神様の木に会う 〜日本巨樹の旅〜
NHKBSプレミアム(1月4日金曜)【語り】工藤夕貴,美輪明宏
14の巨樹に,美しい映像で出会える番組
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翁杉の倒れた跡は,すっぽりと空き,大きな空間ができていた.
「しっかりと,また,次の世代のが生えてますよ.
空間が広くなって光が差し込むようになって,こんなにして,また---.もうこれ,人間でいっても寿命だったんでしょうから,また,これだけの広い空間ができたことによって,新しい命がいっぱい引き継がれますからね」
2000年後に巨樹になるかもしれない,新たな命の始まりだ.
天寿を全うできなかった巨樹もある.
屋久島で最も知られた巨大な切り株.
登山ガイド,日高順一さん「はい,着きました.ウィルソン株ですよ.正面の穴がポコッと開いてるところで,株の中には入れます」「すごいですね.これも」
「中はいります」
ウィルソン株 伐採当時の推定樹齢3,000年 現存していれば最大級の屋久杉の切り株
切り株の中は,畳十畳ほどの広さだった.
調査した外国人研究者の名が付けられたウィルソン株.400年以上前に伐採されたと見られる.
切り株の大きさなどから,杉を再現してみた.高さ40mを超えるまっすぐ伸びた巨大な一本杉だったと思われる.木材に適した形だったことから,豊臣秀吉が,京都の方広寺を建てるのに使うため,切らせたという説がある.
この巨大杉の一部と思われる,倒木が残っていた.
30mほど離れた場所まで散らばっている.
「これ,倒された跡じゃないかと思います.ちょっと,あの,また鋸みたいなの入れてる所もございますよね」
ここで切って,大量の木材として運び出したと思われる.
伐採から400年の時が過ぎた.
切り株にもかかわらず,大人気.
「あっ,そういうことか」「ああ,確かにそうですね」
切り株が見事なハート型.インスタ映えするという.
「撮れた?」「いいねえ」
登山道の脇には,人の手によって切られた大きな切り株が目につく.
「これ,刃物を入れた跡がよく分かると思うんですよ.江戸時代,300年ほど前に刃物を入れた跡ですね.試し切りが,よく確認できる木ですね.結局,斧を入れて年輪の状況がどうか,ちゃんと割った場合に,今度は割れないかどうかということまで,見たらしいんですね.
何カ所も入れてるんですね.ちゃんと使える部分があるかどうか」
屋久杉の伐採は,500年ほど前から始まり.1970年まで続いた.
森には,今も伐採の跡が残っている.
巨樹の死と生が,絶え間なく繰り返される屋久島.
伐採を逃れ,今日まで生き延びた巨樹に会いに行く.
「さあ,縄文杉です.はい,到着です」
「この縄文杉は,本当に,いろんな試練を受けた木だと思うんですね.ですから幹もゴツゴツして,はい」
一度は行きたい世界遺産・屋久島!初心者にもおすすめの縄文杉トレッキングツアー&コースを体験してきた│観光・旅行ガイド - ぐるたび
縄文杉,
樹齢2000年以上.最大の屋久杉だ.
およそ,50年前に発見された,日本で最も有名な巨樹であろう.
一本一本,深いしわのように刻まれた木肌.数千年という長い年月を生きてきた証しだ.
その表面は,沢山のこぶができ,異様なすごみを感じさせる.
デコボコした幹.枝もねじ曲がっている.
縄文杉は,傷だらけの老木だった.
九州森林管理局/縄文杉の枝の積雪による折損落下について 縄文杉 | ニッポン旅マガジン
「この縄文杉はね.確か私も,以前は回れましたので,回ってみたんですが,試し切りの跡もないんですね.だから,見るからにこの木は使えない木だなと.どの角度から見ても使える部分がなかったということで,残されたわけなんですね」
伐採された切り株.その奥に,生き残った縄文杉が立っていた.
「だから,当時の,江戸時代の人たちの価値観からすれば,最大の落ちこぼれであり,それが幸いしてヒーローになった木です.はい」
「ああ,着きました」「すごいな」「はい,撮ります.3,2,1.パチ.もう一枚行きます.こっちを向いて下さ〜い.はい.チーズ」
「すごいなっていう.もう,一言しかないです」
「なんか,近く寄ってきただけで,なんか違うと思って.パワーをもらったような気がする」
「人生観が変わるよって言われてやってきたんですけど,(やや涙声で)明日からも頑張れます.ねっ」
「他の植物もそうですけど,特に,この縄文杉にしても,じゃあ,こんな厳しいとこに生えたくなかったかもしれないんですね.
でも人間は,その環境を逃げることは,換えることはできますけど,植物っていうのは,その厳しい環境でも,何でも全て甘受してそこで生きてかなきゃいけない.途中で台風なり,季節風なりべた雪なり,そういうのも経験してるわけですね.
そういう大きな試練を受けて,長い時間をかけて大きくなってきた.いろんな試練を経験しなきゃいけない.それに耐えて生きてきたのが,この縄文杉なんですよね.」
「この木は,まだ大丈夫なんですかね?まだ」
「まだまだ大丈夫じゃないですか?はい.ただ,私たち,100年にもみたない人間が,どうだこうだ言える木ではないと思っています.はい」
縄文杉の姿には,人間の想像を超えた巨樹の生き様が刻まれていた.