「今後どのような状況になれば行動制限を取るのか、あるいは行動制限は取らずに医療が逼迫することや高齢者が亡くなっていくことを許容してでも経済や社会活動を優先するのか、国民への十分な説明が必要な時期ではないでしょうか。」(忽那賢志) 「今は社会全体で感染を抑える時」(青野由利 )  「欧米に倣って『行動制限はしない』と魔法の呪文を唱えれば、何もしなくても社会経済活動は回り、重症者や死者も増えない? まさかそんな根拠のない楽観に従ったはずはないと思うが」(青野由利 )

「今後どのような状況になれば行動制限を取るのか、あるいは行動制限は取らずに医療が逼迫することや高齢者が亡くなっていくことを許容してでも経済や社会活動を優先するのか、国民への十分な説明が必要な時期ではないでしょうか。」

「残念ながら今の流行状況を考慮すると、人と会う機会を減らすことを積極的に考慮すべき時期と考えます」

(忽那賢志 「新型コロナ重症化リスクが高い高齢者に行動自粛を求めることで重症者・死亡者を減らすことが期待できるのか」 YAHOO! NEWS 2022/7/31 ⇒下欄に抜粋 https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20220731-00307968

 

「今は社会全体で感染を抑える時」

(青野由利 「第7波の政治判断」毎日新聞2022/7/30 ⇒下欄に抜粋 

https://mainichi.jp/articles/20220730/ddm/002/070/039000c

 

「専門家会議も指摘したように、個人個人ができる『行動抑制』によって、感染リスクを高める人と人との接触機会を減らしてほしい、とのメッセージがいるはずだ。」

(青野由利「『行動抑制』はなくても」 毎日新聞2022/7/23 https://mainichi.jp/articles/20220723/ddm/002/070/158000c

 

忽那医師は次のようにも書いています.

 

「新型コロナ新規感染者数はいまだ増加を続けています。」(下欄データ参照)

「新規感染者数に遅れて、いよいよ死亡者数も増加してきました。」(下欄データ参照)

「このまま増加が続けば、過去最悪の死亡者数となった第6波を超えてしまう可能性もあるでしょう。

また、医療の逼迫も深刻になってきました。

新型コロナが蔓延し、医療従事者が感染者・濃厚接触者になる事例も増え、病院機能の維持が困難になってきています。」

 

遅ればせながら

このような現状に対し,政府は,7月29日に「BA.5対策強化宣言」を可能とするという追加の対策を発表しました。(下欄別表)

しかし,「行動制限」は高齢者のみに要請するという内容.

忽那医師の指摘です:

「高齢者は感染リスクの高い行動をして感染しているわけではありません(もちろん中にはそういう方もいるとは思いますが)」

「政府としては全ての世代を対象に行動制限はしたくないので、とりあえず重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人を対象として選んだのだと思いますが、特定の世代だけに負担を求めるからにはそれなりの科学的根拠が必要なのではないでしょうか。」

 

 

また,青野由利さんの昨日の記事https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20220731-00307968 )の書き出しは,次のようになっています.

 

「 欧米に倣って『行動制限はしない』と魔法の呪文を唱えれば、何もしなくても社会経済活動は回り、重症者や死者も増えない?

 まさかそんな根拠のない楽観に従ったはずはないと思うが、このところの政府の新型コロナ対応を見ると疑いたくもなる。」

 

政府,そして多くの都道府県知事は,「根拠のない楽観論に立って魔法の呪文を唱えているだけ」と言い切っても良いと,私は思います.

 

 

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20220731-00307968

新型コロナ重症化リスクが高い高齢者に行動自粛を求めることで重症者・死亡者を減らすことが期待できるのか

忽那賢志 感染症専門医

7/31(日) 11:26  YAHOO! NEWS

(抜粋)

第7波の流行により医療体制が逼迫する中、政府は7月29日に追加の対策を発表しました。(別表)

この中で、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人、その家族に行動の自粛を求めています。果たしてこの対策は妥当なのでしょうか?

 

新型コロナ新規感染者数はいまだ増加を続けています。

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東京都や大阪府など都市部の検査陽性率は50%を超えており、もはや完全にコントロール不能といった状況です。

 

新規感染者数に遅れて、いよいよ死亡者数も増加してきました。

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このまま増加が続けば、過去最悪の死亡者数となった第6波を超えてしまう可能性もあるでしょう。

 

また、医療の逼迫も深刻になってきました。

新型コロナが蔓延し、医療従事者が感染者・濃厚接触者になる事例も増え、病院機能の維持が困難になってきています。

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このように医療体制が逼迫する中、政府は7月29日に追加の対策を発表しました。(別表)

医療の負荷の増大が認められる場合、地域の実情に応じて各都道府県が「BA.5対策強化宣言」を行い、以下のような対策(別表)を実施することができるようになります。

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私が気になったのは、3の高齢者や基礎疾患のある人への行動自粛についてです。

