新型コロナウイルスによるパンデミックの中,ワクチン開発への期待が高まっています.
自粛生活の解消はワクチン頼み?
現状はどうなっているのでしょうか?
以下は,読む価値がありそうと思われるサイト,気になる事柄を記しているサイトからの拾い読みです.
現在どのようなワクチンが開発されているかをAnswersNewsがまとめています.日本語の記事です.
英文ではニューヨークタイムズの記事が一般向けで分かりやすいように思いましたが---英語の壁が.
新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(7月10日UPDATE) | AnswersNews
Coronavirus Vaccine Tracker - The New York Times
AnswersNewsによれば,
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17853/
「WHOの7月6日時点のまとめによると,現在,臨床試験に入っているCOVID-19ワクチン候補は21種類.このほかに139種類が前臨床の段階にあります」とのこと.
臨床試験が最も進んでいて第Ⅲ相試験(有効性,安全性,使い方の最終確認)に入っているのが,英オックスフォード大/英アストラゼネカの“ウイルスベクターワクチン”.
そして米モデルナ/米国立アレルギー・感染症研究所(mRNAワクチン),独バイオテック/米ファイザー/中国フォスンファーマも7月中に第Ⅲ相試験に入るとのこと.
「英国・スウェーデンのAstraZeneca社とオックスフォード大学が開発中のワクチンは,ChAdOx1と呼ばれるチンパンジーのアデノウイルスをベースにしたもので,英国では第II/III相試験,ブラジルと南アフリカでは第III相試験が行われている.10月までに緊急ワクチンを納入する可能性がある.アストラゼネカは6月,同社の総製造能力は20億用量に達していると発表した.Coronavirus Vaccine Tracker - The New York Times(DeepL翻訳)」
「独バイオンテック社は,ニューヨークに本社を置くファイザー社,中国の医薬品メーカーであるフォスンファーマ社と共同でmRNAワクチンの開発に着手した.7月1日に発表したところによると,第I/II相臨床試験では,被験者全員にSARS-CoV-2に対する抗体が産生されたが,睡眠障害や腕の痛みなどの中等度の副作用を経験した者もいたという.同社は,7月から第III相臨床試験を開始する予定である.これまでの結果に基づき,F.D.A.は7月13日,承認プロセスを迅速化するファストトラックステータスを付与した.承認されれば,ファイザーは今年末までに最大1億用量のワクチンを製造し,2021年末までに12億用量以上のワクチンを製造する可能性があるとしている.Coronavirus Vaccine Tracker - The New York Times(DeepL翻訳)」
しかし,これらのコメントはかなり割り引く必要もありそうです.
BBCによれば,
Coronavirus vaccine: When will we have one? - BBC News
「ワクチンの開発には通常,数十年とは言わないまでも数年かかる.研究者たちは,わずか数ヶ月で同じ作業量を達成したいと考えている.
ほとんどの専門家は,正式にはSars-CoV-2として知られる新しいウイルスが初めて出現してから約12ヶ月から18ヶ月後の2021年半ばまでにはワクチンが広く利用できるようになると考えている.
そうなれば科学的な偉業であるが,それがうまくいく保証はない.
すでに4種類のコロナウイルスが人に感染し,風邪の症状を引き起こしているが,そのどれに対しても,対応するワクチンはない.(原文英文,DeepL翻訳 一部改変)」
以前視聴したNHKの番組(番組名を忘れました)で,東大医科研の河岡教授は「ワクチン接種ができるようになるのは二年後」と言っていました.
過大な期待,拙速は禁物ですね.
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO58852680Y0A500C2000000
そして,上記三チームと並んで先頭集団に位置しているのが中国が開発しているワクチン.
すでに第Ⅲ相試験に入っているチームも.
