はくちょう座1 「天の川にそって大きな翼を広げた白鳥の姿を表した星座」ギリシャ神話で,この白鳥に擬せされているのは,オリュンポスの支配者・主神ゼウス.偽アポロドーロス「ビブリオテーケー」によれば,スパルタ王テュンダレオースの妻・レーダーと交わり,絶世の美女ヘレナー(トロイのヘレン)とふたご座となったディオスクーロイの一人ポリュデウケースが生まれます.しかし,この記述には続きがあって----「一説には『義憤』の女神ネメシスと交わった」? 

夏の代表的な星座の一つにして,私が知っている数少ない星座の一つ.

はくちょう座

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5月の午前2時,6月の午前0時,7月の午後10時,8月の午後8時,頃見える星座 https://www.study-style.com/seiza/summer.html

 

「天の川にそって大きな翼を広げた白鳥の姿を表した星座です.

夏の夜空でひときわ目立つ星座で,一等星のデネブをはじめ,アルビレオなどの明るい星が大きな十字の形を作っています.https://www.study-style.com/seiza/Cyg.html

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星座図鑑・はくちょう座

ラテン語学名 Cygnus.カタカナ読みではキグナス

英語名は,もちろん the Swan.

ギリシャ語名として,二つの名前があげられています.:Ornis (the Bird)  or  Kygnos (the Swan).Star Myths | Theoi Greek Mythology

初めは鳥 Ornis (the Bird) だったのかもしれませんね.

そして,

このthe Theoi projectのサイトに,シュメール語やアッカド語の名前が記載されていないところから,はくちょう座はおそらくギリシャ起源.

 

ギリシャ神話で,この白鳥に擬せされているのは,オリュンポスの支配者・主神ゼウス.

 

英語版ウィキペディアによれば,ゼウス以外にも幾人かの“白鳥”候補がいるそうなのですが----  Cygnus (constellation) - Wikipedia

the Theoi project で取り上げられている神話は,ゼウスが白鳥に姿を変える「SWAN OF LEDA」の物語だけ.

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LEDA - Spartan Queen of Greek Mythology

絶世の美女ヘレナーとふたご座(*)となった“ディオスクーロイ(神の息子)”の一人ポリュデウケースが,スパルタ王テュンダレオースの妻・レーダーの子供として生まれます.

⇒* ふたご座1 - yachikusakusaki's blog

 

ゼウスに加え,ヘレナー(トロイア戦争の引き金となった“トロイのヘレン”)という誰もが知るヒロインが登場.

星座に関わる最も有名なギリシャ神話変身譚と言ってもよい?

 

偽アポロドーロス「ビブリオテーケー」では次のように記されています.

 

アポロドーロス/高津春繁訳 ギリシャ神話 岩波文庫

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https://www.amazon.co.jp/

 

 -----テュンダレオースはテェイティオスの娘レーダーを娶った.

しかし,後にヘーラクレースがヒッポコオーンとその息子たちを殺したときに帰国し,テュンダレオースが王国を得た.

 

 イーカリオスと水のニンフなるペリボイアより-----およびオデュセウスの妻となったペーネロペーが生まれた.

テュンダレオースとレーダーからはエケモスの妻となったティーマンドラー,アガメムノーンの妻となったクリュタイムネーストラー,さらにアルテミスが不死としたピュロノエーが生まれた.

 

ゼウスが白鳥の姿となってレーダーと,また同じ夜にテュンダレオースが,交わって,ゼウスからはポリュデウケースとヘレネーが,テュンダレオースからはカストール〈とクリュタイムネーストラー〉が生まれた.

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 Leda (mythology) - Wikipedia

 

ところがこの文章には続きがあって,

「“白鳥になったゼウス”が求めたのは,“鵞鳥になったネメシス”;ニクスの娘にして,神の憤りと罰を擬人化した『義憤』の女神」?!

 

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Nemesis - Wikipedia

 

アポロドーロス/高津春繁訳 ギリシャ神話 岩波文庫 続き

しかし一説には,ヘレネーはネメシスとゼウスの娘である.

それというのは,ネメシスがゼウスとの交わりを遁れて鵞鳥に身を変じたところ,ゼウスもまた白鳥の姿となって彼女と交わったからである.

そして,この交わりによって卵を生んだが,ある羊飼いがこれを聖森の中で見つけて,レーダーの所へ持って来て与えた.それで彼女はこれを箱に入れて保存しておいたところ,時が来て生まれ出たヘレネーを自分の娘として育てたということである.

 

すぐれて美しく育った彼女をテーセウスが掠ってアピドイナに連れて行った.しかしポリュデウケースとカストールとが,テーセウスが冥府にいる間に軍を進めてその市を攻略し,ヘレネーを取り,テーセウスの母アイトラーを捕虜にして引きたてた.

 

 

この物語を記したもう一つの原典,偽ヒュギーヌス「天文詩」も,白鳥になったゼウスが交わったのはネメシスであったとしています.

「天文詩」の当該部分は,明日のブログで引用させていただきます.

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