アプロディーテー(ウェヌス/ ビーナス)とマートル(ギンバイカ)2.   ⇒アプロディーテーと没薬(もつやく)の木(ミルラの木) 「マートルはアプロディーテーの神木」を裏付ける神話として,マートルに変身したミルラの物語が挙げられますが.現在残っているギリシャ神話原典は,ほぼ全て「ミルラが変身した植物は「没薬(もつやく)の木(ミルラの木)」としています.

マートル(ギンバイカ)は,アプロディーテーの神木として知られ,結婚式の日、花嫁はマートルガーランドを身につけ,マートルの香りの水を浴びたとされています.

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 PLANTS & FLOWERS OF GREEK MYTH 2

 

マートルとアプロディーテーについては,著名な旅行家パウサニアスが,代表的な作「ギリシャ旅行記」で触れています.

パウサニアス「ギリシア案内記」(C2nd A.D.)

Pausanias, Description of Greece 6. 24. 6 (trans. Jones)

APHRODITE MYTHS 6 LOVES - Greek Mythology

(原文英語 DeepL翻訳)

“バラとマートルはアフロディーテの神聖なものであり,アドニスの物語に関係している.”

 

Theoi projectのサイトでは,これを裏付ける神話があるとして,マートルに変身したミルラの物語を挙げています,

 

しかし---

この物語を取り上げているギリシャ神話古典は,幾つもあるものの,調べた範囲では,全てが,「ミルラ(もしくはスミルナ)が変身した植物は「没薬(もつやく)の木(ミルラの木)」としていました.

 

このことをどう解釈してよいかわかりませんが----

 

上記のパウサニアスから,紀元二世紀の古代ギリシャででは

▽マートルがアプロディーテーの神木として祀られていた.

▽マートルが神木となった経緯に,ミルラの変身とアドニスの誕生,さらにはアプロディーテーアドニスへの恋が関連していると信じられていた.

は,確かなこと.

 

一方,ミルラが没薬の木(ミルラの木)に変身したとするギリシャ神話を取り上げているギリシャ神話原典は:

偽アポロドーロス「ビブリオテーケー(日本語訳ギリシャ神話)」

アントーニース・リーベラーリス「メタモルフォーシス

さらには,

オウィディウス「転身物語」.

 

神話のストーリーには,マートルは取り上げられてこなかったと言えそうです.

 

Theoi projectのサイトでは,次のように解説しています.

 

没薬(もつやく)の木(ミルラの木)

PLANTS & FLOWERS OF GREEK MYTH 2

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(原文英語 DeepL翻訳)

ギリシャ語:Smyrna, myrra

種 種名:Commiphora myrrha

説明 : アラビアやアフリカに自生する,小さくてトゲのある砂漠の木.貴重な芳香性ガム樹脂を採取し,古代の宗教的な社でお香として燃やしていた.

聖なるもの.アフロディーテー(祝祭用ミルラ香)

神話:スミルナ(またはミルラ)の変身

 スミルナは,キプロスレバノン,またはアッシリアの王女で,母親は彼女の美しさを女神アフロディーテと比較しました.怒った女神は,罰として娘に自分の父親との恋をさせました.

娘が変装して自分を誘惑したことを知った王は,斧で娘を追いかけましたが,女神は慈悲深く介入し,スミルナを没薬の木に変えてしまいました.

その後,この木の幹から近親相姦で生まれたアドニスがニンフに託されました.

ミルラが香りのよいガム樹脂を作るようになったのは,スミルナの涙でした.

同じような話が,ミルラとマートルの木についても語られています.

(出典:Apollodorus, Antoninus Liberalis, Plutarch, Hyginus, Ovid.)