東京での新型コロナウイルス感染拡大.
第2波が現実のものにありつつあるのではないか,という懸念が広がっています.
政府・東京都の発信は,その懸念に答えていないのではないでしょうか.
廃止された専門家会議は,記者会見を開き,記者の質問がなくなるまで丁寧に答えていたのに----
1. そもそも,「感染の現状分析」の役割をどこで誰が責任を持って行っているのかもはっきりしません.
「有識者会議分科会」は政府の諮問に答えるのみの会になってしまったようにさえみえます.
厚労省「アドバイザリーボード」なるものが復活し,分析しているとのことですが,それならば,厚労大臣とアドバイザリーボードメンバーによる分析結果の報告があってしかるべきでは?
テレビに映るのは西村経済産業大臣と「有識者会議分科会」長の尾身茂氏のみ.
北海道新聞が最近の専門家組織の発信スタイルに懸念を示す記事を掲載しています.
コロナ会見,西村・尾身両氏のみ 専門家の発信激減 「政策評価難しい」懸念
https://www.hokkaido-np.co.jp/article_photo/list?article_id=440633&p=6264087&rct=n_politics
北海道新聞 07/15 05:00
新型コロナウイルス対策を話し合う政府の専門家組織の情報発信スタイルに変化が出てきた.
最近は会議後の記者会見が西村康稔経済再生担当相と尾身茂・地域医療機能推進機構理事長に限られ,廃止された政府専門家会議のように,複数の専門家が見解を発信する機会が激減している.
責任の所在などを明確にする意味はある一方,多様な見方や情報が国民に提供されないとの懸念もあり,「政策を評価できる迅速で幅広い情報発信も図るべきだ」との指摘が出ている.
厚生労働省では14日,感染症の専門家らによる同省の助言組織で,政府専門家会議の前身「アドバイザリーボード」が約2時間,開かれ,東京の感染拡大状況などが分析された.
会議後,同省幹部と脇田隆字・国立感染症研究所長は報道機関に会議内容を説明したが,記者会見は開かなかった.同省幹部は「国民に広く訴えかける役割を担っているわけではないから」と話す.
辰濃哲郎氏は,専門家会議の廃止について次のような懸念を述べていました.(東洋経済 2020/06/27https://toyokeizai.net/articles/-/359383 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/06/29/000500 ).
懸念は的中したように思います.
“これまで専門家会議の会見での専門家の言葉は,ウイルス感染症の解明過程ではあるものの,その時点での科学的根拠に基づいた提言だった.
それを聞いた私たちは,自分たちなりに心の準備をして,それぞれの立場で対応策を考えてきた.その情報が加工されたものではないことを知っていたからだ.
だが,その専門家の発信は今後,少なくなっていくに違いない.
その代わりに,政府というフィルターを通した情報がもたらされ,何が真実で,何がわかっていなくて,どんな状況なのかさえ知らされないまま,政府の方針に従わされることになるのかもしれない.
もちろん,科学の専門家だけですべてを決めることは許されることではない.
だが,彼らの言うインテグリティの意味する客観性,政治的中立性,誠実性は,新型コロナウイルス感染症の時代を生きていくうえで1つの救いではあった”
2. 感染第二波ではないのか?
神戸大学の岩田健太郎教授は,自身のツイッターで「第二波」と言い切っています.
厚労省「アドバイザリーボード」(名称もはっきりしていない?)がどのような分析をしているのかははっきりしません.
西村大臣と尾身氏は,誰がまたはどの組織が行った分析結果をもとに発信しているのでしょうか?
厚労省専門家会合「新規感染者数は全国的に増加傾向」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200715/k10012516191000.html
NHK 7月15日 5時05分
新型コロナウイルス対策について厚生労働省に助言する専門家の会合が14日開かれ,最新の感染状況について「新規感染者の数は全国的に増加傾向にある」などとする評価をまとめました.
この会合は,厚生労働省が新型コロナウイルス対策についての助言機関として設置したもので,ことし5月まで開かれていた政府の専門家会議のメンバーを中心に感染症の専門家など15人で構成されています.
14日開かれた会合では,最新の感染状況についての分析と評価がまとめられました.それによりますと,感染が拡大している東京都では若い世代以外でも感染者数が増えていて,今月に入ってからはほかの地域でも東京への移動との関連が疑われる事例がみられるなどとして,全国的に新規感染者数は増加傾向にあるとしました.
そのうえで,詳しい感染経路が分からない人の割合も増加傾向にあることなどから,特定の場所や地域に限らない感染が進みつつあることは否定できないと指摘しました.
医療提供体制については全国の重症者の数が今月8日時点で36人にとどまっていて,集中治療を行うための病床は確保されているとしました.
ただ,感染者が増えていることから軽症の人のための療養施設やスタッフの確保,それに体制がひっ迫する保健所への支援などが急務だとしました.
また検査体制については,1日に検査ができる件数が増えていて,陽性率も比較的低いことなどから今の時点では必要な人に検査が実施できているとしました.
そして,感染拡大を防ぐために引き続き一人一人の行動が重要だとして,熱がある場合には仕事や学校を休むこと,徹底した3つの密の回避や手洗いやマスクの着用,それに換気を続けることなどを呼びかけました.
