「強く,優しく」'Be strong, be kind'.感染拡大抑制にほぼ成功しているニュージーランドのアーダーン首相が演説の締め括りにいつも使う言葉.至る所に掲げられているニュージーランド政府のメッセージは“親切に,落ち着いて” BBC日本語版が,アーダーン首相のリーダーシップに世界中から注目が集まっていることを報道しています.「コミュニケーション能力が実に見事で,共感力も優れている」「発言は理にかなっていたし,理にかなっているという部分を市民は本当に信頼した」

新型コロナウィルスの感染防止という難局の打開に世界の国々が直面し,各国のリーダーの資質も問われています.

日本では,ドイツ・メルケル首相の指導者としての力量と実直で心のこもった呼びかけが賞賛されています.

 

一方,あまり取り上げられていない指導者に,感染拡大抑制にほぼ成功しているニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相がいます.

メルケル首相と共通するのは,明確なメッセージ,コミュニケーション能力,そして共感力といえるのではないでしょうか.

 

BBC日本語版ウェブサイトが,彼女のリーダーシップの見事さを伝えています.そのまま転載します.

科学と共感力で「成功」NZに注目集まる 各地でロックダウン緩和の動き - BBCニュース

(英文  https://www.bbc.com/news/world-asia-52344299

 

私が強く印象に残ったのは,

至る所に掲げられているというニュージーランド政府のメッセージ; “Be kind. Stay calm.  親切に,落ち着いて”

f:id:yachikusakusaki:20200428154558j:plain

 

そして,

アーダーン首相が演説の締め括りにいつも使う言葉は,「強く,優しく」'Be strong, be kind' .

ドイツ・メルケル首相の3月18日の演説の締め括りは「皆様,ご自愛ください,そして愛する人たちを守ってください」

https://www.mikako-deutschservice.com/

 

 

 

BBC NEWS JAPAN

科学と共感力で「成功」NZに注目集まる

Coronavirus: How New Zealand relied on science and empathy

科学と共感力で「成功」NZに注目集まる 各地でロックダウン緩和の動き - BBCニュース

 

f:id:yachikusakusaki:20200428153955j:plain

 

新型コロナウイルスの感染拡大防止策をめぐり,一部の国や地域で緩和の動きが見られる中,感染拡大抑制の成功例としてニュージーランドに,そしてジャシンダ・アーダーン首相のリーダーシップに世界中から注目が集まっている.

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は20日新型コロナウイルスの市中感染を封じ込めるという「ほとんどの国ができなかったことを達成した」と述べ,28日からロックダウン(都市封鎖)を段階的に緩和すると発表した.

同国のロックダウン措置には,制限内容に応じたレベル分けがある.現在は最も厳格な「警戒レベル4」(「不可欠な移動」以外は自宅待機など)で,これを「レベル3」に引き下げるという.

 

段階的に移行,移動規制なども継続

 

「レベル3」では,学校は「受け入れ人数を制限」して再開される.事業も再開できるが,「顧客との物理的な接触」は認められない.

また,10人までの集会は,結婚式や葬儀,タンギハンガ(マオリ族の葬儀)に限り許可される.

個人の移動も引き続き制限され,仕事や学校,食料品や必需品の購入,運動のための外出以外は自宅待機となる.通勤などで公共交通機関を利用する場合,他人と2メートル離れなければならない.

3月19日から始まった外国人旅行客に対する国境閉鎖についても,方針は変わっていない.

「レベル3」の期間は少なくとも2週間続き,5月11日に新たな決定が下されることとなる.

アーダーン氏は,時期尚早な緩和開始で,これまでの犠牲を無駄にしてはならないとしている.

ニュージーランド政府の新型ウイルス対応を批判する声も一部にはある.しかし,政府が市民に示してきた共感力や明確で分かりやすい説明,そしてあくまでも科学を重視し信頼するというその姿勢は,模範的な政府対応だったと,BBCのシャイマア・ハリル記者は書く.

 

一晩で方針転換

 

今年3月,ニュージーランドはモスク(イスラム教礼拝所)銃撃事件からまもなく1周年を迎えようとしていた.13日に追悼式典が予定される中,世界保健機関(WHO)は同11日,新型ウイルスの感染拡大はパンデミック(世界的大流行)だと宣言した.

BBCのハリル記者は当時,WHOによるパンデミック宣言直後の大規模集会に不安はないのか,アーダーン首相に尋ねた.首相は,既存の科学的助言に基づき,懸念はないと答えていた.

