“Cornflower Blue コーンフラワーブルー“ が美しいヤグルマギク.
英語でcornflowerと呼ばれる種は
キク科ヤグルマギク属 (Centaureaセントーレア/セントウレア)のCentaurea cyanus.
和名がヤグルマギク
:ヤグルマソウと呼ばれることもありましたが,今は植物学者の要請に従い?ほぼヤグルマギクに統一.
セントーレア/セントウレアという名称は,ヤグルマギク属に属する種の総称とするのが本来の使い方.
しかし,日本の園芸の世界では
「セントーレアは多年性のもののみを指すことが多く,種類が多数あります.
宿根ヤグルマギクと呼ばれるブルー花のモンタナやピンク花のデアルバータ,シルバーリーフのピンクダスティミラーやマジックシルバー,セントーレア・ニグラ,黄色花のオウゴンヤグルマギクなどが出回ります.姿はそれぞれ異なりますが,丈夫でやや暑さに弱い性質は共通しています」セントーレア 新・花と緑の詳しい図鑑
http://garden-vision.net/flower/sagyo/centaurea.html https://shiny-garden.com/post-25332/
ヤグルマギクの日本への渡来は明治期とされていますが,長塚節,与謝野晶子,北原白秋,石川啄木といったよく知られた歌人が「やぐるまの花」として詠っています.(鳥居正博 古今短歌歳時記)
渡来してすぐに日本人の心を捉えた花といえるでしょう.
うば玉の髪より白き簾(すだれ)より涼しきいろの矢ぐるまの花 与謝野晶子
函館の青柳町こそかなしけれ 友の恋歌 矢ぐるまの花 石川啄木
一方,原産地とされるヨーロッパ/西アジアでは,古来から様々な装飾に用いられ,宮廷でも愛された花として知られています.
古代エジプトの遺跡からは,セントーレアの図柄や花自体が発見され,人間が利用した最も古い花の一つとみなされています.
種としてはCentaurea depressa.
英語圏ではIranian knapweed(イランヤグルマソウの意)が通称.
https://en.wikipedia.org/wiki/Centaurea_depressa
1350BCの壁タイルに描かれ,
https://academic.oup.com/jxb/article/60/12/3297/523968
有名なツタンカーメンの棺を飾る花輪には,オリーブ,ケシ等と共にセントーレアが.
初期ルネッサンスの名画
ボッティチェリ(ボッティチェッリ1445- 1510)の“春(プリマヴェーラ)”.
ローマ神話の女神フローラの衣装を彩る花にセントーレアが見られます.こちらは,ヤグルマギクCentaurea cyanus でしょう.
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A9
ボッティチェリはヤグルマギクが好みだったのか,もう一つの代表作”ヴィーナスの誕生”にもヤグルマギクが描かれています.
“岸へ上がろうとするヴィーナスに,ニンフが彼女に赤いローブを渡している.ニンフはギリシャ神話では,ヴィーナスに仕える三人のホーラーたち(季節と盛衰と秩序の女神)の一人で,季節の女神である.
彼女の華やかなドレスと,ヴィーナスに差し出しているローブには,ヒナギク,桜草,ヤグルマギクなど,「誕生」の主題にふさわしい,春の花が刺繍されている.”http://art.pro.tok2.com/B/Botticelli/Venus.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/_Botticelli_-_La_nascita_di_Venere_-
そして,あのマリー・アントワネット(1755年- 1793年)が愛した食器の図柄にはヤグルマギクが.
https://enfilade18thc.com/2016/11/03/exhibition-marie-antoinette-a-queen-in-versailles/