会合のあと脇田隆字座長は今後の感染拡大の見通しについて「ことし3月から4月にかけてよりも感染の拡大は緩やかで当時と同じような状況ではないとする意見がある一方で,対策をさらに強化すべきという意見も出た.感染の状況を引き続き注意深く見ていくことが必要という見解でまとまった」と述べました.
Go Toキャンペーンについては
会合のあとの会見で厚生労働省の助言機関の脇田隆字座長は今月22日から政府の「Go Toキャンペーン」が始まる予定となっていることについて見解を問われ「現状では,東京から地方への移動を直ちに止める必要があるとは考えていない.ただ,今後,感染が東京からどんどん地方へ拡大していくという状況になれば,移動を止める必要が出てくると思う.もう少し感染拡大の様子を見ていく必要がある」と述べました.
東京都,新型コロナ新規感染286人で過去最多を更新 「GoToトラベル」は東京除外で実施へ
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/16280.php
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
2020年7月16日(木)21時35分
東京都は16日,都内で新たに286人の新型コロナウイルス陽性者が確認されたと発表した.
陽性者が100人を超えるのはこれで8日連続.この1週間合計では1368人と感染拡大に歯止めがかからない状態だ.
これで都内で確認された陽性者の合計は8640人,東京アラートを解除し休業要請などの規制を緩和した6月11日以降の陽性者は2977人となった.
この日確認された陽性者のうち,20代と30代が合わせて196人で全体の68%と依然大半を占めているが,40代以上も76人でおよそ30%となり,感染が世代を超えて広がっていることを示している.また感染経路が不明な人は137人で47%を占めている.
また,東京都は陽性者が急増していることについて,PCR検査の実施件数が増えているためとしているが,陽性率も緊急事態宣言が解除された5月25日には1%だったものが,昨日では6%にまで高まっており,感染第2波が懸念される.
各地で非常事態宣言解除後,最多の感染者
一方16日は,埼玉県49人,神奈川県48人,千葉県32人と首都圏でも感染者が急増.1都3県合計で415人,また大阪府66人,愛知県21人と首都圏以外の各地でも感染者が増えて,空港検疫の4人を含め全国で610名もの感染者が確認された.
「GoToトラベル」は東京を除外
このように非常事態宣言が出された時期よりも感染者が増え,感染が明らかに拡大している状況を受けて,国が22日から開始予定としている「GoToトラベル」の実施について各自治体から不安の声があがっていた.
これに関して赤羽国土交通相は,16日夕方記者団に「東京目的の旅行と,東京の居住者の旅行を対象から外し,22日から実施する旨を報告し,専門家の意見をいただきたい」と述べ,突出して感染者が多い東京を除いた形での実施を明らかにした.
医療体制の現状・医療関係者の証言
東京 新宿「検査スポット」陽性率3割超える(7/16)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/
新型コロナウイルスへの感染を調べる「検査スポット」が各地に設けられていますが,感染の確認が相次ぐ東京 新宿区の「検査スポット」では7月,検査件数が増加し「陽性率」も3割を超えています.感染がさらに拡大すれば,検査体制がひっ迫するおそれがあるとして懸念の声も上がっています.
新型コロナウイルスへの感染を調べるPCR検査について,新宿区では保健所が行う検査のほか,ことし4月「国際医療研究センター」の敷地内に,医師会と協力して「検査スポット」を設けました.
現在は医師など25人のスタッフが,かかりつけ医から紹介された人などを対象に検査を行っていて,想定している検査能力は1日当たり最大で200件だということです.
新宿区によりますと「検査スポット」で,実際に行った検査の件数は,6月までは1日当たり平均して50件前後で推移していましたが,7月に入ってからは120件余りと倍以上に上っています.150件を超える日もあるということです.
さらに,ここで検査を受けた人のうち,感染が確認された人の割合「陽性率」も上昇が続いています.
4月から5月にかけては5%前後だったのが,6月は18%,7月は8日までの時点で33%と3割を超え,感染拡大の勢いが増していることがうかがえます.
感染がさらに拡大すれば,検査体制がひっ迫するおそれがあるとして,医療関係者からは懸念の声も上がっています.
接待伴う店含む「飲食業」の陽性率高い
新宿区は先月「検査スポット」で行われたPCR検査について,5つの職業ごとの「陽性率」をまとめています.
それによりますと,6月は1266件のPCR検査が行われ,このうち感染が確認された陽性の人は226人で,全体の「陽性率」は18%でした.
職業別では,
▽ホストクラブやキャバクラなど接待を伴う店を含む「飲食業」がもっとも高く31%でした.
次いで,
▽「無職・フリーターなど」が24%,
▽「学生」「会社員など」がともに4%,
▽「不明」も16%に上りました.
新宿区では,接待を伴う飲食店などで集団感染が発生した可能性がある場合には保健所が店舗などに出向く形式でも検査を行っているということです.
FINANCIAL TIMES 2020/7/16
Coronavirus chart: has your country’s epidemic peaked? | Free to read | Financial Times
参考
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-chart/