ニワフジは「あい色染料」属? おんめ様(鎌倉大巧寺)にはニワフジが植えられていています.ニワフジはコマツナギ属Indigofera.Indigoferaの語源はインド産のあい色染料Indigo.同属のタイワンコマツナギなどからIndigo染料が取られ,化学染料が作られるまでは世界を席巻していました.歴史は古く,2016年にペルーで発見されたインディゴ染めの布が6,200年前にさかのぼると報告されました.“ブルージーンズの「青」は、6,200年前のペルーで初めて作られた”(ワシントンポスト)

おんめ様(鎌倉大巧寺)にはニワフジが植えられていています.5月に開花して,今は最後の花が咲き終わろうとしているところ.

花の形が藤に似ているため庭藤と名前がついたのでしょうが,木全体の形,葉,そして花の色は,どちらかというと萩に似ていると思います.初見のときには「こんなに早く萩が咲く?」と思ってしまいました.

 

ニワフジは,「あい色染料」属?

ニワフジは,マメ科コマツナギ属の植物.同属のコマツナギ(駒繋)という植物の名が日本語属名として採用されています.

そして,コマツナギ属の学名はIndigofera.

 

初めは全く気がつきませんでしたが---

「Indigoferaの語源はラテン語 indicum+ferazに由来する.Indicumはインド産のあい色染料を意味し, feraxは肥沃な,実を結ぶという意味です:

http://www.indigofera.com.au/index-6b-name.html

The word Indigofera is derived from Latin with indicum referring to blue dye from India, and ferax meaning fertile or fruit bearing.

 

コマツナギ属という和名に惑わされていましたが,ニワフジの属名の意味するところは「あい色染料」だったんですね.

インド産のあい色染料をとるために,インドにある次の二つの植物が用いられていて,特にタイワンコマツナギからはよい染料が取られるとのこと.

 

Indigofera tinctoria タイワンコマツナギ   英名 true indigo

https://ja.wikipedia.org/wiki/タイワンコマツナギ

 

Indigofera suffruticosa ナンバンコマツナギ(インドアイ) 英名west Indian indigo、wild indigo

 

インディゴは,多様な植物から取られていた.

日本のあい色染料は蓼藍と呼ばれ,タデ科の藍からとられてきました.

つい最近まで知りませんでしたが,蓼藍染料の成分は,木藍(タイワンコマツナギやナンバンコマツナギからとる藍)と同じIndigo.別々の植物から同じ染料を取ってきていたんですね.

https://ja.wikipedia.org/wiki/アイ_(植物)

 

一方,琉球王朝から続く沖縄の藍染めには琉球藍が使われました.

こちらはシソ目キツネノゴマ科イセハナビ属の植物.染料の成分は,こちらもIndigoです.

http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2015022500108/

 

一方,世界的に有名なあい色染料はindigo(インド藍とも呼ばれています).木藍とも呼ばれ,上述のタイワンコマツナギやナンバンコマツナギからとられてきました.

indigoの語源は,ギリシャ語で「インドの」を意味するIndikós(ランダムハウス英語辞典).染料の名前になっているように,化学染料に取って代わられる前は,インドの染料が世界に広がっていました.

 

そして,これら植物からとられる染料に取って代わったのが,あい色化学染料Indigo.

Indigoはもともとはインドから広まった染料の名前.そして植物の名前としても用いられてきました.しかし,現在,主に(少なくとも日本語では)この化学染料名として用いられているように思います.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/64/8/64_406/_pdf

https://ja.wikipedia.org/wiki/インディゴ


染料としてのインディゴは,紀元前2500年~ 1200年頃のエジプトのテーベ古墳からミイラの巻布「マムミー布」が発見され,これが世界最古の藍染めの布とされてきました.http://www.japanblue-ai.jp/about/history.html

 

しかし,2016年にペルーで発見されたインディゴ染めの布の切れ端が6,200年前にさかのぼると報告されました.

これを伝えるワシントンポスト紙の記事の題名は

https://www.washingtonpost.com/news/speaking-of-science/wp/2016/09/16/the-blue-for-blue-jeans-was-first-made-6200-years-ago-in-peru/

“ブルージーンズの「青」は、6,200年前のペルーで初めて作られた”

 The ‘blue’ for blue jeans was first made 6,200 years ago in Peru

How were blue jeans dyed?

この染料も,コマツナギ属Indigoferaの植物からとられたと推定されています.

Indigofera suffruticosa ナンバンコマツナギは,日本ではインドアイとも呼ばれていますが,「アメリカ南部、カリブ海諸国、メキシコ、中央アメリカ、アルゼンチン北部までの南アメリカなど、亜熱帯および熱帯のアメリカ大陸に自生しています https://en.wikipedia.org/wiki/Indigofera_suffruticosa」とのこと.