ラベンダー(シソ目第九回/シソ科第四回) 日本でも多く見かけるようになりました.イングリッシュラベンダーはL. angustifoliaと,その園芸品種の名.true lavender等とも.現在重要な産業ともなっている精油を採るために最適な品種.料理にも用いられます.フレンチラベンダーはL. stoechas,L. dentata等ですが,これらはスパニッシュラベンダーとも.ラベンダーの語源の現在の定説は“おそらくラテン語の lividus「青みがかった、鮮やかな」に由来する”

シソ目の植物について,簡単な解説を探してまとめるシリーズ シソ目第九回/シソ科第四回.

 

ラベンダー

日本でも,公園や花畑で見ることが多くなっているラベンダー.

昨年の5月の旧江ノ島植物園/現「江の島サムエル・コッキング苑」の画像.「フレンチラベンダー」と呼ばれる品種が多かったように思います.

 

 

日本へは,すでに江戸時代,文化年間(18041818)に渡来したとのことですが(ニッポニカ),私はあまり見る機会がなく,多くある種・品種を全く識別できません.
園芸ショップでみるラベンダーには,イングリッシュラベンダー,フレンチラベンダーの区別がされていますが---
イングリッシュラベンダーは,ほぼ決まった品種を呼ぶ名前ですが,本来はtrue lavennder 等の方が一般的な呼び方かもしれません.
また,フレンチラベンダーと呼ばれる種・品種がスパニッシュラベンダーと呼ばれることもあり,別にEgyptian と呼ばれるものもある--
 
種類
イングリッシュラベンダー/true lavender/common lavender:
Lavandula angustifoliaと,その園芸品種,さらには,交雑種を指す名前として用いられています.https://en.wikipedia.org/wiki/Lavandula
ただし,Lavandula angustifoliaは,true lavender,garden lavender, common lavender,narrow-leaved lavender,fine labenderとも呼ばれます.
English lavenderはイギリス原産ではないし,最も栽培されているのがフランス.英語圏以外では通用しないのでは.
true lavenderやcommon lavenderの方が広く使われているようにも思います.
この種は,後述する精油を採るラベンダーとして最も広く栽培されていて,その場合には,fine labenderと呼ばれることが多いようです.

https://downderry-nursery.co.uk/product/beechwood-blue/

https://www.rhs.org.uk/plants/articles/10-agm-articles/lavenders-agm

https://www.gardenia.net/plant/lavandula-x-intermedia-hidcote-giant-lavender

https://www.gardenia.net/plant/lavandula-angustifolia-miss-katherine-lavender

フレンチ・ラベンダー:

L. stoechasまたはL. dentata,L. pedunculataが,フレンチラベンダーと呼ばれることがあります.https://en.wikipedia.org/wiki/Lavandula

ただし,L. stoechas,L. dentataは,スパニッシュベンダーとも.

https://en.wikipedia.org/wiki/Lavandula_dentata

https://en.wikipedia.org/wiki/Lavandula_stoechas

https://en.wikipedia.org/wiki/Lavandula_pedunculata

スパニッシュラベンダー:日本では見かけませんが,英語圏では,この名前も使われているようです.上記フレンチラベンダーとも呼ばれるL. stoechas,L. dentataや,L. lanata等が対象.

https://en.wikipedia.org/wiki/Lavandula_lanata

Egyptian lavende:Lavandula multifida.the fernleaf lavender(羊歯葉ラベンダー:日本ではレースラベンダー)
ラベンダーの語源
ラテン語lavareが「洗う」、PIE(インドヨーロッパ祖語)leueも「洗う」を意味するため,lavare「洗う」が語源と思われていたのですが,現在の定説は以下の通り:
 
lavender は,古フランス語の lavendre「ラベンダー(植物)」、中世ラテン語の lavendula「ラベンダー」(10c.)に由来し,これらは,おそらくラテン語 lividus「青みがかった、鮮やかな」に由来する.
 (洗濯物の香り付けや入浴剤として使用されたため,ラテン語lavareが「洗う」、PIE語源 *leueの言葉が生まれたと考えられる.フランス語のlavande、イタリア語のlavandaは,これから生まれた言葉で「洗濯」を意味する)
 
 
香料としてのラベンダー

植物体全体に芳香があり,花が開くころに刈り取り,蒸留法によって香油をとります.これをラベンダー油とよび,主成分は酢酸リナリル.花だけからとるものがもっとも品質が優れています.(ニッポニカ)

現在も多く栽培され,化粧品の香料,香水に用いられます.

 

Molecules. 2022 Jun; 27(11): 3391

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9182314

introductionの記述にによれば,

▽香油用ラベンダーの主な品種は,

ファインラベンダー(fine lavender Lavandula angustifolia Mill.),スパイクラベンダー(spike lavender L. latifolia),およびL. angustifolia × L. latifoliaの不稔雑種であるラバンディン(lavandin L. × intermedia Emeric ex Loisel).
 
 
▽ラベンダー精油の主な生産国はブルガリア,次いでフランスであり,ラバンディン精油のトップ生産国はフランス,次いでスペイン
 
 
精油のおもな成分は酢酸リナリル,リナロール,およびカンファーであり,ラベンダー精油に比べラバディン精油はカンファーが多い.
ラベンダーの精油は,医薬品,香水,化粧品産業で使用される一方,ラバディンの精油は工業用および家庭用の洗浄剤,衛生用品,洗剤に使用される.
 
