「ライオンは視覚ではなく、聴覚や嗅覚を使い狩りをし,最終局面で視覚を使う」:ネコも同じ!塀越しに全く見えない獲物を察知し,一瞬にして捕まえるネコのハンティング.&ねらいを定めて,大木を一気に駆け上がるハンティング! NHKBS岩合光昭の世界ネコ歩き「イングランド」 付録:ネコの聴覚と視覚

NHKダーウィンが来た生きもの新伝説10月1日は,「白黒つけます!シマウマの謎」.

シマウマの縞模様を取りあげていました.

シマウマが沢山集まっていると「何匹いるか分からなくなる」(番組ディレクター).

確かに映像を見ると---

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第524回「白黒つけます!シマウマの謎」 ─ ダーウィンが来た!生きもの新伝説 NHK

 「水場に集まっていたシマウマを狙っているライオンがいたが、狙いを絞りきることができず狩りを諦めてしまった」とのこと.縞模様はカムフラージュに役立つ!?

 

しかし,生き物の目の見え方を研究している九州大学松千尋さん.いわく:

「ライオンの目は網膜にあるモノを見るための細胞の数が人の3分の1しかない」「シマウマの縞ははっきり見えていない」.

そして,ライオンからシマウマがどのように見えるかを画像処理して提供.なるほど,遠くのシマウマの縞はぼやけてみえません.シマウマの輪郭すらうすぼんやり.

「カムフラージュ説は『動物の目の見え方が人間と同じ』という前提で考え,間違えが生まれた」

「ライオンは視覚ではなく、聴覚や嗅覚を使い狩りをし,最終局面で視覚を使う」

 

ちょうど前日に録画をみたNHKBS岩合光昭の世界ネコ歩き「イングランド」の一場面,正確には二つの場面,を思い出しました.

(なお,シマウマの縞については,再放送,もしくはNHKオンデマンドをご覧下さい)

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NHKドキュメンタリー - 岩合光昭の世界ネコ歩き「イングランド」

 【出演】岩合光昭,【語り】相武紗季

 

鳥の動きを聞き逃さないネコのハンティング1 

塀越しに全く見えない獲物を察知し,一瞬にして捕まえるハンティング

イギリス・ブリストルの高級住宅街.

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Google マップ

 

岩合さん「ご主人の犬の散歩に,ネコがつき合っています」

相武さん「つき合ってあげてるんだ.急いで急いで」

(ネコ.5メートルほど後から早足で---と思ったらすぐにゆっくりした足取り---,石塀に飛び乗ってキョロキョロ)

相武さん「でも,遅れてもあんまり気にしていないみたい」

岩合さん「お散歩.ん?」

相武さん「あれ,何見てるの?蜂を目で追ってるんだ.---まだ見てる.お散歩に追いつけなくなっちゃうよ」

(犬を連れて猫を待つ女主人)「いかないの?」

相武さん「せっかく待っててくれたのに,早くしないと行っちゃうよ」

(歩き出して,離れた所からもう一度ネコを見る女主人.道路を横切ろうとと左右を確認)

相武さん「ネコは---.いたいた」

(犬を連れて道路を横断する女主人.ネコは路上駐車の車の下を眺めて見向きもせず.と思ったら,いきなり渡りはじめる)

相武さん「自分が行きたいときに渡るのね」

 

(駐車した車の前のネコ)

岩合さん「ゴロンゴロンしてごらん.いい子だね」

相武さん「駐車場で一休み?」

(ネコ,岩合さんの前でゴロンゴロン)

岩合さん「はい,ゴロンゴロン.はい.いい子だ」

(ネコ,寝そべってまま毛繕い)

岩合さん「チョコレートの包み紙?アイスクリームかな?」

(いきなり,包みを前足で---そして追いかけまわすネコ)

岩合さん「おっと.おっとっと.遊びはじめた.---よぉ〜!すごいすごいすごい」

相武さん「散歩につき合う気はなくなっちゃったみたい」

(ひとしきり追いかけたり,毛繕いしたり.---耳をそばだて,低い石塀沿いに歩き始め,ひょいと飛び乗って塀の向こうの茂みを覗き込んで----尻尾をピクピクさせながら)

相武さん「塀の向こうを気にしている」

(目つきが変わったように見えるネコ.こちら側に飛び降りて---塀沿いを早足で.止まって塀に向かって座って---音を聞いている?2本足で立ち上がって----向こう側は全く見えないのに---やはり音を聞いている?

