小豆は,世界でも特に日本人に好まれている豆といわれています.
https://www.mame.or.jp/syurui/photogallery/shijitsu.html
https://www.mame.or.jp/syurui/photogallery/hana.html
和菓子の餡,お汁粉----大好きです.
ただ,生クリームを使ったケーキ類に比べて,若者の人気がやや下降気味のようにも思います.脂質が少ないことも一因かなと思いますが,最近は「バターあん」「あんバタトースト」など,バターと一緒に食べることが人気となっているとか.どこまで一般的なのか私は知りませんが---
試したところかなり美味しい!
逆に脂質の少ない小豆は,健康志向の欧米で注目されはじめているという報道もあります.
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022122900738&g=eco
欧米でも注目されつつある小豆.その歴史を調べてみました.
小豆の歴史
▽小豆は縄文時代から食べられていた.
小豆は,縄文時代後期の前半の遺跡から出土.
例えば,京都府桑飼下遺跡(紀元前2000〜前1000年)からの出土が報告されています.
https://www.mame.or.jp/Portals/0/resources/pdf_z/051/MJ051-06-TK.pdf
▽小豆中国渡来説⇔栽培化の中心の一つは日本
中国の神農書(紀元前3000年〜前2500年)にアズキの栽培品種の記載があるとされ,斉民要術(533〜540年頃)に播種の記述がある.
しかし,魏志東夷伝倭人伝には,日本の産物としての記載がない.
=アズキは日本へ中国より渡来したと信じられてきた.
(前田知美「豆」法政大学出版会)
しかし,アズキの変異種「ヤブツルアズキ」,ヤブツルアズキとアズキの中間型「ノラアズキ」(雑草型アズキ)の遺伝的類縁関係の情報や考古植物学的知見が大きく増加し,少なくともアズキの栽培化の中心の一つが日本である可能性も高くなってきている.
(前田知美「豆」法政大学出版会)
▽日本神話に記載があり,五穀の一つとされてきた.
よく知られているように,古事記,日本書紀では,神(古事記ではオホゲツヒメ/大気都比売/大宜津比売,日本書紀ではウケモチ/保食)の死体の一部から生まれた五穀の一つとして,小豆が記載されています.
ただ,五穀として実際に記されているのは,
古事記では,稲,粟,小豆,麦,大豆.
日本書紀では,粟,稗,稲,麦,大豆,小豆.⇒六穀になってしまいますが---.大豆と小豆を「豆」とすれば五穀に収まります.
なお,このように死体から作物が発生する形式の神話は,世界の各地で伝承されていて,
「ハイヌウェレ型神話」(ハイヌウェレ:インドネシア神話の少女の名前)と呼ばれています.
https://kotobank.jp/word/ハイヌウェレ-1576606
神代篇 其の三 スサノヲとオホムナヂ
----すると,殺されたオホゲツヒメの身につぎつぎにものが生まれてきての,
頭(かしら)には蚕が生まれ,二つの目には稲の種が生まれ,二つの耳には粟が生まれ,鼻には小豆が生まれ.陰(ほと)には麦が生まれ,尻には大豆(まめ)がうまれたのじゃった.
日本書紀 第五段一書(十一)
(Nihonsinwa https://nihonsinwa.com/page/699.html)
アマテラスは天界の料理人の天熊人(アメノクマヒト)を地上に下ろして様子を見に行かせました.
ウケモチ神はすでに死んでいました.ウケモチの髪が牛馬に成っていました.
頭からは粟が生えました.眉からは蚕が産まれました.眼には稗(ヒエ)が生えました.腹には稲が生えました.
女性器には麦と大豆と小豆が生えていました.
天熊人(アメノクマヒト)はそれらを全て持ち帰りました.
アマテラスはとても喜び,
「これらのものは,顯見蒼生(ウツシキアオヒトクサ=地上に生まれた人民)を生かすための食料となる」と言いました.
▽アズキの「赤色」
ハレの日の赤飯のもとは「小正月(正月15 日)」の「アズキガユ」.
(ただし,赤飯は赤米に由来するという説もある)
アズキガユの起源は中国と考えられる.
六〜七世紀頃の中国年中行事の記載では:
・赤豆で疫鬼(中国に伝わる鬼神あるいは妖怪.疫病を引き起こすなどして人間を苦しめる)を祓う.
・赤豆を疫病のために用いる.
(前田知美「豆」法政大学出版会)