藤の花を詠んだ歌 我が宿の時じき藤のめづらしく今も見てしか妹が笑(ゑ)まひを 大伴家持  わが楣(のき)に藤の花房垂りそめて時はしづけき怪しきまでに 吉野秀雄  藤棚はあした小(お)暗し咲き垂るる藤の花尖(さき)みな光持つ 宮柊二  活殺は天のこころとおもふまで大白藤の花のゆたけし 伊藤一彦  夕明かりにかすかに藤の花揺れてのぞみ湧く今朝着きゐし葉書 川口美根子  蜜蜂が花粉に足を太くして咲きにぎはへる藤のなかとぶ 奥村晃作

一昨日出かけた.鎌倉浄妙寺では,白萩がほぼ満開で,良い香りとともに楽しんできました.

白藤のある鎌倉のお寺としては,英勝寺がよく知られています.

今日出かけてみたのですが,大きな藤棚にポツポツ咲いているだけでした.見頃になるまでには,まだ時間がかかりそう.例年(連休ごろ)よりは早いかもしれませんが.

 

白藤の開花はまだですが,英勝寺の近くの山々は,藤の花で彩られていて,楽しめます.

観光客の方は,ほとんど見ていないようですが,鎌倉は山桜と藤を楽しめる山々に囲まれていることは,もっと知られてもいい.

特に,藤の花は,山桜ほど目立たないので,見過ごされやすいかと思います.

4月半ば,山の1カ所が色づくいたかな,と思うまもなく,一気に山を染め上げていくのを見るのは毎年の楽しみです.

 

新緑に一筆添へし藤の花山なみをうすむらさきに染めゆく

 

 

英勝寺の崖に安置された仏様にかかった藤の花は,かなりいい雰囲気を演出していました.

 

藤の花を詠んだ短歌は,昨年既に取り上げました.

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/04/18/235038

今年も,新たな歌を加えて,再度,紹介させていただきます.

 

藤を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記 鳥居正博 教育社 より)

 

恋しければ形見にせむとわが宿に植ゑし藤波いま咲きにけり  山部赤人 万葉集・八・一四七一) 

 

我が宿の時じき藤のめづらしく今も見てしか妹が笑(ゑ)まひを  大伴家持  巻八 一六二七

(私の庭に咲いた,季節はずれの藤のようにめずらしくも今,見たいですね、あなたの笑顔を.  この歌の題詞には,大伴家持(おおとものやかもち)が季節はずれの藤の花と萩の紅葉を折り取って,坂上大嬢に贈った歌、とあります.  楽しい万葉集

 

藤波の影なす海の底清み沈(しづ)く石をも玉ぞわが見る  大伴家持 万葉集 巻十九 四一九九 

 

咲く花の下にかくるる人多みありしにまさる藤のかげかも  在原業平 伊勢物語

 

緑なる松にかかれる藤なれどおのがころとぞ花は咲きける  紀貫之 新古今集

 

神路山君がこころの色をみんした葉の藤に花しひらけば  西行 夫木抄

 

夕月は円く大きく空にあり藤の花芽はほぐれかかれり  岡麓 庭苔

 

わが楣(のき)に藤の花房垂りそめて時はしづけき怪しきまでに  吉野秀雄 苔径集

 

藤棚はあした小(お)暗し咲き垂るる藤の花尖(さき)みな光持つ  宮柊二 藤棚の下の小室

 

藤浪のしたに暮れのこるベンチありて幾人が今日ここに憩ひし  上田三四二 雉

 

活殺は天のこころとおもふまで大白藤の花のゆたけし  伊藤一彦 火の橘

 

夕明かりにかすかに藤の花揺れてのぞみ湧く今朝着きゐし葉書  川口美根子 空に拡がる

 

蜜蜂が花粉に足を太くして咲きにぎはへる藤のなかとぶ  奥村晃作 三齢幼虫