何とかおさまってほしい!願いが通じたのか--- 拡大のスピードは鈍化しはじめ,9月初めにはピークアウトとの予想も.感染者がたとえ減少に転じたとしても,高レベルで推移すれば,病院の逼迫度は増し,「在宅療養」の厳しい状況も易々とは解消されない.死亡者の数もしばらく増え続けるのでしょうが.とはいえ,この先,この第5波がおさまり,ワクチン接種が更に進めば,「新型コロナとの共存」の新たな局面に.近未来は「極端に変わることがない」ものの,予防接種率が高い社会ではより早く抜け出せるとのこと.

今までにない,感染拡大の危機的な状況が連日伝えられています.

 

「先月12日から始まった4回目の緊急事態宣言。しかし、人出は思うように減らず、感染は拡大、首都圏を中心に医療体制は危機的な状態になっている」

WEB特集 なぜ言葉は響かないのか | NHKニュース

ルポ記事,ツイッターなどで伝えられる感染病棟の逼迫.

 

10万人を超える自宅療養者.7月以降の在宅療養中の死者,少なくとも45人.

https://www.youtube.com/watch?v=qfrza5_LhE0

自宅療養中の死者45人 半数40~50代、無症状も:東京新聞 TOKYO Web

 

何とかおさまってほしい!

 

という多くの方の願いが通じたのか,報道される以上に多くの方が行動を抑制したのか,多数の飲食店の協力があったのか---

拡大のスピードは鈍化しはじめ,9月初めにはピークアウトとの予想も.

https://twitter.com/TC_Rheum/status/1430770759538905092

 

 

素人が軽々しく判断するのは危険ですが,全国,そして東京の感染状況には,確かに好転の兆しが見えるように思います(*).

感染者がたとえ減少に転じたとしても,高レベルで推移していけば,病院の逼迫度は増し,「在宅療養」の厳しい状況(**)も易々とは解消されない.死亡者の数もしばらく増え続け,「100年に一度の危機」(***)は簡単には収まらないのでしょうが.

 

とはいえ,この先,この第5波がおさまり,ワクチン接種が更に進めば,「新型コロナとの共存」の新たな局面に.

イスラエル,イギリスの「実験」が失敗に帰したように,ワクチンがあっても,いきなりコロナ以前に戻ることは難しそうです.西村教授の予想の最終章を転載しておきます(****).

新しい局面でも,病院を逼迫しかねない感染拡大は再び起こりうるようです.しばらくは.

ワクチンの普及がどれほど進むかによって,その程度の大小はあるようですが,覚悟はしておく必要がありそうですね.

 

なお,

感染の初期段階での押谷・西村先生の分析から得られた「三密回避」という対策のポイント指摘に,今までとても助けられてきました.

しかし,これからもしばらく続く新型コロナウイルスとの共存社会には,更なる情報があれば助かります.一年以上続いた感染の拡大・収束の繰り返しの中から,何が日本での感染拡大の最大要因なのか,そして拡大を収束させるポイントは何なのかについての新しい発見はなかったのでしょうか?

専門家の皆さん,分析よろしく.

 

https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

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例えば,

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gendai.ismedia.jp

西浦 博

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極端に変わることがない近未来

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/86584?page=4

以上の議論から想像いただけるかもしれないが,本感染症のリスクに対峙し続けてきた私から言えることは,接種完了時のイスラエルなどで一時的に見られていたような「ぱっと夜が明ける」ような未来社会が,日本で希望者の予防接種が完了しただけで来ることはなさそうである,ということである.

マスクを外した暮らしができて,普段会わない方と飲食が楽しめて,元の世界に近い接触が返ってくる,というイメージを抱く方も多いと思う.しかし,そのようにリスク認識が一気に社会全体で変わり得る,というような景色をすぐ先の未来に想像することは困難である.特に,現時点で見込まれる接種希望者がほぼ接種済みになるだろう今年11月後半の日本でそのようなリスク状態になることは,残念ながらほぼ期待できない.

それどころか,その後もしばらくは大規模流行が起こり得る状態が続き,医療が逼迫し得る状況(積極的治療が出来ない方が生じたり,自宅療養者が溢れかえったりするような,これまでの逼迫状況)が起こり得ると考えている.予防接種だけでは実効再生産数の値が1を上回るからだ.

