ナスを詠んだ短歌  日本人が長く食べてきた野菜なす(古くはなすび).世界に広がったなすには,様々な姿・色をしたものが.黒に近い濃い紫色の日本のなすは世界でも人気とか. 葉も花も実も紫の茄子ばたけつやつやしもよ朝露帯びて 窪田空穂  女(め)のわらは入日のなかに両手もて籠(こ)に盛る茄子のか黒きひかり 斎藤茂吉  出盛りとなりて紫紺の色深し一山の茄子を日ぐれにあがなふ 君島夜詩  ゆうぐれに澄む茄子畑かなしみのしずくとなりて茄子たれており 玉井清弘

「夏野菜の代表の一つ」とされるナスですが,現在の日本では一年中手に入る野菜となっています.

各県の分業が進み,冬春は高知・熊本・福岡などから出荷され,夏秋は群馬・茨城などからの出荷が多くなります.

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500215&tstat



https://www.takii.co.jp/CGI/tsk/shohin/shohin.cgi?breed_seq=00000882

https://www.takii.co.jp/CGI/tsk/shohin/shohin.cgi?breed_seq=00000350

https://www.takii.co.jp/CGI/tsk/shohin/shohin.cgi?breed_seq=00000853

https://www.takii.co.jp/CGI/tsk/shohin/shohin.cgi?breed_seq=00000895

 

なすは日本人が長く食べてきた野菜.正倉院文書にも記録があります.コトバンク

古くは「なすび」で,現在は,なすびから変化した呼び名=「なす」が一般的な名前.「なす」は,「なすび」の女房詞からとのこと.日本国語大辞典

・私の祖母は「なすび」と呼んでいましたが,今でもこの名は残っていますね.

・にょうぼうことば【女房詞・女房言葉】 日本国語大辞典

〘名〙 室町初期ごろ,御所や仙洞御所につかえる女房が使い始めた一種の隠語で,主として食物,衣服などに用いた.上品で優雅なことばとして,足利将軍家徳川将軍家につかえる女性からしだいに町家の女性に普及し,また男性の用語にもはいるようになった.米を「うちまき」,豆腐を「おかべ」,田楽を「おでん」,すしを「すもじ」,杓子しゃくしを「しゃもじ」,湯巻きを「ゆもじ」という類.

 

原産地はインドとの記述が多いものの,必ずしも定まってはいないようです.

ナスは先史時代から南アジア〜東アジアで栽培されてきたとのことhttps://www.newworldencyclopedia.org/entry/Eggplant )

中国の『斉民要術(せいみんようじゅつ)』(530ころ)には詳しく記述があり,ヨーロッパへは遅れて,西ローマ帝国滅亡後の中世に渡来https://www.newworldencyclopedia.org/entry/Eggplant ).

 

世界に広がったなす.

アメリカ英語ではEgg Plant.ガチョウの卵に似ているためとのこと.

アメリカ以外の国の様々な「英語」では:

aubergine (英国,アイルランド), brinjal (インド,シンガポール,マレーシア, 南アフリカ), or baigan (ギニア) https://en.wikipedia.org/wiki/Eggplant

 

世界のナスには,様々な姿・色をしたものがあります.

https://www.marthastewart.com/1118473/eggplant-varieties

https://harvesting-history.com/the-4-greatest-heirloom-eggplants-of-all-time/

 

日本のなす

濃い紫色のものがほとんど.

この日本のなすは,世界でも人気のようです.あるアメリカの品種紹介のウェブサイトに「The Japanese Heirloom Eggplant, Black Egg(日本の伝統的なナス、ブラックエッグ)」として紹介されている品種には,

「現在栽培されている野菜の中で最も美しいもののひとつです.果実は黒に近い濃い紫色.果肉はとても甘い」

との解説がつけられています.https://harvesting-history.com/the-4-greatest-heirloom-eggplants-of-all-time/

 

確かに,黒光りした濃い紫の日本のナスたちは,美しくて美味!

https://www.maff.go.jp/j/agri_school/a_tanken/nasu/03.html

 

なすを詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

葉も花も実も紫の茄子ばたけつやつやしもよ朝露帯びて  窪田空穂 茜雲

 

(め)のわらは入日のなかに両手もて籠(こ)に盛る茄子のか黒きひかり  斎藤茂吉 赤光

 

わが植ゑし茄子は光沢(つや)ある紫にのびて稚き実は地につけり  若山喜志子 芽ぶき柳

 

茄子の木のさす枝はかたく疎々(あらあら)にその葉はすきて時すぎんとす  尾山篤二郎 草籠

 

植ゑかへて土になじまぬ茄子苗の夕べすがやかに葉を立ちにけり  鈴木孝 寒燈

 

放射能ふくみて降れば店さきの皿に濡れをり生瓜(きうり)と茄子(なすび) 窪田章一郎 (六月の海)1955

 

出盛りとなりて紫紺の色深し一山の茄子を日ぐれにあがなふ  君島夜詩 暗い川

 

茄子の殻あつめて焚けば折をりに青き炎が地を這ひにける  宮岡昇 樫に鳴る風

 

ゆうぐれに澄む茄子畑かなしみのしずくとなりて茄子たれており  玉井清弘 風箏