ハマユウ2  ヒガンバナ科ハマオモト属に分類されますが,同属の植物のほとんどは熱帯・亜熱帯を原産地とし,浜木綿もおそらくインドネシア原産.ハマオモト属の植物は,百合に似た大きな花をつけるため園芸植物として愛好されています.花の形状,葉の力強さから,古代より日本人の目を引きつけてきた浜木綿は,近・現代でも多くの歌人が取りあげています.  浜木綿の鉢を入れ守り居り午後にしなれば日の光さす 斎藤茂吉

ハマユウ(浜木綿)は,古代より日本人の目を引きつけてきた植物.

yachikusakusaki.hatenablog.com

その花の形状,葉の力強さ----


関東南部以西の海岸に自生してきました.原産地を特定した記事は少ないなか,「インドネシアスマトラ」と特定しているサイトも.

ハマユウ | Crinum asiaticum | かぎけん花図鑑 

水に浮かぶ種が,南の島からが流れ着いて,日本に自生するようになったということでしょうか.

 

植物分類では,

キジカクシ目 Asparagales,ヒガンバナ科 Amaryllidaceae,

ハマオモト属 Crinum、

ハマユウ C. asiaticum

 

属名ハマオモトは浜万年青で,浜木綿の別名としても用いられます.系統樹上,ヒガンバナ亜科のかなり特異な位置のホンアマリリス連の属になります(最下欄系統樹参照)

 

同属の植物は,熱帯〜亜熱帯を原産地とする種がほとんどで,百合に似た,しかも大きな花をつけるため,園芸植物としても愛好され,耐寒種も開発されています.

(*「属名Crinumは,crinon lilyに由来、ギリシャ語のkrinonから」とのこと Crinum Definition & Meaning - Merriam-Webster )

 

ハマオモト属 - Wikiwand

 

Crinum × powellii - Plant Finder

 

浜木綿は,古代,万葉集に詠われて以来,現代に至るまで,多くの歌人に歌題として取り上げられてきました.

以下,古今和歌歳時記(鳥居正博 編著 教育社)から,何首か転載します.

 

 

み熊野の浦の浜木綿百重(ももえ)なす心は思(も)へどただに会はぬかも  柿本人麻呂 (万葉集 巻四 四九六)

 

 

はまゆうふに君が千歳の傘なればよにたゆまじき和歌の浦まみ  西行 (聞書集 一〇三)

 

 

み熊野の浦の浜木綿いはずとも思ふ心の数を知らなむ  源実朝 (金槐集・恋 五〇六)

 

 

はまゆふやかさなる山の幾重ともいさしら雲のそこの面影  藤原定家 (拾遺愚草員外・雑 九〇)

 

 

浜木綿の鉢を入れ守り居り午後にしなれば日の光さす  斎藤茂吉 (寒雲)

 

 

浜木綿の花の夕べも円らなる実の伏す今日も我に安けし  土屋文明 (自流泉)

 

 

法師蝉ひとつなき澄めり浜木綿の花咲く島の潮風の中  木俣修 (歯車)

 

 

咲きさかり一夜を白き炎なす庭の浜木綿すでに深き梅雨  近藤芳美 (アカンサス月光)