ところが,事態は一夜にして一変した.アーダーン氏は追悼式典を中止しただけでなく,全世界からの入国者に対して,入国後14日間の自主隔離を実施すると発表した.

これは世界的に最も早期で,最も厳格な自主隔離措置の1つだった.そしてここから,1週間後の完全なロックダウンに至った.

「我々は厳しく,そしてこの早い段階から対応する.(中略)国内の感染者数は102人だけだが,イタリアもかつてはそうだった」と,アーダーン氏は当時,市民に語った.

ロックダウン開始から2週間で,ニュージーランドでは新しく確認される感染者の数が着実に減少した.1人の感染者が他の人に移す割合は,1人未満だったと確認されている.

ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると(日本時間22日午前現在),人口約490万人のニュージーランドで確認された感染者は1451人,死者は14人となっている.

 

ニュージーランドの「成功」の鍵は

 

言うまでもなくニュージーランドは小さい国で,これまでに1万以上が死亡するなど甚大な被害が出たニューヨーク市(人口約840万人)よりも人口が少ない.島国なので国境を封鎖するのも簡単だ.こういった条件がすべて,新型ウイルスの流行発生時に有利に働いた.

しかし,人口比の感染率が特に低い国の1つとなった主な要因は,政府からのメッセージが明確だったと評価されている.

「COVID-19(新型ウイルスによる感染症)との戦争」を宣言した諸外国とは異なり,ニュージーランド政府は何よりも「COVID-19に対して団結」するよう市民に訴えた.アーダーン首相は,ニュージーランドのことを繰り返し「500万人のチーム」と呼んでいる.

 

新型ウイルス対策についてニュージーランド政府に助言した,オタゴ大学公衆衛生学部のマイケル・ベイカー教授は,「ジャシンダ(アーダーン首相)はリーダーとして,コミュニケーション能力が実に見事で,共感力も優れている」と評価する.

「それに,彼女の発言は理にかなっていたし,理にかなっているという部分を市民は本当に信頼したのだと思う.政府の指示の順守率は高かった」

 

イカー教授は,効果的なパンデミック対応には,「科学と指導力が一体になる必要がある」と指摘する.

科学的知見は,日々の記者会見でアーダーン氏の隣に立っている保健省のアシュリー・ブルームフィールド長官が提供してきた.

 

「ブルームフィールド氏は発生当初から,COVID-19をめぐる多くの複雑な健康問題を慎重かつ冷静に伝え,政府決定の地固めをしてきた」と,ラジオ・ニュージーランドのサラ・ロブソン記者は言う.

「ブルームフィールド氏は,感染者数の増加について今後の展望を明確に伝えていたので,アーダーン首相がロックダウン開始を宣言した時,市民はその理由を理解していた」

 

経済より健康を優先

 

新型ウイルスの最新研究について,政府に助言し定例会見にも参加してきたオークランド大学の准教授,スージーワイルズ博士は,アーダーン氏や政府が明確に市民の健康を最優先してきたことが,COVID-19対応の鍵だったと言う.

経済への影響を恐れて行動制限を遅らせたほかの国は現在,はるかに困難な時期に突入している.

ワイルズ氏は,「住民が死んでしまったとか,どんどん死んでしまうのは言うまでもなく,経済にとって打撃のはずだ」と述べた.

 

「強く,優しく」'Be strong, be kind'

 

アーダーン首相は,ロックダウンの詳細や今後の感染者数の見通しについて市民に伝える際,優しさという面にも焦点を当ててきた.

首相の公の場での発言のほとんどは,同じメッセージで締めくくられている.

「強く,そしてお互いに優しく」

f:id:yachikusakusaki:20200428154558j:plain

 

アーダーン氏はカジュアルな服装で定期的にフェイスブックに登場し,常に笑顔で,私生活の一部を共有している.一方で,市民からの質問に答える際には,決して事態を過小評価しない.

ニュージーランド国内では,そうしたアーダーン氏の振る舞いや揺るがない姿勢が称賛されている.

「優しいだけでなく,きっぱりと決断する.おかげで私たちは,何をしてよくて,何がだめないのか,はっきり分かる」と,オークランドを拠点に活動する保険監督官のトマス・ウェストン氏はBBCに述べた.

これに対してアーダーン首相は,医療関係者の働きや,市民がロックダウンを支持してくれたことが成功に結びついたと称賛している.

ニュージーランド人は自分たちの力を証明してくれた.最も素晴らしい方法で」

 

アーダーン氏は最近,ニュージーランド国民への影響を考慮して,自分と閣僚,そして公共サービスの責任者について,今後6カ月間20%減給すると発表した.