昨日,最末尾にやや乱雑に記載した記事の再掲です.
yachikusakusaki.hatenablog.com
トマトの毒にについての記事を,少し整理して載せてみました.
トマトの毒性とジャガイモの毒性
トマトの未熟果実には「トマチン」と呼ばれるアルカロイド配糖体が含まれます.
トマチン | みんなのひろば | 日本植物生理学会 トマチン | みんなのひろば | 日本植物生理学会
によれば,熟した青いトマトになると,その量は1/10程度に,そして完熟トマトは青い熟したトマトの1/100程度にまで減るそうです.
この記述で引用した論文の明示はありませんでしたが,おそらく,
J.Agric. Food Chem. 2002,50,5751−5780
http://toxicology.usu.edu/endnote/Friedman-Tomato-alkaloidsJ-Agric-Food-Chem-2002-50-5751-80.pdf
元のデータを日本語に訳して載せておきます.
表1と表2は,別の論文のデータです.
表1「緑色トマト」と表2「大きな未成熟緑色果実」は,同じ成長段階を指しているのかもしれません.この程度の測定結果の違いはよくあることです.
トマトの果実は成熟するにつれてトマチンの量が減り,赤くなるとほとんどなくなってしまう事が分かります.
そして,トマトの他の部位,葉・茎・花には,「小さな未成熟緑色果実」より多くのトマチンが含まれる.
「トマチン」は,よく知られたジャガイモの芽や緑化した皮に含まれる「ソラニン」「チャコニン」と同じような毒性物質です.
未熟トマトを食べた中毒例をネット上では捜すことはできませんでしたが,マウス/ラットに対する「急性の死にいたる毒性」からは,トマチンもソラニンも毒性は同程度のようです.
(*下記の「LD50」とは,半分の動物が死にいたる量のことです.本当は,同じ種で比較しなくてはいけないのですが----)
トマチン:マウス経口 LD50 500mg/kg 体重
http://www.j-poison-ic.or.jp/ippan/M70115_0100_2.pdf
ソラニン:ラット経口LD50が590 mg/kg 体重
ソラニンによって中毒に至る量は
成人推定中毒量経口 20~200mg
http://www.j-poison-ic.or.jp/ippan/M70115_0100_2.pdf
小児推定中毒量経口 15.6〜40mg
http://www.erc.pref.fukui.jp/center/publish/report/2014/3-3-4.pdf
トマチンの毒性がソラニンと同程度と仮定した場合,青いトマトに含まれるトマチン50mg / kgはぎりぎりセーフ?
ただし,小さいお子さんの場合にはやめておいた方が無難?
そして,未熟なトマトや,さらに含有量が多い花・茎・葉は食べないようにする必要があります.
一方,ジャガイモの中毒例はほぼ毎年のように報告されています.
いずれも芽が出たジャガイモや緑色の表皮を誤って食べたために起きたもので,幸い軽症例:腹痛,吐き気,下痢などです.
食品中の天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」に関する情報:農林水産省
平成26年に起きた小学校給食での集団食中毒では,ジャガイモ中にソラニンが112mg/kg、α-チャコニンが244mg/kg 検出されていました.http://www.erc.pref.fukui.jp/center/publish/report/2014/3-3-4.pdf
ソラニン・チャコニンを合わせれば,下の表の塊茎・表皮つき(苦味あり)の測定結果と合致する量.
http://www.healthyliving.gr/wp-content/uploads/2018/01/Glycoalkaloids-in-Potatoes-a-Review.pdf
また,ジャガイモも,いつも食べている部分=塊茎以外の部分には,かなりの量のソラニンが含まれています.
報告されている症例は軽症ばかりとはいえ,ソラニン等は食べた量次第では死にいたる可能性もある毒物です.
家庭菜園でお子さんが栽培する機会もあるかと思います.くれぐれも注意する必要がありますね.
自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ジャガイモ |厚生労働省
http://www.erc.pref.fukui.jp/center/publish/report/2014/3-3-4.pdf
食品中の天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」に関する情報:農林水産省
http://www.j-poison-ic.or.jp/ippan/M70115_0100_2.pdf
トマチンやソラニンと同じような毒性物質は,ナス属の植物の多くに含まれています.
https://helda.helsinki.fi/handle/10138/20897
量は少ないもののナスにも!中毒するような量ではありませんが.
ナス属の野生種には,かなりの量の同様な毒性物質(アルカロイド配糖体)が.
きれいな花や実をつけている植物が多いのですが,口にはしないようにすべきですね.
イヌホオズキ - Wikipedia タマサンゴ - Wikipedia
ヤマホロシ Solanum japonense ナス科 Solanaceae ナス属 三河の植物観察 ツノナス - Wikipedia