新型コロナ対応について最近の疑問.1. 専門家が感染状況を分析する為に必要とされるデータを集める仕組みが,今になっても全く確立されていない. 2.イベルメクチンへの夢を未だ諦められない? 3. 幻のアンジェス社製「抗新型コロナウイルスワクチン」 

世界中を悩ませているオミクロン株の感染拡大.

新たな亜種への置き換わりも進み,感染対策の更なる徹底が求められています.

生活の再生も必要とされる中,国・地方自治体の難しい舵取りが予想されますが,政府・自治体の新型コロナへの対応には,依然として疑問を持たざるをえないものが見受けられます.

 

私の最近の疑問を,以下にいくつか挙げてみます.

系統性は全くなく,また素人の感想に過ぎないものですが,全く的外れの指摘とは思っていません.政府・地方自治体は,未だに感染症対策の要の部分や,医薬品開発の基本的なステップをほとんど理解せずに施策を進めているのではないかという疑問を持たざるを得ません.

それでも,破滅的な結果にはならず,他国との比較においてはそれなりに成果のある対策をとることができたのは,感染症・疫学の専門家集団の優秀さと国民の真面目さ,そして日本がお金持ちで海外の薬品・ワクチンを思う存分買い付けることができた(出遅れてはいましたが)ことによるものであったとつくづく思います.

 

1. 専門家が感染状況を分析する為に必要とされるデータを集める仕組みが,今になっても全く確立されていない.

毎日新聞の青野由利さんによれば,

土記:共有されないデータ=青野由利 | 毎日新聞

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流行動向を分析する為の基本となる「発症日別エピカーブ」をつくる為のデータを政府サイドから手に入れることができないため,政府専門家会議に提出するデータは,大変な苦労をして専門家自らが集めたデータをもとにしたものとのこと.

また,どこで,どのような集団のクラスターが発生していているのか,そして,感染者のつながりはどうなっているのか,飲酒や換気の状況は?などがほとんど分かっていないとのこと.

この問題は,新型コロナウイルスが登場したごく初期の段階から指摘され続けてきたものです.未だに解決されていない!

政府・地方自治体が本気になればすぐに解決されるはずの問題であるにもかかわらず!

 

 

2. イベルメクチンへの夢を未だ諦められない?

厚生労働省は3月4日、新型コロナ治療薬の実用化に向けた支援事業に興和のイベルメクチンを採択」と報じられています.

厚労省、コロナ薬支援で「イベルメクチン」選定 - 化学工業日報

「あくまで有効性と安全性を確認するための業務を支援するもの」とのことですが,

追跡:既存薬、見えぬコロナ効果 イベルメクチン、アビガン… | 毎日新聞

政府・厚労省の「国産薬への強いこだわり」を考えると,言い分のとおりに受け取れません.

 

イベルメクチンを扱う興和は,この1月に「イベルメクチンが新型コロナウイルスの変異型オミクロン型の治療薬として効果があることを確認」と発表したとのことですが,

興和、オミクロン型に効果 イベルメクチン非臨床試験で: 日本経済新聞

これは単に試験管内のウイルスへの効果に過ぎず,発表に値する成果とは思えません.この発表を鵜呑みにしたロイターが世界に向けても発信したため,一騒動あったようです.

追跡:既存薬、見えぬコロナ効果 イベルメクチン、アビガン… | 毎日新聞

 

イベルメクチンの効果を発表した研究は,全て否定されてきました.

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/07/17/235632

 

そして,最近のThe New England Journal of Medicine誌の論文は,次のように結論づけています.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2115869?utm_source=Nature+Briefing&utm_campaign=928423af6e-briefing-dy-20220331&utm_medium=email&utm_term=0_c9dfd39373-928423af6e-46287342

「結論
イベルメクチンによる治療は,Covid-19 と早期に診断された外来患者において,Covid-19 の進行による医療入院の発生率や救急外来の観察期間が延長することを低下させることはなかった.」

 

この論文を受けたニューヨークタイムズの記事の中では,次ようなことが言われています.

「ある時点で、有望でないアプローチを研究し続けることは、資源の無駄遣いになってしまうだろう」www.nytimes.com

3. 幻のアンジェス社製「抗新型コロナウイルスワクチン」

この問題については,数多くの記事がネット上にあるので,つけ加えて書くことはほとんどありません.

キーワード: "アンジェス,ワクチン,吉村大阪府知事,森下阪大教授" の検索で多数みつかります.

是非検索して,様々な記事を読んでみて下さい.

吉村大阪府知事 アンジェス ワクチン 森下阪大教授 - Google 検索

 

国,大阪府が新型コロナワクチンの開発を期待して,多額の補助金を払うこと自体に問題があるわけではありません.(少なくとも当初の段階では)

開発に失敗することも残念ながらよくあることでしょうから,「失敗」という結果のみを責められると,ワクチン開発はおぼつかなくなります.

しかし,多額の補助金を支払う相手が大阪府の特別顧問を務める人物で,ワクチン開発に失敗しても大阪万博に深く関わらせてしまう阪大教授.大阪府との関わり方にうさんくささを感じてしまうのは,私だけではないでしょう.

 

そもそも,世界各国で使われて有効性・安全性も検討し尽くされているワクチンがこれだけ広まっている中で,多額の資金をつぎ込んで国産ワクチンを開発するという目標自体そろそろ見直されて良いと思います.

これから開発されるであろう国産ワクチンを私は接種したくありません.ファイザー・モデルナのものに比べ,有効性・安全性情報の質が,どう頑張っても劣らざるをえないからです.「国産安全神話」は通用しません.

ライセンス生産を広げ,その間にワクチン開発技術をより洗練したものにした方が,今後に役立つように思われるのですが.