岩合さん「立ち上がる」

(位置を変えて,立ち上がるネコ.塀に両足をかけて,一見,塀越しに何か見ているようなポーズ.でも耳の先端がやっと塀を越える程度.頭は出ていないので見ているわけではない)

(塀の上に飛び乗って,今度は茂みを覗き込む)

岩合さんイングランドの庭というのは,植え込みがちょっと深いんですよね.その深みの中に何か見つけたんです.鋭いですね」

(しばらく覗いていたネコ.こちら側に飛び降りて塀沿いに小走りに移動.塀の向こうに神経を集中させながら.また座って,立ち上がって.逆方向に小走りに移動して,塀に両足をかけて)

岩合さん「耳の動き.見えない獲物を狙ってます.もうこのときハンティング,狩りだって事が分かったんですけど.『鳥だ--』と思いました」

(また移動して.塀に足をかけて)

岩合さん「鳥の動きを聞き逃さない.後は飛び出すタイミング」

(また移動して.また足をかけて.足を外して,しゃがんで踏切体勢!)

岩合さん「行くときの腰の入り方.あっ.行きました」

(一気に塀に飛び乗り,素早い動きでそのまま塀の向この茂みの中へ)

 

(鳥の羽を散らかしながら,鳥を食べるネコ.カメラをチラッと見る目つきは今までとは違います)

岩合さん「ネコは本当に野性的です.食べてるときの様子.ちょっと悪い顔します.野生の輝きの一瞬を見せてくれました.素晴らしい動き.躍動的でしたよね」

(庭の塀の前に座るネコ)

岩合さん「食後,満ち足りた時間です.満足してるだろうな」

  

「野生の輝きの一瞬.素晴らしい動き.躍動的」

その通りでした.でも私にとってもっと驚きなのは---

塀越しで全く見えない獲物の位置を音だけで正確に把握し,一気に仕留めたのこの狩りのやり方.

You Tube等に投稿された作品群などとは全くの別物.ネコをよく知るプロ動物カメラマン岩合光昭さんのみに撮影可能な素晴らしい貴重な一瞬.

 

そしてこの「世界ネコ歩き『イングランド』」には,ネコの狩りがもう一場面とらえられています.こちらの映像を見るのは二回目で(前回は前半を見のがし後半のみの視聴),そのときには本当にビックリしました.見直しても驚きは同じ.

 

鳥の動きを聞き逃さないネコのハンティング2

ねらいを定めて,大木を一気に駆け上がるハンティング!

石造りの家と塀が続くコッツウォルズのネコ.

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まーるいニャん.名前はピングー.

ローンボールズのゲームを観戦して,芝生の中に入ってボールを眼で追いかけ,追跡の構えを見せたり.

その後,大木の上に上ったピングー.体は大きくても身軽です.

下りてきて耳をピクピク.

 

相武さん「聞いているのは鳥の鳴き声?」

(石柱の横に座って)

相武さん「尻尾をふりふり,何か企んでる?」

岩合さん「ここで鳥を狙うのかな?物陰に隠れて鳥の動きを」

相武さん「耳.レーダーみたい」

岩合さん「真上で鳥が鳴いた」

相武さん「ここはピングーが良く来るハンティングの場所.鳥がくるのをひたすら待って---

岩合さん「鼻もピクピク動かしてる」

相武さん「鼻も耳も,感覚を研ぎ澄ます」

(やおら動き始めて,樹の下に.上を見上げて.しゃがんで踏切体勢)

岩合さん「おっ.上った」

(一気に木の上へ.5メートル以上は駆け上っている)

相武さん「どこ?いた.左上」

岩合さん「ハンティング.成功したかな?」

相武さん「あっ.何かくわえてる?」

(鳥をくわえて下りてくるネコ)

岩合さん「よっ.どこ行っちゃった?おっ.下りた.あっくわえてるくわえてる.狩りに成功したんだ」

(鳥を置いて,チラッと見るピングー.目つきは先のネコの目と同じ!

