コロナ感染 首都圏1都3県では下げ止まり 解除地域では拡大も
NHK NEWSWEB
2021年3月19日 18時26分
緊急事態宣言の解除が決まりましたが,感染状況を示す指標の1つで1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す「実効再生産数」をNHKが簡易な手法で計算したところ,
緊急事態宣言が出ている中でも首都圏の1都3県では収束には向かわず,下げ止まりの状態が続き,
すでに解除されている関西や福岡県では感染が拡大する傾向がみられます.
NHKは疫学の専門家の監修を受け,緊急事態宣言が出されている1都3県と先月末に解除された地域について,18日までのデータに基づいて簡易な手法で実効再生産数を独自に計算しました.
実効再生産数は,1人の感染者から何人に感染が広がるかを示し,「1」を上回ると感染が拡大に向かう一方,「1」を下回ると収束に向かうとされています.
より正確に出すには発症日を推定して計算するなど,さらに多くの条件を考慮する必要がありますが,時間がかかるため,あくまで目安の数値として確認された日ごとの感染者数をもとに簡易な手法で計算しています.
東京都
東京都の実効再生産数は,先月25日の時点で0.84,今月4日の時点で0.97と「1」を下回っていましたが,今月11日時点で1.01と「1」を上回り,18日の時点でも1.06と「1」を上回っています.
神奈川県
神奈川県では,先月25日時点で0.95,今月4日の時点で1.05,今月11日時点で0.96,18日の時点でも0.94と「1」前後で推移しています.
埼玉県
埼玉県では,先月25日時点で0.81,今月4日の時点で0.98と「1」を下回っていましたが,今月11日時点で1.06と「1」を上回り,18日の時点でも1.07と「1」を上回っています.
千葉県
千葉県では,先月25日時点で0.98,今月4日の時点で1.02,今月11日時点で0.88,18日の時点でも0.97と,「1」に近い水準で推移しています.
また,1都3県全体では,先月25日時点で0.88,今月4日時点で1.00,今月11日時点で0.98,18日の時点では1.02と「1」前後で推移していて,緊急事態宣言が出ている中でも収束には向かわず,感染の下げ止まりの状態が続いています.
愛知県
一方,先月末に解除された地域で,愛知県は緊急事態宣言が解除される直前の先月25日時点では0.77と「1」を下回っていましたが,今月4日時点で1.04と「1」を上回り,今月11日時点で0.90,18日の時点で0.98と「1」前後で推移しています.
岐阜県は感染者数が少なくなっていて,単独では統計学的に信頼性が低くなるため示していません.
大阪府は,緊急事態宣言が解除される直前の先月25日時点で0.83,今月4日時点で0.95と「1」を下回っていましたが,今月11日時点で1.04と再び「1」を上回り,18日の時点では1.27と上昇し,感染が拡大する傾向がみられます.
京都府は,今月初めにいったん感染者数が少なくなったことから統計学的に信頼性が低くなるため示していません.
兵庫県は,先月25日時点で0.68でしたが,今月4日時点では1.02と再び「1」を上回り,今月11日時点で1.16,19日の時点では1.44と上昇し,感染が拡大する傾向となっています.
関西の2府1県では,先月25日時点で0.77,今月4日時点で0.94,今月11日時点で1.13,18日の時点では1.27と上昇し,感染が拡大する傾向がみられます.
福岡県
福岡県は,先月25日時点で0.71,今月4日時点で0.79でしたが,今月11日時点で1.00,18日の時点では1.11と「1」を上回り,下げ止まりの状態から,やや拡大する傾向がみられます.
全国
また,全国では,先月25日時点で0.85,今月4日時点で0.99と「1」を下回っていましたが,今月11日時点で1.04と「1」を上回り,18日の時点でも1.07となっています.
専門家「しばらくは宣言に準じた状態自覚を」
「緊急事態宣言の解除が決まったが,1都3県では感染が収まったとは言えず,まだ安心できる状況ではない.
また,関西で感染拡大の傾向が顕著になってきており,今後,『リバウンド』につながっていかないか心配な状況で,本格的に拡大防止の対策を考える時期に来ているのではないか.
1都3県でも宣言が解除されると,さまざまな社会,経済活動が活発になると考えられ,2,3週間後には感染が再び拡大している可能性が否定できない.
まだしばらくは緊急事態宣言に準じた状態にあるのだということを自覚して,昼夜を問わず飲食の場への参加は控えるなど一人一人が引き続き対策に努めてほしい」
と話しています.
尾身会長が会見で連呼した「マンボウ」って何?緊急事態宣言の解除後に使われる?
buzzfeed.com
公開 2021年3月18日
https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/manbou-covid-19
緊急事態宣言の解除を受け,菅首相と新型コロナ分科会の尾身会長が開いた記者会見.連呼された「マンボウ」の意味は,いったい……? Twitterでは「和んだ」「マンボウしか頭に残らなかった」といった声もあがっています.
千葉 雄登 BuzzFeed News Reporter, Japan
籏智 広太 BuzzFeed News Reporter, Japan
政府は3月18日,10週間におよんだ1都3県への緊急事態宣言を21日に解除する方針を決めた.
これを受け,菅義偉首相と新型コロナ分科会の尾身茂会長が開いた会見で連呼されたのが,「マンボウ」という言葉だった.
ネットでは「マンボウしか頭に残らなかった会見だった」などという声も.この言葉は,感染対策として新たに設けられた「まん延防止等重点措置」の略称だ.
まず,会見の内容は…
菅首相は会見で,「飲食店の時間短縮を中心にピンポイントで行った対策は,大きな成果を上げ,1都3県の感染者数は1月7日の4277人から,昨日の725人まで8割以上減少しています」と対策の効果を強調.
