コロナ禍の中,行動制限を緩和する仕組みとして提言されているワクチン・検査パッケージ.例えばワクチン証明もしくは検査陰性証明で飲食店やライブハウス等への入場を許可するなどが考えられているようです.ワクチン証明/検査陰性証明の提示方法,使用する場等も含めて全て未定の状態ですが,BuzzFeedの記事は,「分かりにくい」検査陰性証明の部分の解説に充てられています.

ワクチン接種が進むに従って、これまで我慢してきたことができるようにしようと提言された「ワクチン・検査パッケージ」.

ワクチン・検査パッケージの動向は|薬事日報ウェブサイト

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/bunkakai/dai7/vaccine_nichijou.pdf

https://corona.go.jp/emergency/pdf/vaccine_thinking20210909.pdf

 

岩永直子BuzzFeed Medical Editor, Japan)さんは,

「国民的な議論を、と言われてもピンとこない人も多いかもしれません。まずは頭の体操をしましょう」

と,3連発でインタビュー記事を公開しています.

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「ワクチン・検査パッケージ」って何なの? まずはそれぞれが考えることから

「ワクチン・検査パッケージ」 無症状の人への検査に意味はあるのか?

検査は陰性証明にはならないはずでは? 「ワクチン・検査パッケージ」で使う検査を考える

 

3本の記事とも専門家が丁寧に答えていますので,一読をお勧めします.

 

今日のブログはこれでおしまいにしてもいいのですが---

以下に私の理解した範囲でのいわば余談として,このパッケージの意味をまとめてみます.

(くりかえしますが,ぜひBuzzFeedの記事をあたってください)

 

コロナ禍の中,行動制限を緩和する仕組みとして提言されているワクチン・検査パッケージ.

「ワクチンをうっていたら行動制限を緩和しましょう」「検査して陰性ならば行動制限を緩和しましょう」が組み合わさった提言です .

ただし,「ワクチンをうっていたら」は理解できるとして,もう一つの「検査して陰性ならば」の部分はわかりにくいですね.

ワクチン接種は義務化されているわけではなく,うてない人もいるし,うたないことを選択することもできる.

このようなうてない・うたない人に対しては「検査して陰性」を制限緩和の条件とするこの案ですが,確定していることはまだ何もなく,専門家や政府だけではなく,「国民的議論」(尾身分科会会長)で決めていくことが求められています.

 

ワクチンという新型コロナウイルスへの対抗手段を得て,ワクチン先行国のイスラエル,イギリス,アメリカなどでは制限の解除を進めてきました.

しかし,いずれの国も感染の再拡大を許してしまいました.ワクチンの感染力防御の効果が低下しているということで,3回目のブースター接種が実施もしくは計画され,日本でも実施することは決定しています(時期,対象者等は未定).

 

そして,このブースター接種とは別に,感染拡大を抑えながら行動制限緩和する仕組みとして提言されたワクチン・検査パッケージ.

例えばワクチン証明もしくは検査陰性証明で飲食店やライブハウス等への入場を許可するなどが考えられているようです.

ワクチン証明/検査員性証明の提示方法,使用する場等も含めて全て未定の状態ですが,上記のBuzzFeedの記事の大半は,「分かりにくい」検査陰性証明の部分の解説に充てられています.

検査によって新型コロナウイルスの感染をコントロールすることが難しいことは,かなり多くの方が理解してきたかと思います(*).

一方,無症状の人の「陰性証明」としての検査も問題点を抱えていて(**),検査しても「すりぬけ」が一定数ある.このすり抜けがかなりの確率で起こるようならば,行動制限緩和が再び感染拡大につながってしまいます.

 しかし,ワクチンが接種されていれば,

 ▽すり抜けがあってウイルスが持ち込まれても,持ち込まれた集団がワクチンで守られていて.集団内での感染拡大が抑えられる.

 ▽地域の感染がワクチンで抑えられていれば,すり抜けの確率は低くなり,感染拡大が抑えられる.

すなわち陰性証明としての検査は,ワクチン接種が下支えしてくれているときにはすり抜けによる感染拡大が低いレベルに保たれ,行動制限緩和に用いることができる.

ということになります.

うまく活用して,行動制限が緩和できればいいですね.

 

 

*  詳しい説明は例えば,BuzzFeedの記事

無症状の市民に幅広くPCR検査をやるのがマズいわけ(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース

 

**

無症状の人の「陰性証明」としての検査は,次の三つの問題点を抱えています.

(1)感染力のない期間も陽性と出る可能性がある

(2)事前確率(陽性が予想される確率)が低いと誤りが出る可能性が高くなる

(3)陰性の検査結果は検査時点での陰性に過ぎない.