薔薇2  大船フラワーセンターにある薔薇は,英語ではGarden Rosesと呼ばれる交配種が大部分です.その中で,現在,最も人気があるのが,「ハイブリッド・ティー・ローズ」.「ゴスペル」も「マリア・カラス」もハイブリッドティー.19世紀後半,よく咲くが傷みやすいティーローズと,生命力の強いハイブリッドパーペチュアルを交配して生まれました. 大輪を掲ぐる薔薇の太茎の醜々(しこしこ)しくて影も動かず 馬場あき子  ゆるやかにほどけつつなほ巻き緊むる薔薇の大輪に触るれば硬し 石川恭子

薔薇は,世界で最も人気のある花の一つで,「農耕文明の始まりとともにあった」と言われています.ニッポニカばら

アメリカ,イギリスをはじめ多くの国の国花にも.国花アメリカ 国花イギリス 国花イラン 国花ブルガリア 国花チェコ

 

とは言っても,長い育種の歴史を経て,現在の薔薇があります.

 

昨日大船フラワーセンターのバラ園のバラをいくつか紹介しました.

バラ園にあるバラは,英語ではGarden Rosesと呼ばれる交配種が大部分です.

Garden roses https://en.wikipedia.org/wiki/Garden_roses: Garden roses are predominantly hybrid roses that are grown as ornamental plants in private or public gardens.

 

その内,現在,最も人気があるのが,「ハイブリッド・ティー・ローズ  hybrid tea roses」と呼ばれる品種.

 

Rose  https://www.britannica.com/plant/rose-plant

(DeepL翻訳)

ガーデンローズにはいくつかの大きな分類がある.

最も有名で人気のあるのはハイブリッド・ティー・ローズで,温室や庭園で栽培され,花屋で売られているバラの大部分を占めている.ハイブリッド・ティーは,さまざまな色のバラがあり,左右対称の大きな花を咲かせる.ハイブリッドティーは,よく咲くが傷みやすいティーローズ(*)と,生命力の強いハイブリッドパーペチュアル(**)を交配して生まれた.

以後,生み出されて品種:フロリバンダ,グランディフローラ系,クライミングローズ 等々.

* 中国からヨーロッパへ渡った品種で,おそらく、ロサ・キネンシスR. chinensis)と大輪花を咲かせる大型樹形のロサ・ギガンテア(R. gigantea)との交雑種 https://gardenstory.jp/stories/21740

** 「オールドローズ」の集大成とも言われる“四季咲き交配種”.ハイブリッド・ティー以後が「モダンローズ」https://gardenstory.jp/stories/24143

ハイブリッド・ティーがつくられたのは19世紀後期.

 

なお,フラワーセンターで撮った上の二種(ゴスペル

,マリヤ・カラス)は,かなり名前が知られている「ハイブリッド・ティー・ローズ」とのこと.

https://viaflor.com.ua/en/news/roza-gospel/ http://www.noibara.net/encyclopedia/hybrid_tea_rose/

 

 

日本で言う「西洋バラ」と英語の「Garden Rose」は,ほぼ同じ意味かと思われますが(素人判断),長らく中国のバラのみであった日本に,江戸時代後期〜明治に「西洋バラ」がもたらされます.モダンローズへの過渡期に当たる時期ですから,初めは「オールドローズ」が輸入鑑賞されたのだと思われます.

明治以降の歌人たちが,どのバラを見て歌を詠んだのかは定かではありません.目にするバラは野バラ,中国からの庚申薔薇,Garden Roseまで様々だったのでしょう.

 

なお,バラの語源/語誌については,日本国語大辞典にかなり詳細に記載されています.

https://kotobank.jp/word/荊棘・薔薇-2075674

ばら【荊棘・薔薇】

(荊棘) とげのある木の総称.いばら. 
(薔薇) バラ科バラ属の植物の総称.またはその中のいくつかを交配して作られた西洋バラを指す.

[語誌] (1)イバラ・ウバラあるいはムバラから変化したものと考えられる.もともとはとげのある草木の総称であったのが,次第に野イバラだけをさすようになった.とげがあるので嫌われていたらしく,歌材としてもほとんど顧みられなかった.

(2)紀貫之が「さうび」の題で「我はけさうひにぞみつる花の色をあだなる物といふべかりけり」〔古今‐物名〕と詠んだのは,中国から渡来したコウシンバラであるといわれる.

(3)江戸時代になると,「花壇地錦抄」に「荊棘のるい」として「はまなす長春,ろうざ,白長春,猩々長春,牡丹荊,ごや荊」などが列挙され,花木として広く親しまれていた様子がうかがえる.「ろうざ(rosa)」という名から見て,このころすでに西洋バラも流入していたようである.

 

バラを詠んだ短歌

古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)より

 

土のうへさだかに見せて夜の燭(しょく)庭におよべば薔薇の根元あり  宮柊二 日本挽歌

 

 

忘れ居し黄薔薇咲く日よ吾に経つ日の静けさを怖れて思ふ  近藤芳美 冬の銀河

 

 

薔薇挿せる帽子のくらき翳(かげ)にして交すなる戦争(いくさ)までの日の恋  塚本邦雄 透明文法

 

 

大輪を掲ぐる薔薇の太茎の醜々(しこしこ)しくて影も動かず  馬場あき子 雪木

 

 

ゆるやかにほどけつつなほ巻き緊むる薔薇の大輪に触るれば硬し  石川恭子 首歌

 

 

妹のパレットを見し夜のゆめ紅き異る幾百の薔薇  石川不二子 牧歌