東京でも緊急事態宣言解除の目安としていた1日あたり500人の新規感染者数を40日連続で下回っていることなどを説明し,宣言解除の根拠を示した.
また,宣言の解除後も(1)飲食の場での感染対策(2)検査件数を増やすことによる変異株への対応(3)感染拡大の予兆を掴むためのモニタリング検査の拡大(4)ワクチン接種(5)医療提供体制の強化ーーといった,取り組むべき「5つの柱」を示した.
一方,尾身会長は,宣言が延長された2週間はリバウンド(再びの感染拡大)を防ぐための準備期間にする狙いがあったとし,「今までの延長線上にはない対策」が必要と説明.
複数の都道府県で重点的なモニタリング検査が始まり,感染源を探るための深掘り調査を始める準備が整えられていることなどに触れた.
唐突に現れた「マンボウ」
そんな緊張感のあふれる会見のなかで,記者や尾身会長が唐突に用いたのが「マンボウ」というキーワードだった.
Twitterでは「マンボウって何?」「もう,マンボウしか頭に残らなかった」などといった声が上がった.
「調査の結果新たな感染の源があれば飲食だけでなく,そういうことに対する対応を打つ,いわゆる『マンボウ』の実際の対策の一部に入れてくる必要があると思う」
「先ほど言ったサーキットブレーカー,『マンボウ』をいつ適応するかということも含めて,それだけではなくて,色々な指標をもう少し適切な数値に変える必要があるのか,追加的指標を加える必要があるのか」
「『マンボウ』をどう発動するのかはその一部であって,全体をもう少し深めて再検討して,改めるべきことがあったら追加あるいは修正をする」
この「マンボウ」とは,前述の通り,新型コロナ対応の基準となっている新型インフルエンザ等対策特別措置法に2月3日に設けられ,2月13日から施行した「まん延防止等重点措置」の略称だ.
緊急事態宣言は感染が拡大している「ステージ4」で発令されるが,「まん延防止等重点措置」は宣言発令の一歩手前に位置する「ステージ3」で適用される.
感染拡大や医療提供体制の逼迫が懸念される場合に,飲食店への時短営業の命令や協力金の支給が可能となる仕組みだ.
「マンボウ」はいつ使う?
複数の政治部記者によると,「マンボウ」はもともと,首相官邸や記者界隈で使われている言葉だったという.
感染者数が上昇傾向のときに適用する場合を「上りマンボウ」,逆に減少傾向のときに適用する場合は「下りマンボウ」と呼ばれている.
会見で菅首相は,記者からこの「マンボウ」適用の見通しを尋ねられ,「感染状況を踏まえ,専門家に相談してから使える仕組み.いまやるとかやらないではなくて,必要あれば実行に移すのは当然のこと」とだけ述べた.
一方,尾身会長は,2度目の緊急事態宣言発令に至った背景には,国と地方自治体のあいだで対策強化などに関する認識を共有できていなかったことに一因があると指摘.
どの段階で「マンボウ」や緊急事態宣言といったブレーキを踏むべきか,以下のように語った.
「どの状況になったらハンマー打つのか,もう少し具体的に考えたら良いんじゃないかということで,私どもも来週になったら早速そういう準備をしたいと思います」
土記
ブレーカーは五輪にも
青野由利
毎日新聞 2021/3/20 東京朝刊
<do-ki>
電子レンジと電気ポットを同時につけるとテレビもエアコンもパタッと消える.在宅勤務をしているとブレーカーが落ちやすい,と感じるのは気のせいだろうか.
回路に過剰な電流が流れた時に自動的に遮断する「サーキットブレーカー」.それが,新型コロナウイルスの感染制御でも聞かれるようになった.
たとえば英国.長期の全国的ロックダウンではなく,特定の地域で短期集中的に厳しい対策をとる.ミニロックダウンを示すようだが,日本ではちょっと意味合いが違うかもしれない.
3月5日,首都圏の緊急事態宣言の延長にあたり,記者会見で尾身茂さんがリバウンド防止策として「サーキットブレーカー発動」を挙げた.感染拡大の兆候が見えたら自動的に対策にスイッチが入る,というイメージだ.
実は,専門家は第2波流行の時にブレーカーを用意したつもりだった.昨年8月に分科会が示したステージ分類がそれだ.
ステージ4まで行ったら緊急事態宣言が必要.だから一歩手前でブレーカーを落とせるよう,ステージ3の指標と対策を示した.
ところが,昨年11月,東京都の指標がステージ3になってもブレーカーは作動せず.飲食店の営業時間短縮もGoTo事業停止も後手後手に回り,緊急事態宣言が避けられなくなった.
これは知事の総合的判断を尊重した結果.首都圏の宣言解除決定に伴う18日の会見で,尾身さんは「サーキットブレーカーが利かなかった」と述べている.
だから今後は客観的指標で自動的にブレーカーが落ちる仕組みがいる,という判断はよくわかる.ただ,その指標や仕組み作りはこれから.難題だけに,ぜひうまく設計してほしい.
そしてもうひとつ,ブレーカーが欲しいのが東京五輪だ.
海外の観客を入れなくても,選手と関係者で数万人.検査体制が弱く,どんな変異株が流行しているかわからない国からの来訪者もいるだろう.
検査のすり抜けはどれぐらいあるか.感染が市中に漏れ出し,未知の変異株が広がる可能性は? 選手の定期検査は国内の検査を圧迫しないか.感染者らの隔離・療養施設や医療への負荷は?
さまざまな観点からリスクを分析・評価し,「国内外の客観的な感染状況がこうなったら,自動的に中止を考慮」という指標を示してほしい.
ブレーカーが落ちると不便なのは確か.でも,火事になるよりずっといい.
(専門編集委員)