カタクリ;可憐でしかも華やかな花.広く愛され各地に群生地が保存されています.片栗粉はジャガイモ澱粉にその名を譲っていますが. かたかご(堅香子) / 万葉集 もののふの,やそをとめらが,くみまがふ,てらいのうえの,かたかごのはな 大伴家持  

1. カタクリの花

カタクリの花を初めてみたとき,その可憐でしかも華やかな花に感激しました.

写真は北海道北斗市の匠の森公園のウェブサイトから.

北斗市「匠の森公園」カタクリの花が見頃です。 - スタッフブログ

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他にもカタクリの花を見ることができる公園はないかと捜してみたら---.

カタクリを見るスポットをまとめたサイトがありました.【カタクリの花】 カタクリの名所 群生地 撮影スポット

花が咲くのは東京では三月下旬から四月初め.例えば神代植物公園では,「開花時期は3月20日頃から4月10日頃まで」とのこと.片栗 (かたくり) の花 ・・・ 神代植物公園 - めいすいの写真日記

全国各地でとても愛されていることは,市の花,町の花,村の花にカタクリを指定している市町村が20近くはあることで(カタクリ - Wikipedia)よく分かります.

そして,切手にも.

350円切手がカタクリの花だとは知りませんでした.

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カタクリユリ科カタクリ属の植物で日本には一種

( Erythronium japonicum )のみですが,カタクリ属は北半球におよそ20種類(大部分は北アメリカにあり、一部がヨーロッパアルプスや日本を含む東アジア)に分布するとのことです。カタクリとは|ヤサシイエンゲイ

それぞれ花は美しいようですが,日本のカタクリはとりわけ美しく感じるのはひいき目でしょうか.ただし,野生品種は自宅で育てるのにかなり根性がいるようです.

 

(写真は全て英語版または日本語版Wkipedia)

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園芸種もいくつかあり,その中ではエリスロニウム‘パゴダ’Erythronium ‘Pagoda’ という品種が栽培しやすいそうですが花は黄色.カタクリの育て方 - みんなの趣味の園芸 NHK出版 Erythronium 'Pagoda' - Wikipedia

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2. 片栗粉

片栗粉の名前を知らない方はほとんどいないでしょう.

そして多くの方は,今は片栗粉といえばジャガイモ澱粉であることもご存じでしょう.

(商標登録もされているそうです)

カタクリの根から澱粉をとるのはたしかに大変でしょう.

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カタクリを食す

ジャガイモデンプンが用いられる前に最も多くデンプンをとっていた植物は,カタクリではなく葛(くず)のようで,当時デンプンはくず粉と呼ばれていたとのこと.

(更にややこしいことには---.現在「くず粉」は本くず粉と呼ばれ,単にくず粉と書いてあるものはサツマイモデンプンなどが混ざっている,時には全てサツマイモデンプンだったりするとのこと葛粉 - Wikipedia

(ついでに,わらび餅はサツマイモまたはタピオカデンプンで作ったものが大部分で,ワラビ粉で作ったものには,特に「本ワラビ粉使用」と書いてあるとか.

http://www.hokkaidou-bareisho.com/wp-content/uploads/2015/09/20150901.pdf

 

 市販の片栗粉,すなわちジャガイモ澱粉は,料理に欠かせませんね.

特にその透明感から,あんかけのとろみには「片栗粉」が必須.

片栗粉とコーンスターチ(トウモロコシデンプン)の比較クックパッドに掲載されています.片栗粉とコーンスターチの違い - クックパッド料理の基本

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「揚げ衣や焼き菓子の材料として少量のみ使う場合には、互いに代用しても大きな失敗にはなりません。」とのことですが,多くの場合,それぞれの特性に合った料理に用いることが必須のようです.

あんかけ、かきたま汁などには片栗粉:(とろみの色は無色透明 / 温度が下がると粘度が低下)

カスタードクリーム、チーズケーキにはコーンスターチ:(とろみの色は不透明で / 温度が下がっても粘度は持続)

様々な植物の澱粉についての,より専門的な情報は,でん粉原料作物の特性について

を参考に.言葉遣いがやや難しいですが,わかりやすく書かれているように思います.取りあげている澱粉は,米デンプン,麦デンプン,コーンスターチ,ジャガイモ(馬鈴薯)デンプン,甘藷デンプン,タピオカ(キャッサバ)デンプン,サゴデンプン(サゴヤシから採れる)

いろいろな植物からデンプンをとっているんですね.デンプンを料理に用いるのは一部.用途として次のように書かれていました.

「1つめはでん粉の高分子としての性質を利用するものです。片栗粉やコーンスターチのように料理としての利用も多いですが、工業的にも重要なものです。2つめは、でん粉を分解して得られる物質(デキストリン異性化糖など)を利用するものです。3つめは、でん粉を分解して得られる糖を発酵してアルコールを作るものです」

そして世界的には圧倒的に「コーンスターチ」の生産量が多いようです.(80%ぐらいらしい)

 

3.  カタクリは万葉の時代「かたかご」と呼ばれていたそうです.

万葉集にも歌われている「かたかご」がカタクリをさす古名で、それが転じて「かたくり」になった、というのがよく通っている説です。「かたかご」は花の姿が傾いた籠のように見えるところから名付けられたと言われています。また、球根の形が栗を半分にした形に似ているから、花後にできる果実が栗の実の一片に似ているからなど、諸説あります。」カタクリとは|ヤサシイエンゲイ

山田卓三先生の「万葉植物つれづれ(大悠社)」によると

カタクリは小川の流れるゆるやかな林の斜面や土手などに大群落を形成します.この可憐な花が咲き乱れている群落の情景に若い娘たちの群像を重ねた,(万葉集大伴家持の歌)の幻想はすばらしいものです.種子はアリが運び,その散布に役立っていることが知られています.種子をまいてから開花まで,早いもので4年,長いものでは8年かかります.

 

かたかご(堅香子) / 万葉集

もののふの,やそをとめらが,くみまがふ,てらいのうえの,かたかごのはな

もののふの,八十(やそ)娘子(をとめ)らが,汲み乱(まが)ふ,寺井の上の,堅香子(かたかご)の花 大伴家持 (第19巻 4143)

もののふの,八十娘子らが,汲み乱ふ,寺井の上の,堅香子の花

 

斎藤茂吉 万葉秀歌

大伴家持作,堅香子草の花を攀(よ)じ折る歌一首という題詞がある.堅香子はカタクリで薄紫の花が咲き,根から澱粉の良品を得る.

寺に泉が湧くところがあって,そのほとりに堅香子の花が咲いている.これは単独ではなくて群生している.その泉に多くの娘が水を汲みに来て,木良くとおる声で話し合う,それが可憐でいかにも楽しそうである.

物部(もののふ)が多くの氏に湧かれているので「八十」の枕詞とした.ここの「八十をとめ」は,多くの娘ということ,「まがう」は入りまじることだから,ここは入りかわり立ちかわり水汲みに来る趣である.これも前の桃の花の歌に同じく,我妹子にむかって情を告白するのではなく,若い娘の動作にむかって客観的の美を認めてそれにほんのりした情を述べているのである.こういう手法も家持の発明と解釈することができる.前にもあった「かはづ鳴く神奈備川に影見えて今か咲くらむ山吹の花」(第八巻 1435)もまた名詞止だが,幾分色調の差別があるようだ.