まろやかで優しい辛さ.上品な香り.今回のテーマは,ホテルのカレー.
その奥深い味わいは,いつかは食べたい憧れの一品.縁がないな〜と思うなかれ.
名門ホテルのカレーには,文明開化以来の日本のカレー150年の英知が詰まってるんです.
講師は世界をかけまわり歴史からスパイスまでカレーの全てを研究してきた水野仁輔さん.老舗ホテルのビーフカレーに秘められた超絶技巧に迫ります.
そして,世界でたった一つ.スパイスをブレンドしてつくるオリジナルカレー粉づくりを体験.本格的なホテル風ビーフカレーに挑戦
さあ,ちょっとオシャレで贅沢なホテルカレーの世界へまいりましょう.
カレー[4]
「趣味どきっ!カレーの世界」
第5回▽超絶技巧に迫る!歴史が刻まれたホテルカレー
ゲストは,俳優の鈴木浩介さん,モデル/タレントのラブリさん.
ホテルのカレーと聞いて,ラブリさん.「何かきらきらしている感じしません?」受けた鈴木さんは「ちょっと銀食器みたいなね」
「気軽には食べられないような印象.味は洗練されて上品な味」と水野さん.
ホテルカレーというジャンルがあるわけではありませんが,元々イギリスから伝わったカレーというものが,日本で独自に進化を遂げて,一番その最終形に近いものが,じつはホテルのレストランで食べられるようなカレー.
明治の初期のレシピ本「西洋料理通(1872年)」.
その中の「カリー」には,カレー粉を使って牛肉や鶏肉をリンゴなどと煮込む料理法が記載されていました.「葱(ねぎ),ショウガとニンニクのみじん切りをバターで炒め,水を加えて鶏やエビなどを入れて煮込み,カレー粉を加えてさらに1時間.塩で味を調えたら,水溶き小麦粉を入れる」
しかしこれに倣って作ったカレーは,鮮やかな黄色のスープカレー?
鈴木さん「具合が悪くなったときの病院食」ラブリさん「味が遠い場所にあります」鈴木さん「白湯カレー?」
水野さん「ここから,日本人があの手この手を尽くして,もっとおいしくなる,もっとおいしくなるとやってきた結果が今のおいしいカレーになっていて,それが今の老舗のホテルのカレーというのに受け継がれて,今,食べられる状態になっていますね」
100年以上前から,カレーを作り続けてきたホテルが箱根に.
<公式サイト>富士屋ホテル (ベストレート宣言) 箱根・宮ノ下のクラシックホテル | 温泉 宿泊 ランチ
ここのカレーを味わうためにわざわざ遠方から宿泊しに来る人も多いとか.水野さんが厨房を訪れ,洋食料理長北村雅之シェフから,ここで作り続けられてきた歴史あるカレーの秘密をみせてもらいました.
初めに見せられたのは,ホテルに伝わるカレーのレシピ本(1925年).
富士屋ホテルの味 | 富士屋ホテルのカレー | 箱根・宮ノ下富士屋ホテル
チキン,マトン,ビーフ,フィッシュ,ロブスター---.当時からいろんなカレーがあったんですね.そして,秘伝のカレーソースのレシピ.きれいな手書きの英語で記されています.今もこのホテルのカレーの味の基礎になっているそうです.
材料は,
バター,タマネギ,きざみニンニク,きざみショウガ,すりおろしニンジン,カレー粉,小麦粉,トマト缶詰,チャネツ,コンソメ,ココナッツミルク.
特別にカレー作りの技を見せてもらうことに.
1. あめ色タマネギは弱火で焦がさぬように3時間以上も炒めます.(ポイント1)
2. ここに,すり下ろしたニンジン,リンゴ,ショウガなどを加え,更に1時間ほど炒めます.
3. カレー粉を加え,そして小麦粉をいれた混ぜ合わせ,ペースト状にします.いずれの材料もイギリス流で,シチューのように小麦粉でとろみをつけます(ポイント2).
4. コンソメスープを加える.(ポイント3)
カレー粉のペーストをのばすのに使われるのは,コンソメスープ,もう一つの味の深さの秘密.
牛の骨,牛すじ肉,鶏ガラ,タマネギ,ニンジン,セロリを1日煮込んで作られるブイヨン.そのブイヨンに牛肉や香味野菜,ワインなどを加えてもう1日煮込み,味を調えて出来上がるのがコンソメです.透き通った黄金色のスープで,このホテルのもう一つの人気メニューです.
富士屋ホテルの味 | 「湧き水」と「コンソメ」 | 箱根・宮ノ下富士屋ホテル
味見をして「おいしい.お腹にしみるような.これをカレーに入れるのはもったいないですよ」と水野さん.
このコンソメでカレーペーストをのばしていきます.二日間もかけて作る贅沢なコンソメを惜しみなく使ってしまう.この精神がホテルのカレーを洗練に極みへと導いてきたんですね.
十分煮込んだあとも,味を熟成させるため,数日間寝かせてからお客様へ提供されます.
