木の葉散る・落葉を詠った歌  英勝寺までの散歩の道すがら,沢山の落葉に出会いました.多くが色あせた中に鮮やかな葉も.「こゝかしこ さだめなく とび散らふ 落葉」の季節   石にまどひ木の根にまどひ落葉らはおのがまにまにたむろせるみゆ 伊藤左千夫  風いでて落葉しきりに降る音す酔へどもさびし肘曲げて寝む 吉井勇  たどきなく耳を澄ませば身もだえて落葉を急ぐ木々と思ほゆ 大西民子 

黄葉の季節は,また,落葉の季節でもあります.

昼前に英勝寺まで散歩した際の画像です.多くは色あせた姿ですが,鮮やかな色彩を保った葉も混ざってきます.

 

「落葉」という言葉は,古事記でも使われている語ですが,万葉集には詠まれず,平安時代の短歌にも,「木の葉散る」等はあっても,歌中で「落葉」は使われていないとのこと(古今短歌歳時記)

近代以降は,多くの歌人が「落葉」を詠い,またヴェルレーヌの詩「落葉」(秋の歌)も愛誦されたとのこと(古今短歌歳時記)

 

落葉      ポオル・ヴェルレエヌ(上田敏 訳)

 

秋の日の ヴィオロンの 

ためいきの 身にしみて

ひたぶるに うら悲し.

 

鐘のおとに 胸ふたぎ

色かへて 涙ぐむ

過ぎし日の おもひでや。

 

げにわれは うらぶれて

こゝかしこ さだめなく

とび散らふ 落葉かな.

 

 

木の葉散る・落葉を詠った歌

古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)より

 

十月(かむなづき)時雨の常かわが背子が宿のもみち葉散りぬべく見ゆ  大伴家持 万葉集 巻一九 四二五九

 

 

秋風にあへず散りぬる紅葉ばのゆくへ定めぬわれぞかなしき  よみ人しらず 古今集

 

 

かぎりあれば信夫の山のふもとにも落葉がうへの露ぞ色づく  源通光 新古今集

 

 

石にまどひ木の根にまどひ落葉らはおのがまにまにたむろせるみゆ  伊藤左千夫 左千夫歌集

 

 

落葉する前の樹木のしづかなるさびしきこころわが夜に来ぬ  金子薫園 草の上

 

 

秋ふかき村の小さな墓地中の胡桃の木より落葉しやまず  斎藤茂吉 遠遊

 

 

真冬日のひたと射し照る落葉山越えいそぎつつ心はちらず  若山牧水 くろ土

 

 

風いでて落葉しきりに降る音す酔へどもさびし肘曲げて寝む  吉井勇 天彦

 

 

渦巻きて落葉舞ひ立つ一ところそれのみにして静けき林  渡辺元子 軽雲

 

 

たどきなく耳を澄ませば身もだえて落葉を急ぐ木々と思ほゆ  大西民子 不文の掟