相模原市の知的障害者施設で19人が殺害されるなどした事件の裁判.殺害された女性の弟「詳しい状況を教えてください」「急に殺傷して申し訳なく思っています」「たぶん3回以上は刺したと思います」/「ただの弱い者いじめでは」「そうは思いません」「重度障害者を育てるのは間違っている」//大けがをした尾野一矢さんの父親剛志さん「『障害者はかわいい』本当に」「仕事がしやすいからかも」/「必要ない人間は1人としていないとは思いませんでしたか」「それは感情なので」NHK NEWS WEB 2/5

障害者殺傷事件 遺族ら植松被告に直接質問 やり取り詳細

NHK NEWS WEB

2020年2月5日 19時25分

www3.nhk.or.jp

 

相模原市知的障害者施設で入所者19人が殺害されるなどした事件の裁判で5日,被害者参加制度を使って,殺害された60歳の女性の弟と,大けがをした尾野一矢さんの父親の剛志さんが法廷に立ち,直接植松被告に質問しました.

 

甲Eさんの弟

被害者や犠牲者の多くが匿名で審理されるなか,法廷で「甲Eさん」と呼ばれる死亡した60歳の女性の弟が,ついたてなど遮蔽がない状態で検察官の隣に立ち,被告のほうを向いて質問しました.

f:id:yachikusakusaki:20200205232356j:plain

障害者殺傷事件 遺族ら植松被告に直接質問 やり取り詳細 | NHKニュース


 

女性の弟が「私は殺害された姉の安らかな寝顔に安心して涙が止まりませんでしたが,詳しい状況を教えてください」などと涙をこらえながら尋ねたのに対し,

被告は「急に殺傷して申し訳なく思っています」と答えた一方で,「たぶん3回以上は刺したと思いますが細かくは見ていません」と淡々と答えました.

 

また,「今回の事件はただの弱い者いじめではないのですか」と尋ねたのに対し,被告は「申し訳ありませんがそうは思いません」と反論しました.

 

女性の弟は終始,抑制的に丁寧な口調で被告を「植松聖さん」と呼びながら,「自分を好きですか」とか,「コンプレックスが事件を起こしたのではないですか?」などと問いかけ続けました.

 

このなかで「大切な人は誰ですか.私は家族や友達,身近な人が大切です」と尋ねましたが,被告は「大切なのはいい人です」と述べるにとどまり,具体的には示しませんでした.

 

最後に弟が「姉を殺してどう責任をとってくれるんですか?」などと尋ねると,「長年育ててこられたお母さんを思うといたたまれなく思います」,「それでも重度障害者を育てるのは間違っていると思います」と答え,これまでの主張と変わらず差別的な発言をしました.

 

女性の弟は「切なくなってきたのでこれで終わります」と述べて質問を打ち切りました.

尾野一矢さんの父親の剛志さん

続いて尾野さんが質問に立ち,「働き始めてから友人などに,『障害者はかわいい』と言っていたことを知りました.本当にそう思っていましたか」と尋ねたのに対し,被告は「そう思ったほうが仕事がしやすいからかもしれません」と述べました.

f:id:yachikusakusaki:20200205232454j:plain

障害者殺傷事件 遺族ら植松被告に直接質問 やり取り詳細 | NHKニュース

 

さらに「あなたは意思疎通しようと努力したことはありましたか」と問うたのに対し,被告は「あります」と即答しましたが,「どういう時ですか」と追加で問われると,しばらく考えたあとに「ふだんから意思疎通がとれるように接していたので,『ここ』ということはありません」と答えました.

 

一方,尾野さんから「今,幸せですか」と尋ねられると,被告は「不自由なので幸せではありません」と述べました.

 

尾野さんは質問の中でたびたび,「障害者の家族は悩みながら子育てをし,その中で小さな喜びを感じていました」などと語りかけましたが,被告は「長年育てられた親のことを思うといたたまれません」とだけ答え,表情を変えることはありませんでした.

 

尾野さんが「必要ない人間は1人としていないとは思いませんでしたか」と尋ねたのに対し,「それは感情なので」と答えるなど,持論を展開し,問いに対して具体的に答えない場面もたびたび見受けられました.

裁判官と裁判員

このほか裁判官や裁判員も被告に質問しました.

 

男性の裁判員が「事件を起こしたことで,当時考えていたような社会になったと思いますか」と尋ねたのに対し,被告は少し考えてから「重度障害者と共生する方向に社会が傾いたと思います」と述べたうえで,「やっぱり『それは無理だ』となればいいと思います」とみずからの考えを述べました.

