徳島県鳴門市.
人口およそ6万のこの町には,至る所に「第九」があふれています.
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(映像 ”第九の里なると 「第九」アジア初演の地” ののぼり)
(映像 第九を歌うためだけの結成された合唱団 ドイツで歌う映像)
(映像 第九を歌う保育園児 三歳からドイツ語で)
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6月,第九の初演から100年を祝い,鳴門で盛大な演奏会が行われました.
行列の中には,アメリカやドイツなど,海外から訪れた人たちもいました.
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NHKドキュメンタリー - BS1スペシャル「鳴門の第九 歌声がつなぐ日独の100年」
第1楽章 すべての始まり
今からおよそ100年前,鳴門に収容所が作られました.
板東俘虜収容所です.
https://www.furusato-tax.jp/gcf/230
作られたのは第一次世界大戦(1914〜1918)のさなか.
敵対していたドイツ兵,およそ1000人が,二年半にわたって捕らえられていました.
しかし,ここでの生活は,収容所という言葉からは,かけ離れたものでした.
(映像 捕虜の残したスケッチ:
「収容所の中のボウリング場とそれを楽しむ捕虜たちの絵」
「水着姿で海水浴を楽しむ捕虜たちの絵」
「町中での競歩大会に出場した捕虜たちと応援する日本人」)
https://rnavi.ndl.go.jp/kaleido/entry/72.php
収容所を管理していたのが所長の松江豊寿(とよひさ).
松江は,捕虜に対しある信念を持って接していました.
「俘虜は犯罪者ではない.彼らも祖国のために立派に戦ったのだから,武士の情けを持って遇したい」
松江の信念に大きな影響を与えたのが,彼の父親だったと言われています.父親は,幕末に新政府と戦った会津藩士でした.
戦争に敗れた松江の父親は,故郷を追われます.なれない青森県での生活を余儀なくされました.
その姿を見てきた松江は,敗者に対する優しさと敬意を常に持ち続けていたのです.
収容所では捕虜たちによる新聞の発行も許されていました.
新聞記事「我々は,松江に感謝しなければならない.というのも,ここの生活を地獄にしていたかもしれない所長がいることを,経験上,知っているからだ」
(映像 サッカーのユニフォームを着た俘虜たちの集合写真)
https://rnavi.ndl.go.jp/kaleido/entry/72.php
捕虜たちは,松江の思いをしっかり受け止めていました.敵味方を超えた強い信頼関係が生まれたのです.
その中で45名の捕虜が楽団を結成.
アジアで初となる「第九」の演奏が行われたのです.
鳴門市公式ウェブサイト なると第九 https://www.furusato-tax.jp/gcf/230
戦争が終わると,捕虜たちは故郷に帰っていきました.しかし,松江のことを忘れてはいませんでした.
今年,「第九」100周年の演奏会に合わせ,鳴門である式典が行われました.
松江の銅像の除幕式です.
https://mainichi.jp/articles/20180602/ddl/k36/040/473000c
ドイツから,この式典に参加した人がいました.
マリオン・ズーア・モイリッヒさん.
捕虜の子孫です.
マリオンさんは,捕虜だった祖父の話を聞いて育ったと言います.
マリオンさん「松江豊寿という人がいたから,おじいちゃんは生き残って,『本当に素晴らしい人だったよ』と子どもの頃から教育されてきて,松江さんがいなかったら,私は存在してないし.彼は私にとって英雄です」
(映像 祖父カールステン・ヘルマン・ズーアさんの写真)
マリオンさんの家では,松江のことを決して忘れないよう,代々語り継がれてきたのです.
この日,マリオンさんは,思いがけない出会いをしました.
松江の孫の行彦さんです.
(映像 松江行彦さんと握手をするマリオンさん)
「あなたと会えてすごくうれしい」
「おじいさまは,本当にご立派な方でした」
「どうもありがとう」「本当に立派な方でした」
「みんなと一緒に生活できたから,おじいさんはすごくうれしがっていた」「ありがとう」
「すごく日本語上手ですね」
「おじいさまのおかげです.私は松江さんのおかげで,日本語を勉強しようと決心したんです」
「あ〜すごい.すごいね」
時代を超え,今なお,松江は,日本とドイツの人々を結びつけていました.
鳴門で歌い継がれてきた「第九」.
そこには,松江を描いたかのような歌詞があります.
「時代が離ればなれにしたものを,あなたの不思議な力は,再びつなぎ合わせる」
第2楽章 守り続けてきた人
(続く)
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/08/16/013258
yachikusakusaki.hatenablog.com
付録
「第九」歌詞日本語訳一部抜粋
http://we-love-classic.com/chorus/daiku/daiku-kashi-dokugo.html
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歓喜よ、美しい(神々の)火花よ、
天上の楽園の乙女よ!
私たちは情熱の中に酔いしれて、
崇高なあなたの聖所に足を踏み入れる、何と神々しい!
この世の習わしが厳しく分け隔てたものを、
あなたの聖なる偉力が再び結び合わせる…(そして)
あなたの穏やかにたゆたう翼のもと、
すべての人々は兄弟となる。
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