アカネ科の植物.
ハクチョウゲ,ヤエムグラ,ヘクソカズラ,クチナシに続いて,今日とりあげるのは---
トコン(吐根).
花は美しく,実も魅力的な色彩.葉はクチナシに似ているように思います.
この植物を一般の花壇で見ることはまずありません.見られるとしたら薬用植物園.
トコンは薬用植物としてよく知られています.
生薬部位は,もちろん根.
薬効は,吐.催吐剤ですね.
日本薬局方(*)に,制定以来今日に到るまで掲載されている生薬で,催吐剤“トコンシロップ”が津村順天堂から市販されています.
使い方は難しい医薬品だと思いますが.
効能は「タバコ,医薬品等の誤飲時における催吐」.
(*:日本国内で定められている,厚生労働大臣によって公示される文書.医薬品の品質・純度・強度の基準が定められているほか,各医薬品の有効性を問う試験法や判定方法が掲載されている.掲載されている医薬品は,日本で「薬」として認められていると考えてよい)
武田薬品京都薬用植物園の解説は以下の通り.
トコン
Cephaelis ipecacuanha (Brotero) A.Rich. アカネ科(Rubiaceae)
(局方)Cephaelis ipecacuanha A.Rich.
生薬名:トコン(吐根) 薬用部位:根および根茎
ブラジルの熱帯多雨林に分布し,高さ10~16cm程の常緑小低木となり地中を這って数珠上の太い側根を張ります.
本種又は, C. acuminata Kaistenの根および根茎を天日乾燥したものが生薬「トコン(吐根)」で,アルカロイドであるエメチン及びセファエリンを含みます.
タバコや医薬品の誤飲に対して,飲んだものを吐かせるように嘔吐を誘導するためのトコンシロップの原料となります.ただし作用性が強く劇薬に指定されています.
吐根の水製エキスにはインフルエンザウイルスなどに対する抗ウイルス作用があるほか,エメチンには抗アメーバ赤痢菌作用などがそれぞれ報告されており,古くから南米アマゾン川流域の現地民が治療に用いていました.
上記解説で「抗アメーバ赤痢菌作用」とありますが,「菌」ではなく,抗アメーバ赤痢原虫作用ですね.アメーバ赤痢は,細菌や菌類(カビなど)ではなく,原虫が引き起こすやっかいな伝染病.
http://www.saitama-u.ac.jp/ohnishi/jikken/Eukaryotes.htm
なお,日本や西欧諸国で,実際にアメーバ赤痢の治療にトコンが用いられたことはないと思います.アメーバ赤痢はやっかいな疾病ですが,抗原虫剤が開発され治療に用いられています.
アメーバ症 - 13. 感染性疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版