五輪のリスク「誰もがわかる」 分科会メンバーが英紙に
朝日新聞デジタル 2021年6月9日 14時49分
https://digital.asahi.com/articles/ASP694VCMP69ULBJ00J.html
東京五輪・パラリンピックの開催について,政府の新型コロナウイルス対策の分科会メンバーの押谷仁・東北大教授が英紙タイムズ(電子版)で強い懸念を示した.8日付で「政府や大会組織委員会,IOC(国際オリンピック委員会)は,安全な五輪を開催すると言い続けているが,誰もがリスクがあることをわかっている」とした.
記事で押谷教授は大会組織委員会やIOCが「専門家がリスクを評価するための重要なデータを公表していない」と指摘.適切なリスク評価をしづらい状況にあるとした.五輪の開催をきっかけに,感染者数を抑えられていた参加国にウイルスが広がる危険性もあると強調.「個人的に,五輪の開催による影響をとても懸念している」と述べた.
五輪開催をめぐっては,押谷教授と同じ分科会の尾身茂会長が近く,開催リスクに関する考えを示す方針を示している.
「五輪で沈黙は責任逃れ」 英医学誌,WHOなど批判
阿部彰芳
https://digital.asahi.com/articles/ASP6D34DYP6CULBJ014.html
医学界で権威のある英医学雑誌ランセットが11日,東京五輪・パラリンピック開催の是非について,世界保健機関(WHO)などが沈黙していることは「責任逃れ」だとする論説を発表した.
(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)01293-9/fulltext)
新型コロナウイルス感染症の流行が続く中,開催のリスクや,リスクを管理する方法は,広く精査して承認を得る必要があるとし,今すぐ世界的な議論を始めるよう呼びかけた.
---以下略
We need a global conversation on the 2020 Olympic Games
2020年のオリンピックについて,グローバルな会話が必要です
編集部|第397巻第10291号,第2225号,2021年6月12日発行
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)01293-9/fulltext
(原文英語,以下一部DeepL無料版により和訳)
2020年東京オリンピックの開幕まで6週間となり,COVID-19パンデミックの中での大会の安全性に対する懸念が強まっています.
公衆衛生の専門家は,論文や議会の委員会で,リスクがどの程度軽減されているかについて強い懸念を表明しています.長期間にわたる署名活動,1万人にのぼるボランティアの辞退,そしていくつかの世論調査では,最多の回答者が大会を延期または中止すべきだと考えていることなどは,オリンピック・パラリンピックは日本での人気が著しく低下していることを示しています.
国際オリンピック委員会(IOC)は大会開催を決定する最終権限を持っていますが,日本政府と同様に,大会開催に対して経済的なそして評判を得るという点での大きなインセンティブを持っています.両者とも,大会は安全に実施されると主張しています.
日本オリンピック委員会の山口香織専務理事は6月4日の記事で,今回の決定が既成事実化したことを示唆しています.「今さら止めることもできない状況に追い込まれている.やったらやったで,やらなかったらやらなかったで大変なことになる」.
山口理事は正しいのでしょうか?私たちは危険なゲームに突入しているのでしょうか?そして,関係者全員が声を上げるべきではないでしょうか?
----中略
参加者が帰国した際に,新たなウイルス亜種を含むSARS-CoV-2の回避可能な感染の危険にさらし,新たな流行を生み出す危険性があります.また,この大会は,日本におけるCOVID-19の状況にも悪影響を及ぼす可能性があります.
----中略
約6000人の医師を代表する東京都医師会は,菅義偉首相に大会の中止を求める文書を提出し,東京の病院は「手一杯で,余力がほとんどない」と述べています.
----中略
国際社会は一体となっているのでしょうか?すべての国がCOVID-19のパンデミックと大会の安全性に関心を持っているにもかかわらず,IOCと日本政府の間でしか議論が行われていません.
----中略
世界の保健機関は,大会を開催すべきかどうかについてほとんど沈黙しています.WHOは,大会を実施すべきかどうかについては言及を避けています.ECDCはLancet誌に対し,オリンピックのリスク評価を特に行っておらず,議論すらしていないと述べています.2016年,ジカ熱の中,米国CDC長官のトム・フリーデンは,リオ大会を中止または延期する公衆衛生上の理由はないと宣言しました.CDCは,ランセット誌が東京2020大会に対する姿勢を明らかにするために何度か要請しても応じていません.
この沈黙は,責任逃れです.大会のリスクとその管理方法については,広く精査し,承認を得る必要があります.この大会については,世界規模での話し合いが必要であり,それは今すぐにでも行われるべきです.