神様の木に会う 〜日本巨樹の旅〜
NHKBSプレミアム(1月4日金曜)【語り】工藤夕貴,美輪明宏
14の巨樹に,美しい映像で出会える番組
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翁杉
鹿児島県屋久島.
樹齢1000年を超える屋久杉が数多く生きている.その森で,巨樹の壮絶な死に様に出会った.
案内してくれるのは,屋久島生まれの登山ガイド,日高順一さん.60年以上屋久島の巨樹を見続けている日高さんが,まず最初に向かったのは,
「これが翁杉.倒木の跡ですね」
幹折れした樹高中央部付近の空洞化の様子
それは,倒れた翁杉の残骸だった.樹齢2000年の巨樹だった.生あるものは,必ず死を迎える.
数千年生きた巨樹もいつかは命を終える.
2010年に倒れた翁杉.数ある屋久杉の中でも,名だたる名木だった.
翁杉の亡骸が広がっている.
翁杉が倒れた日,日高さんは,この場所を歩いていた.
「ちょうど私,その時登ってきよったんですね.そしてら,下ってくる人が,『翁杉が倒れてる』って言うから,もう全く冗談だろうと思ったんですよ.
で,ほんとに,ここに来たら,すごい杉の香りがして,倒れていましがた,っていうか,本当にこの周りに,杉の香りがしてましたから」「香りが?」
「はい.あの,樹脂分が多いわけですから,ほんと,檜風呂なんて,匂いが---香りがするじゃないですか.
もうあれよりすごい香りが周りに充満してたんですね」
登山道を荷揚げの仕事をする人も,その時の様子を見ていた.
「やっぱ,作業で,いつも重いもの担いでしんどいと,ここの広場で座って,寝っ転がって見上げてたっていう.ひとときの,作業中の憩いの場でしたね.
前日,僕ら作業して,帰り,あったんですよ.また,次の朝早くに上がってきたら,もう,倒れてなくなってた」「どう思いました?」
「もう,びっくりして,ただ,呆然と見てましたよね.全然,天気のいい,風もない---.ほんとに快晴でしたね」
これが倒れる前の翁杉の姿.
登山道沿いにそびえ,着生植物などが多く,屋久杉の特徴が目立つ巨樹だったという.
翁杉の倒れた跡は,すっぽりと空き,大きな空間ができていた.
「しっかりと,また,次の世代のが生えてますよ.
空間が広くなって光が差し込むようになって,こんなにして,また---.
もうこれ,人間でいっても寿命だったんでしょうから,また,これだけの広い空間ができたことによって,新しい命がいっぱい引き継がれますからね」
2000年後に巨樹になるかもしれない,新たな命の始まりだ.