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確かに重症化したり亡くなっているのは高齢者や基礎疾患のある方であり、こうした方々が感染しないようにすることを優先するというのは一見正しそうな判断に見えます。

しかし、彼らは感染リスクの高い行動をして感染しているわけではありません(もちろん中にはそういう方もいるとは思いますが)。

例えば大阪府で第6波で亡くなったのは、大半が70代以上の高齢者ですが、医療機関や高齢者施設で感染したと考えられ事例が7割以上を占めています。

こうした事例は、外から施設にウイルスが持ち込まれたことによって感染しています。

つまり、施設のスタッフや面会者が発端となっていることがほとんどです。

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政府としては全ての世代を対象に行動制限はしたくないので、とりあえず重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人を対象として選んだのだと思いますが、特定の世代だけに負担を求めるからにはそれなりの科学的根拠が必要なのではないでしょうか。

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今後どのような状況になれば行動制限を取るのか、あるいは行動制限は取らずに医療が逼迫することや高齢者が亡くなっていくことを許容してでも経済や社会活動を優先するのか、国民への十分な説明が必要な時期ではないでしょうか。

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現状を改善するためには私たち一人一人が自主的に感染対策を徹底することで感染者数を減らすしかありません。

残念ながら今の流行状況を考慮すると、人と会う機会を減らすことを積極的に考慮すべき時期と考えます。

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帰省をされる場合には、ご自身のご家族と帰省先の方々、お互いの感染リスクを下げるために、会う前には検査を活用しましょう。

また、できる限りワクチン接種を

60歳以上または基礎疾患のある人:4回

12歳以上で上記以外の人:3回

5歳〜11歳の人:2回

の状態にアップデートしておきましょう。

 

 

 

土記 第7波の政治判断

青野由利

朝刊2面  毎日新聞 2022/7/30 東京朝刊 有料記事

(抜粋)

 欧米に倣って「行動制限はしない」と魔法の呪文を唱えれば、何もしなくても社会経済活動は回り、重症者や死者も増えない?

 まさかそんな根拠のない楽観に従ったはずはないと思うが、このところの政府の新型コロナ対応を見ると疑いたくもなる。

 もちろん、政治的判断が科学的判断と異なることはありうる。

 その場合には、「科学的判断はこうだが、政治的にはこれをめざしてこうする」と説明する必要がある。その際、メリットとデメリットをどうてんびんにかけたのかも明確に語ってもらいたい。

 さんざん指摘されてきたことだが、第7波の感染爆発に直面し、政府がどういう戦略で臨んでいるのか、さっぱりわからない。

 BA・5はこれまでで最も感染力が強く、免疫もすり抜ける。従来通りの対策なら感染者が急増することに何の不思議もない。

----中略

 ここへきて、政府は都道府県の「対策強化宣言」支援を打ち出したが、遅きに失した感がある。高齢者などに的を絞った行動抑制という根拠の薄い内容も含まれる。

 日本は欧米とは既感染者の割合も医療体制も文化も違う。いずれウイルスと共生する時はくるとしても、今は社会全体で感染を抑える時だと思う。客員編集委員

 

 

別表

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20220731-00307968

政府は7月29日に追加の対策を発表しました。

医療の負荷の増大が認められる場合、地域の実情に応じて各都道府県が「BA.5対策強化宣言」を行い、以下のような対策を実施することができるようになります。

基本的感染対策の再徹底(「三つの密」の回避、手洗い等の手指衛生、効果的な換気等)

早期にワクチンの3回目までの接種を受けること、高齢者や基礎疾患を有する者、重症化リスクが高い者は早期にワクチン4回目接種を受けること

高齢者や基礎疾患を有する者、同居する家族等について、混雑した場所や感染リスクが高い場所への外出の自粛等、感染リスクの高い行動を控えること

帰省等で高齢者や基礎疾患を有する者と接する場合の事前の検査

高齢者施設等の利用者のお盆等の節目での検査

飲食店での大声や長時間の回避、会話する際のマスク着用

症状が軽く重症化リスクが低いと考えられる者は、発熱外来の受診に代えて、都道府県が行う抗原定性検査キットの配布事業の活用も検討すること

無症状の者は、都道府県が行う無料検査事業を活用すること

救急外来及び救急車の利用は、真に必要な場合に限ること

 

 

現在の感染状況,死亡者の状況

(データは全て COVID-19 Data Explorer - Our World in Data )

 

新規感染者(7日間平均)第Ⅰ波〜第Ⅶ波 28-Jan-20〜29-Jul-22

 

現時点での新規感染者総数:日本は世界一

 

人口当たりの新規感染者数は,OECD加盟国第の中で2位

 

死亡者も急激に増加しはじめ,すでに第5波のピークを上回り,第6波をも上回る速度で上昇中.2週間で3.96倍.

8月第1週に新規感染者がピークアウトすると仮定すると,死亡者のピークはお盆過ぎか?(第6波では,新規感染者のピークと死亡者のピークは18日の差が見られた)