死亡率2%で重症化率も高い新型コロナウイルス.同時に忘れてはいけないのが,いわゆる遅延症.小規模な研究は,かなり集まってきていますが,実態は不明な部分が多く残されていました.しかし,最近,中国のかなり大規模な研究報告が医学雑誌Lancetに発表されました.遷延する症状として挙げられているのは,疲労感,筋力低下,睡眠障害,味覚や嗅覚の変化,めまい,頭痛,息切れ/呼吸困難,不安,抑うつ. 入院歴のある人では「1年後でも49%が何らかの症状が続いている」というのは驚きです.

世界で2億1641万人が感染し,450万人の死亡者が報告されている新型コロナウイルス

多くの感染者が無症状〜軽い症状で済むため抑え込むことが困難な一方,死亡率2%で重症化率も高いという手強いウイルス.

 

同時に忘れてはいけないのが,いわゆる遅延症(症状の遷延).

小規模な報告は,日本のものも含め各国から集まってきていますが,実態は不明な部分が多く残されていました.

しかし,最近,中国からのかなり大規模な研究報告が医学雑誌Lancetに発表され,話題になっています.

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)01755-4/fulltext

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新型コロナウイルス感染で入院した1276人を対象とした研究で,対照群もしっかり設定した信頼できる報告です.

 

この報文は専門的なもので,わたしのような素人では分からないところも多いのですが,その概要をTIME誌が分かりやすくまとめています.

time.com

以下,DeepL翻訳で記録させてもらいます.

遷延する症状として挙げられているのは,疲労感,筋力低下,睡眠障害,味覚や嗅覚の変化,めまい,頭痛,息切れ/呼吸困難,不安,抑うつ

入院歴のある人では「1年後でも49%が何らかの症状が続いている」というのは驚きです.

 

 

COVID-19の影響が残っているという最大規模の研究で,問題の深刻さが示唆される

ALICE PARK

TIME

2021年8月26日

 

Lancet誌に発表したCOVID-19患者を対象とした最大規模の長期研究で,中国の研究者らは,この病気が人々の健康に影響を及ぼし続けているという心配な結果を報告しました.

 

北京の中日友好病院のBin Cao医師を中心とする研究者らは,COVID-19で入院した後,武漢のJin Yin-Tan病院を2020年1月から5月にかけて退院した1,276人を対象に調査を行いました.

患者は全員,症状が出てから6カ月後と12カ月後の健康診断に同意し,それぞれの時点で,研究参加者の健康状態を,COVID-19の感染を経験していない武漢地域の同程度の人々と比較しました.

 

COVID-19で入院した患者のうちの68%が,最初の症状が現れてから6カ月後に,COVID-19に関連する症状が少なくとも1つ続いていました.

この割合は,12ヵ月後には減少したものの,49%と比較的高い割合を維持していました.

また,COVID-19で入院したことのある患者は,対照群と比較して健康状態が悪く,運動能力の問題を含むQOL(生活の質)が低下していると自己申告していました.

 

12ヵ月後に患者が報告した症状で最も多かったのは疲労感や筋力低下で,その他にも睡眠障害,味覚や嗅覚の変化,めまい,頭痛,息切れなどがありました.

症状によっては,12ヵ月後の方が初期よりも悪化しているものもありました.呼吸困難を訴える患者の割合は,最初の症状が出てから6ヵ月後から1年後にかけて,26%から30%へとわずかに増加していました.

また,患者は精神的な面についてもアンケートに答えており,最初の症状が現れてから6カ月後には23%が不安や抑うつを感じていたのに対し,1年後には30%が不安や抑うつを感じていました.

 

今回の調査結果は,COVID-19が人々の健康に及ぼす影響の複雑さと,一部の専門家が「Long COVID」と呼んでいる長期的な影響の範囲を浮き彫りにしています.

重篤なCOVID-19に感染した患者の約半数が症状から回復する一方で,残りの半数,特に入院中に症状が悪化した患者は,1年以上にわたってウイルスの精神的・肉体的影響と戦い続ける可能性があることが示唆されています.

 

マウントサイナイヘルスシステムのリハビリテーションイノベーションディレクターで,同ネットワークのロングCOVIDリハビリテーションプログラムを監督しているデビッド・プトリーノ氏は,「これはglass-half-full storyではありません」と言います.「例えば,歩行性肺炎などで入院した後,12ヵ月後にまだ症状を訴えている患者がいるとは思いませんでした」.

 

著者らは,不安や抑うつを経験する患者の割合が増加していることが特に「心配」であり,これらの症状を助長している可能性のある孤立,失業,身体的健康の喪失に加えて,ウイルス自体が異常な免疫反応を引き起こし,人々の精神状態に寄与する脳内化学物質の繊細な働きに影響を与えているのではないかと推測しています.

 

「COVID-19の症状が持続している人は,回復に長い時間を要することが示唆されています」とプトリーノは言います.

マウントサイナイ大学のLong COVIDプログラムでは,腎臓,心臓,肺の問題から全身の疲労感や筋力低下まで,患者の多様な症状に合わせたアプローチを行っています.後者の場合,リハビリテーションには,慎重に監督されたエクササイズによって自律神経を徐々に刺激し,正常な神経の活性化を促すという退屈なプロセスが含まれることもあり,患者が元気になるまでには3〜4カ月もかかることもあります.

 

「初期の急性症状を乗り越えて退院しても,このウイルスは終わりません」とプトリーノは言います.「このウイルスは持続します」.

Lancet誌の研究では,入院中のCOVID-19患者のみを対象としていますが,規模は小さいものの他の研究では,感染しても病院に行くほどではない人の約20%にCOVID-19の症状が残る可能性があることを指摘しています.