シモツケが咲いています.
いったん一斉に咲き,その後,数は少なくなるものの,秋までちらほらと咲いてくれます.孝行娘です.
シモツケの少し後に咲き始めたのは,先にもとりあげたヤマアジサイ.アジサイの季節ももうすぐですね. yachikusakusaki's blog
これから1ヶ月は彼らの季節.
わが家には何種類かあります.
シモツケは,ヤマアジサイと同じぐらい好きな花なのですが,どういうわけか,アジサイとちがって,ほとんど話題にならない気がします.
清少納言さんは誉めていたのに---.
枕草子64段 『枕草子』の現代語訳:37
草の花は撫子(なでしこ),唐(から)のはさらなり,大和のも,いとめでたし.女郎花(おみなえし).桔梗(ききょう).朝顔.刈萱(かるかや).菊.壺すみれ.
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夕顔は花のかたちも朝顔に似て,言ひ続けたるにいとをかしかりぬべき花の姿に,実の有様こそ,いとくちをしけれ.などて,さはた生ひ出でけむ.ぬかづきといふ物のやうにだにあれかし.されどなほ夕顔といふ名ばかりは,をかし.しもつけの花.蘆(あし)の花.
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現代語訳:『枕草子』の現代語訳:37
[ 夕顔は花の恰好が朝顔にとてもよく似ていて,朝顔・夕顔と並べて続けて言ってもおかしくない花の姿をしているのに,実の様子がとても情けないのである.どうしてあのような無様な実がなるようになったのだろうか.せめて,ぬかづきという物の実くらいであって欲しいと思うのだが.しかし,やはり夕顔という名前だけは風情がある.しもつけの花.蘆(あし)の花も良い.]
水垣久氏の「和歌歳時記」
はシモツケを,私が思うように,でも,私には書けない文章で説明してくれています.和歌の世界でもシモツケをあまり取りあげていないようです.
バラ科シモツケ属の落葉低木.初夏,紫陽花よりもっと小さな花を群がり咲かせ,滲むような独特の色合が美しい.花の色は淡紅色と白とある.鎌倉長谷の光則寺で撮影した一株は二色混じって咲いていた.
名は下野の国(今の栃木県)で初めて発見されたためとか,下野にたくさん咲いていたためとか言われている.私は白花を見た時,あたかも霜が付いているようだったので,「霜付け」ではないかと素人考えをしてみたことがあるが,似たようなことを考えた人はいるらしい.
枕草子の「草の花は」の章段に取り上げられ,王朝人にも愛されたようだが,和歌では余り人気がなく,物名歌でたまに取り上げられている程度.
「小さな花が群がるように咲く」のでアジサイの仲間か近縁と思っていましたが---.
シモツケはバラ科シモツケ属 Spiraea japonica
Rosaceae - Wikipedia バラ科 - Wikipedia
私が勝手に思い込んだ「 アジサイと近縁」は全くの見込み違い.
観察力が私にないこともありますが,姿形だけでは近い遠いは分からないのが常.
APG体系 - Wikipedia キク類 - Wikipedia バラ類 - Wikipedia
こちらの方がシモツケよりよく知られているような気がします.ユキヤナギはかなり以前から,コデマリは,最近とてもよく見かける花.
ユキヤナギの写真<2> - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 コデマリの写真<1> - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸
代わりにアジサイの二首目を.
「平安時代にはほとんど見えなくなる。古今集から新古今集までの八代集に、紫陽花を詠んだ歌は一首も採られていない。梅雨の季節に欠かせない風物詩と思える紫陽花が、古典和歌ではこれほど不人気なのも、不思議な気がする。和歌歳時記)」)
一首目としてとりあげたのは
あじさいの,八重咲く如く,弥(や)つ代にを,いませわが背子,見つつ偲はぬ 橘諸兄 (第二十巻 4448)
アジサイの季節ももうすぐですね.あじさい/万葉集 yachikusakusaki's blog
こととわぬ,きすらあじさい,もろえらが,ねりのむらとにあざむかえけり
言(こと)問わぬ,木すらあじさい,諸弟(もろえ)らが,練(ねり)の村戸にあざむかえけり 大伴家持 (第4巻 773)
言問わぬ,木すらあじさい,諸弟らが,練の村戸にあざむかえけり
▽楽しい万葉集 http://www6.airnet.ne.jp/manyo/main/four/m0773.html
ものを言わない木でさえ,紫陽花(あじさい)のように色鮮やかに見せてくれますね.それ以上に言葉をあやつる諸弟たちの上手い言葉にすっかりだまされてしまったことですよ.
▽和歌歳時記 紫陽花(アジサイ) 和歌歳時記
家持の歌では,紫陽花が人を欺く不実なものの譬えに使われている.色が変わりやすく,しかも実を結ばない花なので,こう言うのだろう.いっぽう諸兄の歌では,八重咲きの紫陽花をめでたい花として取り上げている.当時の紫陽花は,花(実は萼であるが) の数が少ない日本原産のガクアジサイであろうと言われているが,貴族の庭園などには厚咲きのものも植えられていたらしい.それなりに古来賞美されてきたのだろう.