ってるのが,昼間に,例えば主婦らがランチでお酒を飲んでるのに,夜の仕事で働いたあとの私が,ファミレスでごはんを1人で食べることすら許されないっていうのはどうなのという意見が刺さっている.

コロナは夜行性だから俺たちは昼飲んでいいんだって飲んでる人とか,そういうのを見ると,時間帯っていうものの不公平さを感じたので,ぜひ時間じゃない分け方で平等にしていただきたいなと思います」

 

以上は,昨日も取り上げた,「NHKスペシャル 新型コロナ 市民と専門家の緊急対話(9月19日放映)」の言葉.

話し手は,佐々木チワワさん.「歌舞伎町に詳しい大学生ライター」と紹介されていました.

f:id:yachikusakusaki:20210924234150j:plain

新型コロナ 市民と専門家の緊急対話(後編) - NHKスペシャルまとめ記事 - NHKスペシャル - NHK

 

「長引くコロナ禍にどう向き合っていくのか.市民と専門家が本音で語り合う」という番組の趣旨はかなり達成されていた好番組でした.

(文字に起こされています.ぜひご一読を

 新型コロナ 市民と専門家の緊急対話(前編) - NHKスペシャルまとめ記事 - NHKスペシャル - NHK

 新型コロナ 市民と専門家の緊急対話(後編) - NHKスペシャルまとめ記事 - NHKスペシャル - NHK )

 

f:id:yachikusakusaki:20210924234838j:plain

 

中でも上記の佐々木チワワさんの歌舞伎町での体験を踏まえ,現場に寄り添った要望は,彼女の真剣な眼差しと口調と共に印象深く,私が気付かなかった部分も鋭く指摘していました.

 

なお,「市民」として番組に選ばれたその他の方々の意見も,それぞれ立場性を踏まえたまっとうなもので,うなずくばかり.

例えば,脳性まひで車いすで生活している大久保さん

「いちばんのテーマの分断っていうことでいくと,街に出ると,コロナの前までは『お手伝いしましょうか』っていう人は結構いましたが,コロナになって,そういう声を聞かなくなってしまって,接触のことがあるからしようがないんでしょうけど,僕たち障害者は,ますます疎外感を感じるようになりました.

それをもっと究極なことで言うと,トリアージ(治療優先度の判断)がでてきた場合に,医療がひっ迫した場合,僕らの仲間の難病の方々は,果たして救ってもらえるんですか」