ローレル/ベイリーフ3 ゲッケイジュは常緑の低木または小高木で雌雄異株.和名は中国名月桂に基づいています.英語名は,bay tree/bay laurel/true laurelなど.月桂樹は,古代ギリシャ・ローマ以来,象徴的な役割を与えられていました.ギリシャ語ではダフネ.アポローンが初めて恋した巫女(山の精)の名前で,アポローンのシンボルとして,月桂樹のリースがピューティアの競技会の賞品として贈られました.その象徴性はローマ文化にも受け継がれ,勝利の象徴,poet laureate等の語源となっていま

スパイス(スパイス&ハーブ)について,まとめています(すでに取り上げたシソ目シソ科のハーブは省きます).

 

スパイス(スパイス&ハーブ)21

ローレル/ベイリーフ

植物としてのゲッケイジュ

(主に英語版ウィキペディア https://en.wikipedia.org/wiki/Laurus_nobilis

から)

ローレルはゲッケイジュ Laurus nobilisの葉を乾燥したスパイス/ハーブです.

クスノキ目 Laurealesクスノキ科 Laureaceaeゲッケイジュ属 Laurusゲッケイジュ Laurus nobilis.

常緑の低木または小高木で,大きさは様々.時には高さ7~18mに達することがあります.雌雄異株で,雄花と雌花は別々の株に咲きます.

地中海沿岸が原産で,日本へは明治時代に渡来とのこと.

中国では「月桂」という名がつけられており,和名「ゲッケイジュ」はこの中国名に基づいています.

:中国で,伝説の「月の桂」と名付けられたことから,とてもリスペクトされた植物だったと思われます.

 

英語名は,bay tree, bay laurel,true laurelなど.

なお,葉や香りがゲッケイジュ Laurus nobilisに似ていることから,様々な科・属の多くの植物も「bay」または「 laurel」と呼ばれていて,ローレルと同様,ハーブとして用いられています.

:California bay leaf,Indian bay leaf or malabathrum,Indonesian bay leaf or Indonesian laurel,West Indian bay leaf, Mexican bay leaf

スパイス/ハーブとしての利用以外に,歴史的には,医薬としても用いられました.また,現代では,鑑賞用にも植えられ,鑑賞用品種も開発されています.(例えばL. nobilis 'Aurea').

 

象徴としての役割

ゲッケイジュは,古代ギリシャ・ローマ以来,特別な象徴的な役割を与えられていました.

ギリシャ

ギリシャ語では,ゲッケイジュは同名の山の精にちなんでダフネと呼ばれます.
初期のギリシャ神話では,アポローンアポロン,アポロ)は,ガイア(母なる大地)の巫女ダフネに恋をし,彼女を誘惑しようとします.ダフネは,ガイアに助けを求め,クレタ島に運ばれます.ガイアはダフネの代わりに月桂樹を残し,アポローンはそこから花輪を作って自分を慰めたとされています.
ローマの詩人オヴィッド(オウィディウス)のものを含む他のバージョンの神話では,山の精ダフネは,アポローンに追いかけられ,直接月桂樹に変身したとされています.

ゲッケイジュは,古代ギリシャ月桂冠に使われ,最高の地位の象徴でした.
ゲッケイジュの花輪は,ピューティアの競技会の賞品として贈られました.これは,ピューティア競技会がアポローンを讃えるもので,ゲッケイジュがアポローンのシンボルのひとつだったためです.詩人ルキアヌスによれば,アポローン神殿の巫女は,神殿の中に生えている神聖な木の月桂樹の葉を噛んで,有名な神託的予言を発するための熱狂(トランス状態)を誘発していたと言われています.
 

ローマ

その象徴性はローマ文化にも受け継がれ,月桂冠は勝利の象徴とされ,また,不死,儀式の浄化,繁栄,健康とも関連づけられました.

月桂樹は,アウグストゥスに始まるローマ皇帝と密接な関係がありました.例えば,ローマのパラティーノの丘にあるアウグストゥスの邸宅の入り口には2本の月桂樹が植えられており,その邸宅はアウグストゥスが建てたアポローン・パラティヌス神殿とつながっていました.

また,ゲッケイジュLaurelは,baccalaureate (バカロレア 学士号),poet laureate(月桂冠詩人),resting on one's laurels(現在の栄誉に満足する)などの表現の語源にもなっています.

そして,現代のイタリアでは,月桂冠は卒業する学校の生徒が冠としてかぶります.

https://www.google.com/search?client=safari&sca_esv In modern Italy, laurel wreaths are worn as a crown by graduating school students

 
付録
ローレルを用いたレシピ
検索すると,非常に多くのものがみつかりますが,まとまった物としては,マコーミックのサイト,S&Bのサイトがとても参考になります.