桜若葉・柿若葉を詠んだ歌  わが家の庭で,緑が美しいのは柿若葉. 透き通ったような緑で,桜若葉を凌駕していると思います. 残されし蕚(うてな)と蕊(しべ)のいろ匂ふ散りて日もなき葉桜なれば 初井しづ枝  柿の木の若葉のうへに紅き月のぼりてさむき夕となれり 島木赤彦  柿若葉ほぐれそめつつをりをりに朝のかがやく風に吹かるる 遠山光栄  柿若葉惚(ほ)うくる母の叱らるる嘆きかくせよ春もすぎゆく 馬場あき子

今日は,夕方,突然の豪雨.

30分ほどで,ほぼ止んできたとき,お向かいの桜若葉に目が向きました.曇り空でしたが緑が映えていました.

ソメイヨシノはほとんど実をつけませんが(クローン&自家不和合成のソメイヨシノは,例え実をつけても種子の形成にいたらない https://sakuragawa.tsukuba.ch/e227873.html),他の桜では,今は実が熟し始める頃.

先日出かけた大船フラワーセンターの大寒桜.やや大きめの実が緑の葉とマッチしていました.

 

一方,

わが家の庭で,緑が美しいのは柿若葉.

透き通ったような緑です.桜若葉を凌駕していると思いませんか?

 

晴れた日の柿若葉.雨の後もなかなかいいと思いますが,晴れた空をバックにした方がより美しいかなと思います.

 

桜若葉・葉桜を詠んだ短歌

古今短歌歳時記(鳥居正博)に集められている歌で,桜若葉を「愛でている」歌は,ほぼ全て花が散った直後の若芽を詠んだものでした.

私も,花が散った直後の桜若葉は本当に美しいと思います.

今の時期の桜若葉を詠んでいると思われる歌は,暗い気持ちと合わせて詠んだものや,中には,毛虫を歌題にしたものまでありました.

以下は,花が散った直後の若葉を詠んだものです.

 

すでにして花弁(はなびら)散りし葉桜に蕊(しべ)はのこりてしづくをおとす  橋本德寿 海峡

 

残されし蕚(うてな)と蕊(しべ)のいろ匂ふ散りて日もなき葉桜なれば  初井しづ枝 藍の紋

 

 

柿若葉を詠んだ短歌

柿の若芽は,今の時期よりさらに透き通った緑で,明け方,窓を開けたときには,はっとするほどです.ただし,桜葉の違いほどではなく,今の時期の柿の葉も十分美しいと思います.

そして,柿若葉を詠んだ短歌は,どれも,その美しさあってこその歌,と思わせるものばかりでした.

 

柿の木の若葉のうへに紅き月のぼりてさむき夕となれり  島木赤彦 氷魚

 

かきわかば もゆる にはべ の しろすな に あさ を あふるる みぞがは の みづ  会津八一 寒燈集

 

柿若葉目ざめ安らかに照り匂ふこの村の行き行くわれは  古泉千樫 青牛集

 

この夕雨気をふくみて吹く嵐柿のわか葉に音さやかなり  松村英一 やますげ

 

己より放つ反射光に酔ふものか風に乱るる柿青若葉  森本治吉 耳

 

われの眼のめざむるばかりゆく道に柿の若葉に日があたりゐる  佐藤佐太郎 黄月

 

柿若葉ほぐれそめつつをりをりに朝のかがやく風に吹かるる  遠山光栄 青螺

 

柿若葉惚(ほ)うくる母の叱らるる嘆きかくせよ春もすぎゆく  馬場あき子 雪木