 

裁判長が施設で働き障害者と接する中で心が通じることがなかったか尋ねると,被告は当時を思い出したように少し笑いながら,「ズボンの上にパンツを履いてしまった人がいて和やかだと思いました.要求を理解して笑ってくれることもありました」と答えました.

 

裁判長が「それが意思疎通できたということではないのか」と重ねて尋ねましたが,被告はすぐに「それは人としての意思疎通がとれたとは思っていません」と述べました.

 

 

障害者殺傷事件 遺族ら植松被告に直接質問 かみ合わない場面も

NHK NEWS WEB

障害者殺傷事件 遺族ら植松被告に直接質問 かみ合わない場面も | NHKニュース

2020年2月5日 17時28分

 

相模原市知的障害者施設で入所者19人が殺害されるなどした事件の裁判は5日,遺族の1人と大けがをした男性の父親が被害者参加制度を利用して被告に直接質問しました.被告が自分の意見を述べるだけで,遺族らの質問とかみ合わない場面も見られました.

相模原市知的障害者施設「津久井やまゆり園」の元職員,植松聖被告(30)は平成28年7月,入所者19人を殺害した罪などに問われています.これまでの裁判で被告は殺害などについて認めています.

 

5日,横浜地方裁判所で開かれた裁判では被害者参加制度を利用して遺族ら2人が直接被告に質問しました.

 

裁判では犠牲者や被害者の多くが匿名で審理されていて,法廷で「甲Eさん」と呼ばれる殺害された60歳の女性の弟は,ついたてなど遮蔽がない状態で検察官の隣に立ち,被告のほうを向いて質問しました.

f:id:yachikusakusaki:20200205234021j:plain

障害者殺傷事件 遺族ら植松被告に直接質問 かみ合わない場面も | NHKニュース

女性の弟が「私は殺害された姉の安らかな寝顔に安心して涙が止まりませんでしたが,詳しい状況を教えてください」などと涙をこらえながら尋ねたのに対し,被告は「急に殺傷して申し訳なく思っていますが細かくは見ていません」と淡々と答えました.

 

女性の弟は終始,抑制的に丁寧な口調で被告を「植松聖さん」と呼びながら「自分を好きですか」とか「コンプレックスが事件を起こしたのではないですか?」などと問いかけ続けていました.

 

一方,大けがをした尾野一矢さんの父親の剛志さんが「今,幸せですか」と尋ねると,被告は「不自由なので幸せではありません」と述べました.

 

尾野さんはたびたび,「障害者の家族は悩みながら子育てをし,その中で小さな喜びを感じていました」などと語りかけましたが,被告は「繰り返しになりますが,長年育てられた親のことを思うといたたまれません」と述べただけでした.

 

このほか裁判長が障害者と接する中で心が通じることがなかったか尋ねると,被告は「要求を理解して笑ってくれることもありました」と答えました.

 

裁判長が重ねて「それが意思疎通できたということではないのか」と尋ねると,被告はすぐに「人としての意思疎通がとれたとは思っていません」と述べました.

 

被告は黒のスーツ姿で質問する遺族らのほうを向き,表情を変えることなく答えていましたが,自分の意見を述べるだけで,質問とかみ合わない場面も見られました.

 

尾野さん「何を質問しても箸にも棒にもかからない」

被告人質問を終えた尾野剛志さんは休廷中に取材に応じ,「被告がなぜ差別的な考えをいだくようになったのかその理由を知りたかったが答えは聞けませんでした.被告はいまも障害者を殺したのは当然だという考えでいるようで,何を質問しても箸にも棒にもかからないという印象でした」と話しました.

f:id:yachikusakusaki:20200205234222j:plain

障害者殺傷事件 遺族ら植松被告に直接質問 かみ合わない場面も | NHKニュース
 

そのうえで「犠牲者に対して謝罪のことばもあったが,なぜ殺したのかという問いかけには『仕方がない』とだけを繰り返し,本当の意味で謝罪したと受け止めることはできません.被告を理解できる人はこの世界にはひとりもいないと思います」と話していました.

 

一方,尾野さんによりますと,被告の両親に対する思いなども質問する予定でしたが,被告の弁護士が異論をとなえ,認められなかったということで,「両親のことや被告がどのような家庭で育ったのか,背景を知るうえで聞きたいと思ったが,『事件とは関係ない』という理由で質問が許されませんでした.被告の心のなかを少しでも探りたかったが,残念です」と話していました.