ギリシャ神話で,父親に恋し交わってしまったミルラ(ミュラ/スミルナ)が変身したとされる「没薬」.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/06/20/235530
yachikusakusaki.hatenablog.com
ミルラとも.
マートル(ギンバイカ)と同じように,アプロディーテーの神木の一つに数えられています.
https://www.theoi.com/Olympios/AphroditeTreasures.html
theoi project のサイトには,アプロディーテーの聖なる植物として,次のように記載.
https://www.theoi.com/Olympios/AphroditeTreasures.html
(原文英語 DeepL 翻訳)
神聖な植物と花
I. バラ
II. アネモネ
III. マートル & 没薬(ミルラ)
この2つの植物は、アドニスの誕生に関係していました(2つの別バージョンの物語で).
ただし,
マートルについては
聖なる植物としての記載があるものの,ギリシャ神話としての物語は残されていません.
聖なる植物としてのマートルについては,昨日記したパウサニアスの他に,例えばイソップが記述しています.
Aesop, Fables 205 (from Phaedrus 3. 17) (trans. Gibbs) (Greek fable C6th B.C.) :
APHRODITE ESTATE & ATTRIBUTES - Greek Mythology
(原文英語 DeepL無料版翻訳)
"むかしむかし、神々は自分のものにしたい木を選んだ。ゼウスはオークの木を、アプロディーテーはマートルの木を、アポローンは月桂樹を"
一方,
没薬に関しては,
ギリシャ神話原典に物語が残されているものの,没薬を聖なる植物としたとする記述は,実は残されていないようです,
没薬(ミルラ)とは
どこかで聞いたことはあると思いましたが---どのようなものか何も知りません.
日本大百科全書(ニッポニカ)
https://kotobank.jp/word/没薬-645917
没薬(もつやく) myrrh
ミルラともいう.カンラン科(APG分類:カンラン科)Burseraceaeコミフォラ属Commiphoraの木本植物(ミルラノキ)からとれるゴム樹脂を集めたもの.
古代エジプトで薫香料,ミイラ作成時の防腐剤に用いられ,聖書にも貴重な品物として記述されている.
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幹の皮部と髄の離生分泌腔(こう)に黄白色の油性ゴム樹脂を形成し,風害などにより皮部に損傷を生ずると外部に滲出(しんしゅつ)し,乾燥して黄褐色ないし赤褐色の堅い塊となる.
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収斂(しゅうれん),鎮痛作用があるので,腫(は)れ物,外傷,打撲傷,痔漏(じろう),筋肉痛の治療に外用し,歯齦(しぎん)炎,咽頭(いんとう)炎の含嗽(がんそう)料とし,歯みがき粉にも加えることがある.
品質のもっともよいヘラボール・ミルラ(ソマリ・ミルラ)は,ソマリア,アラビア半島南部に分布するC. myrrha (Ness) Engl.(C. molmol Engl.)から得られる.
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ミルラノキは日本で見ることはまずないと思われる植物.
この解説の中で,私がどこかで聞いたことがあると思えたのがミイラ作成時の防腐剤.
日本語のミイラ(木乃伊)は,ミルラが語源!
ミイラにあたる外国語は,マミイ(英語,mummy),モミ(フランス語,momie),モミア(スペイン語,momia),ムミイエ(ドイツ語,Mumie)などで,いずれも瀝青(れきせい)(天然アスファルト)を使用したものを意味するアラビア語の「ムミアイ」から派生したものである.ところが,日本語「ミイラ(木乃伊)」はこの系統からの輸入語でなく,没薬(もつやく)「ミルラ」のなまったものである.瀝青もミルラも古代エジプトでミイラ作りに使用されたとされている.