中国の民間企業であるシノバック・バイオテック社が,コロナバックと呼ばれる不活化ワクチンの試験を行っている.同社は6月、743名のボランティアを対象とした第I/II相試験で重篤な副作用はなく,免疫反応が得られたことを発表した.シノバック社はその後,7月にブラジルで第III相試験を開始した.また、年間1億回分のワクチンを製造するための施設を建設中である.Coronavirus Vaccine Tracker - The New York Times(DeepL翻訳)
東洋経済とニューズウィークに掲載された記事(ほぼ同じ内容)が,中国に注目したワクチン開発状況を伝えています.
https://toyokeizai.net/articles/-/362413
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-93941_1.php
人に接種できるワクチンを初めに開発に成功するのは中国かもしれないと思わせる記事となっています.
以下東洋経済の記事を転載させて頂きます.
中国が猛烈に急ぐコロナワクチン開発の最前線
後発組ながら国,軍,民の力結集,安全性は課題
https://toyokeizai.net/articles/-/362413
ロイター
2020/07/11 15:30
[ソウル/シンガポール 7日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染症のワクチン開発競争で,中国が先頭集団を走っている.シノバック・バイオテック(科興控股生物技術)が開発中のワクチンは月内に,中国で2番目,世界で3番目に第3期臨床試験(治験)へと進む予定だ.
世界のワクチン産業の中では後発組の中国だが,現在は国,軍,民間を挙げて新型コロナワクチンの開発に力を入れている.
ただ,中国には多くの障害もある.既に感染拡大阻止に成功していることで,他国に比べて国内で,感染を試す大規模な治験がやりにくくなったことがある.ほかにも治験に協力してくれるのは一握りの国だけという点がある.
また,中国は近年,基準を満たさないワクチンを発売する複数の不祥事があったため,安全性・品質基準を達成していると世界を納得させる必要もある.
とはいえ,計画経済型の開発方法は実を結んでいる.
国営企業と軍が試験的なワクチン接種
例えば,ある国営企業は2つのワクチン開発工場を2,3カ月という戦時並みのスピードで完工させた.国有企業と軍は,従業員や兵士らに対する試験的なワクチン接種を認めている.
人民解放軍の医療調査部門も,カンシノ・バイオロジクス(康希諾生物)<6185.HK>などの民間企業とワクチン開発で協力している.
伝統的に西側諸国が牛耳ってきたワクチン産業だが,中国は今回,ヒトへの治験候補に挙がっている世界の新型コロナワクチン19種類のうち8種類に関与.このうちシノバックの治験と,軍およびカンシノの共同開発が先頭集団に入っている.
中国はまた,主に不活化ワクチン技術に的を絞っている.
インフルエンザやはしかのワクチンに使われてきた,良く知られた技術であるため,開発に成功する確率は高いかもしれない.
対照的に,米モデルナ,独キュアバック,独ビオンテックなど複数の西側企業は,メッセンジャーRNAと呼ばれる新技術を用いている.この技術で開発された製品が規制当局の承認を得た前例はまだない.
米フィラデルフィア児童病院・ワクチン教育センターのディレクター,ポール・オフィット氏は,不活化ワクチン技術について「実証済みの戦略だ」と指摘.「もし,私が安全で有効なワクチンになる確率が最も高そうな技術を選ぶよう迫られたなら,これにする」という.
ヒトでの治験候補に挙がっている中国のワクチンのうち,国有会社シノファーム(国薬控股)傘下会社やシノバックなどが開発する4種類は不活化ワクチンだ.
現在,治験の最終段階である第3期臨床試験に進んだワクチンはシノファームと,英アストラゼネカおよびオックスフォード大による共同開発の2種類しかない.シノバックのワクチンは,月内に世界で3番目に仲間入りする予定だ.
大規模な治験がしにくいという課題
しかし,新型コロナ感染が封じ込めに向かっている中国では,感染者に薬効があるかどうかを試す大規模な治験が,しにくいという事情がある.
このため同国は海外に目を転じたが,協力に前向きな国はアラブ首長国連邦(UAE),カナダ,ブラジル,インドネシア,メキシコなど一握りだ.欧州主要国と米国は自前のプロジェクトに専念しており,中国の開発に関心を示さない.
ワクチンの安全性・品質基準についての取り組みもしなければならない.中国は昨年,ワクチン業界の規制を強化する法律を導入し,偽の,あるいは低品質のワクチンの製造・販売に対する罰則を厳格化している.
(Sangmi Cha,Miyoung Kim)