我が家のツバキは,ほとんど散ってきています(写真左・中).
我が家のツバキの咲き始めは12月13日( 椿,水仙が咲きました/ミカンの起源 - yachikusakusaki's blog )と12月23日(もう一種類のツバキが咲きました.ツバキにこんなに沢山の種類があるなんて! ).
園芸種のツバキについては,12月23日のブログ後半で書きました.今回はツバキの開花日とツバキ属の花について---.
1. ツバキって春の花?
木へんに春という字を持つツバキ.
(ただし,いわゆる「国訓」:
ショウブは菖蒲ではない.長田弘「花の名を教えてくれた人」 - yachikusakusaki's blog )
もちろん春の季語.でも,春の花のイメージがイマイチ持てない花.
早春の花,ウメと開花日を比べてみましょう.
気象庁のサイトに「生物季節観測の情報」があります.とても面白いサイトです.
ここに,サクラ,アジサイなどと共に,ウメ(白梅,一重)の開花日が載せられています.気象庁 | 生物季節観測の情報 http://www.data.jma.go.jp/sakura/data/ume2010.pdf
はじめに同じ開花日を線でつないだ「等期日線」を見て見ましょう.
近畿及び関東の大部分の地域は,1月31日から2月28日の間に開花することが示されています.
ウメは,寒さの中,時には雪と一緒に咲きますが,冬至と春分の中間点「立春」に合わせて,もしくは,それよりやや遅れて開花するといえますね.早春の花ウメというのもよくわかります.
一方,ツバキの開花日は,気象庁のデータベースに記載され ( 防災情報電文検索(生物季節観測) | 気象庁防災情報XMLデータベース ),これをまとめたマップがウェブ上にありました( つばきの開花日 マップ | 生物季節観測データベース).
主要都市の平年開花日をウメと並べてみました.最初の欄に「ツバキ平年開花日 − ウメ平年開花日」の差の値を書き加えました.
仙台,金沢,東京,彦根,宮崎はウメの開花日より遅れてツバキが開花するようです.
京都に近い彦根,首都東京の開花は2月です.
この結果だけからすれば,ツバキも早春の花,と言えますね.
しかし,他の都市ではツバキの方が早く開花しています.横浜,静岡,長崎は元旦に咲くといってよいでしょう.
そして,今年は多くの都市で更に早く咲いて,
横浜,津,鳥取,高松,長崎などでは,なんと12月開花!
かなり広範囲の地域で,「冬の花」といった方が良い結果です.多くの人が抱く感覚が,おそらくそうであるように.
俳句をつくる方々はかなり苦労されているのでは?
2. ツバキ科,ツバキ属の花
ツバキはツバキ科・ツバキ属に分類されています.ツバキ科は,属との間に連を置いて分類しているようで、ツバキ連、ツバキ属とする場合もあるようです.
ツバキ属には,他に,サザンカ,ユキツバキがありますが,もう一つ,とても重要で誰もが知っている木も!
チャノキです.日本茶,紅茶,ウーロン茶,皆,この木の葉から作られますね.
(主として ツバキ科 - Wikipedia より)
属が異なるナツツバキ属にはナツツバキ(シャラノキ)や,これより小ぶりなヒメシャラ.名前も花も可憐.
椿 / 万葉集
あしひきの,やまつばきさく,やつをこえ,ししまつきみが,いはひづまかも
あしひきの,山椿咲く,八峯(やつを)越え,鹿(しし)待つ君が,斎(いは)ひ妻かも 作者不明 (第7巻 1262)
あしひきの山椿咲く、八峯越え、鹿待つ君が、斎ひ妻かも
▽斎藤茂吉 万葉秀歌
これは,
猟師が多くの山を越えながら鹿(しし)の来るのを,心に期して,隠れ待っている気持ちで,そのように大切に隠しておく君の妻よ
というのである.「斎(いは)ひ妻」などという語は,現代の吾等には直ぐには頭に来ないが,繰り返し読んでいるうちに慣れてくるのである.つまり,神に斎く(いつく)ように,粗末にせず,大切にする妻というので,出てくる珍しい獲物の鹿を大切にする気持ちと相通じている.
「鹿待つ」までは序詞だが,こういう実際からきたまことに優れた序詞が,万葉にはなかなか多い.