水野さん「気が遠くなるような作業.いやー,ホテルのカレーはね,やっぱりこれが違うんですよね」
水野さん「まろやかさが全然違う」
北村さん「コンソメのまろやかさ,コクの深さ,っていうのが出てると思うんで」
水野さん「日本のカレーの代表がここにあるっていう,プライドっていうのがここに詰まってる感じがして,僕がつくってるわけじゃないのに,僕が誇らしい気持ちになる」
水野式カレー粉
水野さんが,長い時間をかけて厳選したスパイスは,
ターメリック(カレーの色と風味),レッドチリ(辛味とコク),クミン(インドの香り),コリアンダー(全体の香りをまとめてくれる),そして一回目で作ったガラムマサラの5種類.
水野さん「それぞれ単独でもいい香りがするけれど,混ぜることで単純な足し算ではなく,かけ算になっていく」
“スパイスを混ぜ合わせることで相乗効果が生まれる” (ポイント)
ターメリック 小さじ1,
レッドチリ 小さじ1,
よく混ぜる(番組では“かなり太い試験管”に似た細長いガラス容器を使用し,フタをしてよく振って混ぜていました)
香りチェック
クミン 小さじ3,
コリアンダー 小さじ3,
ガラムマサラ 小さじ1/2
再びよく混ぜる
香りチェック
「まとまった感じ」「もうカレーの感じ」
この状態でも十分楽しめますが,少しフライパンで煎って,1週間ほど熟成させると,香りがまろやかに.
水野式ホテル風カレー
材料
牛肉角切り500グラム,タマネギ2個,サラダ油大さじ2,塩小さじ1/2,小麦粉大さじ1,カレー粉大さじ2,チキンブイヨン*カップ2,赤ワインカップ1/2,ブルーベリージャム小さじ2,ウースターソース小さじ1,バター20グラム,サラダ油,塩,コショウ各少々
*チキンブイヨン:材料と作り方
鶏ガラ二羽分,水3リットル,ネギ(アオイ部分)1本分,セロリ1本,くず野菜(ニンジンの皮一個分,タマネギの皮二個分,ローリエ2枚,ブラックペパー小さじ1/2:約30粒分) 鶏ガラが煮立ったら残りの材料を入れ.ふつふつ表面が煮立っている火加減で,あくを取りながら2時間半.最後にざるでこして出来上がり.
1. タマネギ2個,サラダ油大さじ2:タマネギをあめ色に 「水野式」(第一回)より弱火で丁寧に
2. 小麦粉を加え,練り込むように混ぜ合わせる.
3. なじんできたらカレー粉を加える.
4. 全体がなじんできたら,スープを入れて,丁寧に沸騰させながら溶かしていく感じで混ぜます.その後とろみがついてくるまで弱火で煮込みます.
スープとして,チキンブイヨンを使うことでうま味が一気にグレードアップ.
5. 牛肉は表面をステーキのように焼き,ワインを加えてから,カレーに加えます.
ブルーベリージャム小さじ2,ウースターソース小さじ1が隠し味.
6. そのまま弱火で1時間(時々かき混ぜます).
7. 最後にバターを加えてコクを出して,出来上がり.
スパイスの植物学
File:Curcuma longa roots.jpg - Wikipedia
単子葉類 Monocots,ショウガ目 Zingiberales,ショウガ科 Zingiberaceae,ウコン属 Curcuma, ウコン C. longa(= C. domestica )ウコン(鬱金)
ウコン - Wikipedia Turmeric - Wikipedia
黄色い色素成分はクルクミン.
日本では,アキウコン(秋鬱金)と呼ばれることも.染色にも用いられるためキゾメグサ(黄染草)との別名も.
食材として用いられるときは英語のターメリック.黄色い色づけの他,「味に厚みを与える」ために用いられます.S&B エスビー食品株式会社
英語「turmeric」は、ラテン語で“すばらしい大地”を意味する「terra merita(テラ・メェリタ)」に由来(S&B エスビー食品株式会社)とありましたが,不確かな点も多そうです.(Middle French terremérite "saffron," from Medieval Latin terra merita, literally "worthy earth," though the reason why it would be called this is obscure. Online Etymology Dictionary)
各国で広く使用されているスパイスで,国毎にそれぞれの呼び名がつけられています.
沖縄方言:ウッチン、ヒンディー語:ハルディ、インドネシア・マレー語:クニッツ.ウコン - Wikipedia
漢方生薬としても有名で,利胆, 芳香性健胃薬として.また,また止血, 通経薬として,用いられてきました.伝統医薬データベース 鬱金 生薬学術情報
なお,日本でのウコン鬱金は,中国語では姜黄.日本でキョウオウと呼ばれているものがあるのでややこしくなりますが,日本の姜黄(ハルウコン)は別種です.
ショウガ目 - Wikipedia Zingiberales - Wikipedia
ショウガ科 - Wikipedia Zingiberaceae - Wikipedia
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