キャベツは,日本で一番食べられている野菜.
統計局ホームページ/家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(平成27年(2015年)〜29年(2017年)平均)
生で良し.煮て良しというところからでしょうか.
生食ではレタスの延びが最近大きいと聞いていましたが,戦後の食の洋風化を担ったのはキャベツ.今もその流れは続いているという事でしょう.
キャベツの栄養
キャベツは,栄養面で,特に注目されるものはないと言っても良いのかも知れませんが,ビタミンC含有量はかなりのもの.そしてビタミンKは,キャベツだけで必要量をまかなえる?
カロテンを除いてほぼ全てのビタミン・ミネラルでハクサイを上回る,白色野菜の代表選手.
そして,ハクサイを取りあげたときに強調した「多量に食べることができる」強み.
yachikusakusaki.hatenablog.com
キャベツかなり多量に食べることが可能.
沢山食べることで,ビタミンC はもとより,カリウム・カルシウム・ビタミンK・葉酸など,気になるビタミン・ミネラルをかなりの割合を補うことができます.ビタミンK以外は,単独で基準量を全て満たすのは難しいとしても.
なお,現代の野菜生食の中心ともいえるレタスは,栄養面ではキャベツに水をあけられています.しかも,多量に食べることは難しい.レタス中心の生サラダで必要なビタミン・ミネラルを補うのはかなり困難と言わざるを得ませんね.
気になるキャベツの成分「カラシ油配糖体」
▽モンシロチョウとカラシ油配糖体
キャベツ栽培は害虫を防ぐのに苦労しますが,キャベツを食べる虫の代表がモンシロチョウ.英語では,small cabbage whiteとか単にcabbage whiteと呼ばれているそうです.
このモンシロチョウ.産卵のための植物を探す行動観察から,様々な要因で植物を選ぶことが分かっているようですが,最終的に産卵するのは,グルコシノレート(カラシ油配糖体)と呼ばれる物質がある植物.足の先端(跗節 ふせつ)にこの物質を感知する受容体があるそうです.Pieris rapae - Wikipedia
モンシロチョウが,キャベツなどアブラナ科の植物に卵を生むのは,このカラシ油配糖体がアブラナ科の植物に含まれているためと考えられます.
ただし,モンシロチョウは必ずしもカラシ油配糖体を沢山含む植物を選んでいるわけではなく,また,カラシ油配糖体を沢山食べた幼虫は,外敵(鳥,アオムシコマユバチ)に襲われにくい(Pieris rapae - Wikipedia アブラナ科植物とその食害昆虫をめぐる化学生態)とされるなど,生態系の食物連鎖を考える上で,とても面白い材料を提供しています.
▽甲状腺ホルモンの合成を阻害するカラシ油配糖体
このモンシロチョウが卵を生む印となっているグルコシノレート.沢山の種類があります.その一つに辛子の成分の元になっているシニグリン.酵素によって分解して辛味成分アリルイソチオシアネートになって,私たちの舌を刺激.
一方,グルコシノレートの分解物は,悪さもする.
甲状腺へヨウ素を運ぶ仕組み(共輸送体)にはたらいて,甲状腺ホルモンの合成を阻害し,甲状腺腫を引き起こす事が知られています.
やや怖い話しになっていますが----
医薬品情報21 » Blog Archive » 「キャベツの成分と甲状腺」
この情報サイトでは以下のような記述で締めくくっています.
「ヨウ素が豊富に供給されている我が国では、cabbage等の摂取によって、必ずしも甲状腺肥大や甲状腺腫を惹起するとは限らないと考えられる。また『多量の芥子油配糖体(glucosinolate)を長期間摂取すると甲状腺腫になる』とされているが、極端な偏食をしない限り、影響は出ないのではないかと考えられる」
カラシ油配糖体の内,分解物の甲状腺への作用が最も強い成分は,栽培品種では問題にならないぐらい低く抑えられているとの記述もありました.
甲状腺の機能がとても下がってしまったときや,ヨウ素の摂取量が極端に減ってしまったときには気をつけるべきなのでしょうが,通常は大丈夫と考えておいて良いようです.
とはいえ,今回は一つの情報源にかなり依存して書いてしまいましたので,客観的な情報発信とは言いづらい.
英語の情報源,例えば,Thiocyanate - an overview | ScienceDirect Topics Dietary Factors and the Risk of Thyroid Cancer: A Review なども,時間があったら読んでみましょう.
▽解毒化酵素を活性化させるカラシ油配糖体
上記のサイトには,ブロッコリーのカラシ油配糖体が,発がん物質の解毒化酵素を活性化させる可能性にも触れていました.
抗がん作用を持つ可能性と記している文献もありましたが(例えばhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/49/1/49_7/_pdf),このストーリーはあくまでも可能性の段階と考えておいた方がよさそうですね.