機能不全の「公助」 雨宮 処凛(かりん)
東京新聞 紙つぶて
2020年9月30日 夕刊
先日,衝撃的な数字が発表された.八月の自殺者が千八百人を超えたというものだ.
前年同月比で二百四十人増.特に女性の増え方が凄(すさ)まじく百八十六人増.
一方,七月の労働力調査では,非正規で働く人は百三十一万人減(前年同月比).男性は五十万人,女性は八十一万人.
それだけの人が突然仕事を失った.
コロナ不況は多くの人を追い詰めている.
「新型コロナ災害緊急アクション」には,今も「所持金が百円ほど」「この数日野宿」というSOSが届き続けている.一時は持続か給付金などで一息つけたものの,この夏で給付金が尽きたという声も少なくない.
そんな中,心配なのは「住居確保給付金」を受けている人たちのことだ.仕事を失った人などに家賃を支給する制度(上限あり)だが,支給は最大で九ヶ月.ということは,この年末年始に支給が切れてしまう人が続出するのだ.
最悪,大量ホームレス化が起きかねない.
よって,住まいの貧困に取り組む支援団体などは,この給付金の延長を求めている.
自治体の相談窓口職員の増員も必要だ.
例えば大阪市では,住居確保給付金の申請件数は前年比の二百七十倍に.それなのに職員数は同じ.
生活保護もそうだが,コロナによる失業などで困窮者の窓口はどこもパンク寸前だ.
福祉崩壊が起きないよう,まずは現場に人員を.
それが担保されてこそ,「公助」は機能する.
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厚生労働省は1日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で解雇・雇い止めになった人が、8月31日現在で見込みも含めて5万326人に上ったと発表した。
また、総務省が1日発表した労働力調査では、7月の完全失業率(季節調整値)は前月比0・1ポイント上昇の2・9%で、2カ月ぶりに悪化した。
完全失業者数は前年同月比41万人増の197万人。6カ月連続の増で、増加幅は2010年1月以来の水準。
解雇・雇い止めの人数は、厚労省が1月末から都道府県労働局やハローワークの情報を集計。これまで宿泊業や飲食業で目立ったが、8月からは製造業が最多となった。
総務省の労働力調査でも厳しい雇用情勢がうかがえる。就業者数は6655万人と前年同月比で76万人減り、4カ月連続の減少。
うちパート・アルバイト、派遣社員などの非正規労働者は2043万人で、前年同月から131万人減り、減少幅は比較可能な14年1月以降で最大となった。
正規労働者は前年同月比52万人増の3578万人。
一時急増した休業者は220万人で新型コロナの影響を受ける前の水準に戻りつつある。
一方、厚労省が同日発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は1・08倍で、前月を0・03ポイント下回った。7カ月連続の減で、14年4月以降、6年3カ月ぶりの低水準。【中川聡子、矢澤秀範】