以下,
Molecules. 2022 Jun; 27(11): 3391

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9182314

のintroduction抜粋をDeepL翻訳で.

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9182314

Molecules. 2022 Jun; 27(11): 3391.

Published online 2022 May 25. doi: 10.3390/molecules27113391

Essential Oil Content and Compositional Variability of Lavandula Species Cultivated in the Mid Hill Conditions of the Western Himalaya

Shalika Rathore and Rakesh Kumar

introduction(DeepL翻訳)

先史時代から薬用・芳香植物(MAPs)の利用はよく知られていたが,近年,これらは価値の高い精油(essential oil)を生産する経済的な作物として世界中で認識されるようになった.

精油を生産する植物は様々な属に属し,その科には,ナデシコ科,キク科,セリ科,ウルシ科,イネ科,フトモモ科などがある.重要な植物の科のひとつはシソ科で,236属,6900~7200種が含まれると報告されている.

シソ科で重要なのはラベンダー属で,40種以上と多くの亜種がある.アロマオイル用の主な栽培種は,ファインラベンダー(fine lavender Lavandula angustifolia Mill.),スパイクラベンダー(spike lavender L. latifolia),およびL. angustifolia × L. latifoliaの不稔雑種であるラバンディン(lavandin L. × intermedia Emeric ex Loisel)である.

ラベンダーの主な生産国はブルガリア,次いでフランスであり,ラバンディン精油のトップ生産国はフランス,次いでスペインである.

ラベンダー種の精油組成はほぼ同様の化学的プロファイルを持つが,成分は通常様々な割合で存在する.いくつかの精油成分,すなわちカンファー,リナロール,酢酸リナリルの存在は,ラバンディン精油の品質決定の一般的な基準である.ラベンダー精油には酢酸リナリル(25-45%),リナロール(25-38%),およびカンファー(0.5-1.0%)が含まれ,ラバンディン精油には酢酸リナリル(28-38%),リナロール(24-35%),およびカンファー(6-8%)が含まれる(それぞれISO 3515:2002およびISO 8902:2009規格による).ラベンダーの精油は,リナロールと酢酸リナリルの含有量が高いため,医薬品,香水,化粧品産業で使用される一方,ラバンディンの精油は通常,カンファーの含有量が高いため,工業用および家庭用の洗浄剤,衛生用品,洗剤に使用される.

精油の収量はラベンダー(40 kg ha-1)に比べてラバンディン(120 kg ha-1)の方が高いが,2018年の国際市場価格によると,ラベンダーの精油の品質と価格(100.89~178.03 USD kg-1)はラバンディン(22.6 USD kg-1)よりも高い.

ラベンダーのエッセンシャルオイルは,生産量は少ないものの,市場で多く望まれているが,ラバンディンのエッセンシャルオイルは,カンファーの含有量が比較的高いため,品質に差がある.

ラベンダーとラバンディンの商業的・工業的栽培は,世界的な需要の増加により,ここ数年で急速に増加している.ラベンダーのエッセンシャルオイル市場は,2020年には5億3,050万米ドルであり,2020年から2025年までのCAGR(複合年間成長率)は10.3%で,2025年には8億6,470万米ドルに達すると予想されている.

ラバンデュラ精油は,ストレス,不安,不眠症,偏頭痛,うつ病の緩和などの用途があり,抗菌,抗酸化,抗コリンエステラーゼどの生物学的特性も有している.

ラバンデュラ種の精油の質的・量的組成は,遺伝的構成,気候,繁殖,形態,品種 ,収穫時期,土壌pH,栄養利用可能性,気象条件]に左右される.

 

料理への利用

https://en.wikipedia.org/wiki/Lavandula

(DeepL翻訳)

料理用のラベンダーは通常イングリッシュ・ラベンダーで,レモンや柑橘系の甘い香りを持つ.パスタ,サラダやドレッシング,デザートのスパイスや調味料として使用され.蕾や緑葉は紅茶に使用される.

https://www.google.com/searchtea with lavender

ほとんどの料理には,乾燥したつぼみが使用される.ラベンダーの葉は,ローズマリーと比較すると,より繊細な風味を持っている.

ラベンダーのつぼみは,料理の甘みと風味の両方を増幅させることができ,羊乳や山羊乳のチーズと組み合わせられることもある.

ラベンダーは焼き菓子やデザートに香りをつけ,特にチョコレートとよく合う.

https://en.wikipedia.org/wiki/Lavandula

アメリカでは,ラベンダーのスコーンやマシュマロを作るのに,ラベンダーシロップと乾燥ラベンダーのつぼみの両方が使われる.

ラベンダーは,ローズマリーを使うレシピのパンに使うことができる.ラベンダーは,料理や蒸留酒に装飾的に使ったり,シャンパン・グラスの装飾や芳香剤として使うことができる.ラベンダーは塩味の料理に使い,煮込み料理や煮詰めたソースに芳香を与える.また,フラン,カスタード,シャーベットの香り付けにも使われる.