岩合さんの声かけにも目もくれず,またくわえて道路を渡って---)

相武さんイングランドのネコ.たくましいね」

 

「ライオンは視覚ではなく、聴覚や嗅覚を使い狩りをし,最終局面で視覚を使う」

ネコも全く同じでした.迫力の点ではライオンに及ばないものの,動きの俊敏さ,美しさではネコが勝っているように思います.

再放送があれば、是非.

番組サイトではさりげない宣伝しかしていません.実際の映像も雰囲気を大事に,そしてネコをいとおしむ編集で,大げさな形容とは一切無縁.

でも,本当は大スクープ映像と言っても良いのではと思いました.

NHKオンデマンドでも視聴可能.

NHKオンデマンド | 岩合光昭の世界ネコ歩き 「イングランド」

www4.nhk.or.jp

「世界ネコ歩き」では,どこの国かは忘れましたが,もう一場面,ネコのハンティングをみせてもらいました.今回の鳥を待つネコ以上に,長い間ネズミを待ち続けたあげくの一瞬のハンティングでした.身近なネコですが,知らない姿を沢山見せてくれる番組です.

 

 

 付録:

ネコの聴覚

▽可聴域

犬猫の聴覚について | 神戸フランダース犬猫皮膚科動物病院

可聴域は人間(20~2万ヘルツ)・犬(15~5万ヘルツ)・猫(30~6.5万ヘルツ)です.

猫は家の中だと安心しているので音にはそれほど敏感でないように感じますが--

猫は犬の2倍,そして犬は人間の約6~10倍聴力が勝れています(猫は五感で一番).低音域は人間とそれほど違いませんが高音域が大きく違っており,犬猫の耳には人間に聞こえない高周波の音も聞き取れることが出来ます.

http://www.myihp.co.uk/animal-hearing-ranges/ では,犬の可聴域 50〜46000ヘルツ,ネコの可聴域 30〜50000ヘルツ.最高はネズミイルカの150000ヘルツ,と記載)

 

ネコの視覚

▽暗闇でも見えるが,視覚自体は--- 

猫の目の仕組み・不思議:暗闇のなかでキラリと光る印象的な大きな瞳|参天製薬

夜行性動物であるネコは暗闇でもモノがよく見えます.ヒトの目と比べても7分の1の光の量で十分というのだからすごいですね.

その理由の1つは暗闇で光る目.ネコの目には網膜の後ろにタペタムという反射板が付いているからなのです.網膜の視神経を刺激しながら入ってきた光を反射し,網膜に返すことで,わずかな光を2倍にして,暗いところでも鮮明に見えるようになっています.

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もう1つの理由は目の大きさ.ネコは身体のサイズにしては大きな目を持っています.目が大きければ大きいほど光の量を多く取り入れることができるのです.大きさを変えて光の量を調節する瞳孔ですが,明るいところと暗いところでは瞳孔の大きさが異なるのはヒトもネコも同じ.電気を付けたり消したりすると,その変化を見ることができます.

ヒトの7分の1の光の量で充分なネコですが,実は視力自体はヒトの10分の1程度しかありません.ちなみに,そんな視力の弱さを補うために,ネコの目は動くものに敏感に反応するようになっています.ねこじゃらしなどをネコの前で動かすと激しく反応するのはそのせいでしょう.対象物が止まると一瞬見えなくなることもあるようです.

さらに,ネコは色もほとんど識別することができません.中でも赤い色はすべて緑色,オレンジ色は黄色に見えています.光の量を感じる桿体(かんたい)細胞が発達している分,色を判断するための錐体(すいたい)細胞が少ないためです.