秋の七草の一つ女郎花.しかし,キキョウと同じ時期(6月/7月)に咲き始め,これから9月までずっと楽しめる花!「をみな」は“のち女性一般を意味する「をんな」に転じた語”.そして,『女郎(じょろう)』は本来貴族の令嬢・令夫人を称する、一種の敬語.をみなへし/ 万葉集 たかまどの,みやのすそみの,のづかさに、いまさけるらむ、をみなへしはも 大伴家持

オミナエシが咲き始めました.

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秋の七草としてよく知られています.しかし,キキョウと同じ時期(6月/7月)に咲き始め,これから9月までずっと楽しめる花!

 

1つ1つは小さい.でもよく見ると,しっかりした花で可愛らしい.今日は,早速,モンシロチョウも.

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とまってはすぐに離れて,別の場所の花へ.写真を撮るのにちょっと苦労しました.一ヶ所に止まっていくつもの花から蜜を摂るには,まだ花が少なすぎたのでしょう.

 

旧字体で「をみなへし」.

万葉集には14首.三代集(古今・後撰・拾遺)でも多く詠まれ,古今集には17首とのこと オミナエシとオトコエシ 女郎花(オミナエシ) 和歌歳時記

とても愛でられていたんですね.オミナエシびいきの私としては,現在ももっと愛されるべき!と思います.

 

語源は,定まっていないようですが.「をみな」の部分だけはしっかり分かっていて,“のち女性一般を意味する「をんな」に転じた語” 女郎花(オミナエシ) 和歌歳時記

万葉集の「をみなへし」の字をまとめてくれているサイトがありました:「姫部四・佳人部為,美人部思,美人部師,娘子部四・姫押,乎美奈敝之,姫部志・娘部四,娘部志 万葉の植物一覧 2美しい女性を表した言葉があてられています.

そして,「女郎花」と記されるようになるのは,平安以降.

『女郎(じょろう)』は本来貴族の令嬢・令夫人を称する、一種の敬語であった」とのこと オミナエシとオトコエシ 

後に「女郎」が一種の蔑称に転じてしまったのが,残念でなりません.

「茎をすらりと伸ばし,枝先に黄色の小花をつける.秋風にしなやかに揺れる姿を,古人は愛すべき美女に見立てて歌に詠んだ女郎花(オミナエシ) 和歌歳時記」のに.

 

オミナエシ

マツムシソウ目 Dipsacales,スイカズラ科 Caprifoliaceae,Valerianoideae(オミナエシ亜科?ノヂシャ亜科?今までのオミナエシ科に相当します),オミナエシ属 Patrinia,オミナエシ P. scabiosifolia  Caprifoliaceae - Wikipedia

オミナエシ科 Valerianaceae」としてあるサイトがほとんどですが,最新の分類ではスイカズラ科が正しいようです.(日本版ウィキペディアにはオミナエシ科でも認められているという曖昧な表記がされていましたが---)

 

Valerianoideae オミナエシ亜科?ノヂシャ亜科?には次のような属があります.

・ Centranthus: 12 species

・Fedia

・Nardostachys : 3 species  (カンショウコウ)

・Patrinia: 17 species オミナエシ属 (オミナエシ、オトコエシ、ハクサンオミナエシ、キンレイカ、チシマキンレイカ、オオキンレイカ)

・Plectritis (Seablushes): 5 species

・Valeriana (Valerians): 125 species カノコソウ属 (カノコソウ、ツルカノコソウ、セイヨウカノコソウ)

・Valerianella (Cornsalads): 20 species ノヂシャ属 (ノヂシャ)

  オミナエシ属 - Wikipedia Caprifoliaceae - Wikipedia

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オトコエシ - Wikipedia ハクサンオミナエシ - Wikipedia http://www.geocities.jp/ootaka502/mokuroku/kinreika.html

オトコエシは

「白花ではあるが同じ時期に同じような花を咲かせ、茎もごつく、毛も有る」

女郎花(オミナエシ)に似て男性的であるので、男郎花(オトコエシ)と呼ばれると言う説が一般的であるが,女郎花が先なのか男郎花が先なのかは明確ではなく,オミナエシ,オトコエシと呼ばれた名の由来もはっきりしていない」オミナエシとオトコエシ

 

 

山田卓三先生の「万葉植物つれづれ(大悠社)」によると

源氏物語枕草子古今集徒然草などにも登場しています.1つ1つは小さいですが集まって咲き,鮮やかな黄色をしているので棟目にもよく目立ちます.秋の七草にも取りあげられている代表的な秋の花です.粟花とも言われています.この黄色のオミナエシの「粟花」に対して,オトコエシは白いので「米花」と言われています.

 

をみなへし/ 万葉集

たかまどの,みやのすそみの,のづかさに、いまさけるらむ、をみなへしはも

高圓(たかまと)の,宮の裾廻(すそみ)の、野づかさに、今咲けるらむ、をみなへしはも  大伴家持 (巻二十 4316)

高圓の,宮の裾廻の、野づかさに、今咲けるらむ、をみなへしはも

 

折口信夫 万葉集

高圓の離宮の山の裾まわりの野の高みに,ちょうど今咲いているだろう.あの女郎花は.