ヒユ科の植物たち(3) イノコズチ:どこにでも生えてくる雑草.ひっつき虫ですがそれほどやっかいではありません.漢方薬 ゴシツ (牛膝) は,イノコズチ(ヒナタイノコズチ等)の根を乾燥したもの.「通経,鎮痛,利尿作用があり」とのこと.なお,カタカタ表記に「イノコズチ」「イノコヅチ」の二通りがあります.日本国語辞典表記は「いのこずち」で漢字に「牛膝」を充てています.「イノコヅチ」は,牧野富太郎の推測から生まれたかに見える漢字「猪子槌」に引っ張られた表記と推測しますが--- 

ケイトウを見かけたのをきっかけに,

ナデシコ目 Caryophyllales, Amaranthoideae亜科, ヒユ科 Amaranthaceae

の植物を取りあげています.

(1)ケイトウ

(2)センニチコウとその仲間たち

 

今日はその(3)イノコズチ(イニコヅチ)

どこにでも生えてくる雑草です.

実が被服にくっついてくるのでやっかいですが,とるのにそれほど苦労した覚えはありません.

変種がいくつかあるようですが,私には全く見分けがつきません.下記の漢方生薬をとるためには,キチンと見分ける必要があるようです.

ヒカゲイノコヅチ

|東邦大学薬学部|薬用植物園|見本園|ヒナタイノコヅチ|

漢方薬 ゴシツ (牛膝) は,イノコズチの根を乾燥したもの.

https://baike.sogou.com/PicBooklet.v?relateImageGroupIds

「通経,鎮痛,利尿作用があり,月経不順,産後出血,腰痛や関節痛,リウマチ,神経痛,打撲,小便難渋などに用いる」とのこと.

https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003420.php

ただし,いくつかの変種のうち,生薬に用いられるのは次の二つのようです.

ヒナタイノコズチ Achyranthes bidentata var. fauriei 

トウイノコズチ Achyranthes bidentata var. bidentata

跡見群芳譜(野草譜 イノコヅチ)

 

ネット上でのカタカナ表記に「イノコズチ」「イノコヅチ」の二通りがあります.

あくまで想像ですが---

日本国語辞典の表記は「いのこずち」で漢字に「牛膝」を充てています.

ただし,旧仮名遣いでは「ゐのこづち」.古名は「いのくずち(ゐのこずち)」

古名「いのくずち」は出典も明らかなので,正しいと思います.旧かな⇨新かなの原則に従えば,現在の表記は「いのこずち」が正しいでしょう.

それでも「イノコヅチ」がネット上で優勢なのは,漢字に「猪子槌」をあててしまっているためと思われます.

「猪子槌」は,牧野富太郎博士の推測「イノコヅチ豕槌で,節の太い茎をいのこの脚の膝頭にみたてたか(牧野新日本植物図鑑)」(日本語源大辞典)に従った当て字と考えるのが妥当かと思います.日本の植物の世界では牧野富太郎絶対視の傾向があるので,簡単に否定しては怒られそうですが,あくまでも推測で,「猪子槌(豕槌)」は,古名「いのくずち」との整合性がとれていないと判断しますが----.

 

Amaranthaceae - Wikipedia