もちろん,予防接種が進むにつれ,高齢者が最初に防がれ,その次に50歳代,その次に40歳代と次第に接種で防がれていく.だから,本格的な流行拡大が起こるまでの間は,重症患者数は過去と比較して明確に増加し難くなる.

しかし,接種を希望しない者の人口サイズは未だに大規模な流行サイズを引き起こすのに十分であり,そうすると高齢者を含むハイリスク者の間で未接種のままであった者を巻き込みつつ社会全体で感染が拡大し得る状態となる.それは,現状の接種希望者の見立て程度であれば,そのような中で大規模流行が起こると季節性インフルエンザ相当では到底及ばない流行規模・被害規模になり得る状態が継続する,ということである.

もちろん,そういった流行は接種率が高ければ高いほど被害規模を極端に小さくできる.また,すぐにマスクを外して接触を許すのではなく,まだしばらくの間はマスク着用を続けて不要不急の接触を避ける行動制限が緩徐に続くことで流行リスクが下がることに繋がるだろう.

その中で医療従事者や高齢者のようなハイリスク者のブースター接種が十分に行われるのはもちろんのこと,人口内で免疫を持つ者がほとんどの状況に達することができれば, 医療が崩壊するような流行も次第に回避可能となっていく.

ただし,おそらく年単位の時間をかけてそれが起こっていくのだ.

そこに至るまでの道のりにおいても,できるだけ医療逼迫の程度がひどすぎるような状況を回避しながら進み,直接的・間接的に生じる被害者が少なく済む状況を保っていく.繰り返すが,その間,日常生活でマスクは着用しつつ,ソーシャルディスタンスは確保しながらだが,少しずつ,少しずつ,私たちの文化的な社会活動を元の活力あるものに戻していく.

 

未来を切り開くために

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/86584?page=5

私は,そういった流行対策を続けていけば,数年から(長くて)5年くらいの時間をかけて次第に未来が切り開かれていくものと見込んでいる.どこかで頓挫して流行が大きくなるリスクもあるかもしれない.どこかで新しい展開が生じるかもしれない.それでも,大枠は変わらないものと考えている.

その中で,ずっと「パンデミック」の状態が持続するわけではない.この感染症の流行で問題であったのは(1)感染者が出すぎると医療が逼迫してしまうこと(救える命が救えないこと),(2)他の疾病と比較すると死亡リスクが十分に高いこと,であった.

予防接種と自然感染が進んで,一定の対策下であれば(1)の医療逼迫が起こらない状態,になり,また,ハイリスク者が十分に免疫を保持し続けるか周囲に防御されることによって(2)の死亡リスクが他の疾病と変わらない,ということになれば,パンデミックは移行期(transition phase)へと進むことになる.そうなれば世界保健機関パンデミックが終了したことをアナウンスするはずである.

ただし,このウイルスがヒト集団から消え去ることはしばらくなさそうである.そのため,少なくとも医療従事者や高齢者を中心とした接種は続いていくのだろう.また,一部の進化生物学者は既に本感染症は数年から5年程度のタイムスパンで,子どもの病気へと変わっていくものと予測している.

このように流行対策のハードルと流行の社会的重大度を少しずつ下げていくことを「テーパリング」と呼ぶことができるだろう.日本語では「先細り」と訳されるが,医療業界では,一部の病気の患者さんの投薬量を時間をかけて少なくしていく際にこの用語が用いられている.そのテーパリングを人口レベルでどのように形作るのか,という命題は,コロナ後の明るい未来をどのように作っていくのか,というものでもある.

ご覧になっていただければわかる通り,その明るい未来は私たち社会構成員が参加しつつ切り開くものである.というのも,予防接種率が高い社会ではテーパリングをより近い未来にすることができるのである.心理学や経済学の専門的知見を動員して接種が特別に強く勧奨される仕組みを必死に考えていくべきだろう.政治が責任を持ってパンデミックのリスクと向かい合えない状態が続くのなら,皆さんと専門家で一緒にこのリスクに対峙して未来を明るく照らしていきたいと思うのだ.