ムクノキ2 オホクニヌシは,椋の実のおかげで,「葦原の中つ国を統(す)べ治め」ることができた?? “スサノヲが倒れた室屋の垂木の一つ一つに結びつけられたおのが髪の毛をほどいているすきに,オホナムジとスセリビメは,遠く遠く逃げることができたのじゃった.” “ そこでオホナムジは,その生太刀(いくたち)と生弓矢(いくゆみや)とをもって,八十(やそ)の神がみを追い払い遠ざけての,坂の屋根ごと追いつめ,河の瀬ごとに追い払(はろ)うて,葦原の中つ国を統(す)べ治め,はじめて国を作りたもうたのじゃ.”

“三浦祐介著 口語訳古事記[完全版]文藝春秋”をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ.

 

ムクノキ2 

オホクニヌシは,椋の実のおかげで,「葦原の中つ国を統(す)べ治め」ることができた??

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ムクノキ(椋の木) - 庭木図鑑 植木ペディア

 

yachikusakusaki.hatenablog.com

オホナムジ(オホクニヌシ)は,大神(スサノヲ)から四度にわたって試練を与えられます.

はじめは,寝室のヘビ.翌日のムカデとハチ.

さらには,射入れた矢を探しに入った野に放たれた火.

いずれも,スセリビメやネズミの助けで切り抜けたオホナムヂ.

 

最後の試練は,大神(スサノヲ)の頭(かしら)のムカデ.

スセリビメの機転で,ムクの木の実と赤土を口に含むと,大神は「咋(く)いちぎって唾き出しておるのじゃと思うての,心のなかでいとしい奴じゃと思うて,心を許して眠ってしまったのじゃ」

そのすきに,オホナムジとスセリビメは,大神のもとを逃げ出し----,オホナムジは,オオクニヌシとして

「葦原の中つ国を統(す)べ治め,はじめて国を作りたもうたのじゃ.」

 

古事記 神代篇 其の三

三浦祐介著 口語訳古事記[完全版]文藝春秋

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 そこへ,オホナムジ(オホクニヌシ)が射入れた矢を持って現れ出たので,ついにスサノヲも折れるしかなくての,オホナムジを家の中に連れて入り,大きな大きな室屋(むろや)に呼び入れての,おのれの頭(かしら)のシラミを取ろうとして,その頭を見るとの,それはシラミではのうて,なんと,大きなムカデがうじゃうじゃと這(は)いまわっておったのじゃ.

 それで,オホナムヂが困っておると,またもや,妻のスセリビメが,ムクの木の実と赤土とを持ってきての,こっそりと夫のオホナムヂに渡したのじゃ.

それを見て,しばらく考えておったオホナムジは,わかったのじゃな.すぐにその実を咋(く)いちぎると,赤土といっしょに口の中に拭くんで唾き出したのじゃ.

すると,そのさまを見た大神は,ムカデを咋(く)いちぎって唾き出しておるのじゃと思うての,心のなかでいとしい奴じゃと思うて,心を許して眠ってしまったのじゃ.

 

 そこでオホナムヂは,眠っておるスサノヲの長い髪の毛をつかむと,その室屋の屋根の裏に渡してある垂木(たるき)ごとにの,その髪をわけて結び着け,五百人(いほたり)がかりでしか引けぬ大岩をその室屋の戸口に運んできて閉ざしての,その妻スセリビメを背負うと,急いで,その大神の生太刀(いくたち)と生弓矢(いくゆみや)と,また,その天(あめ)の詔琴(のりごと)とを取り持って逃げ出そうとした,その時,手に持っておった天の詔琴とを取り持って逃げ出そうとした,その時,手に持っておった天の詔琴の絃(つる)が,室屋の傍らに立つ樹(き)にふれてしもうての,地(つち)も揺れ動くばかりに鳴り響いたのじゃ.

 その音を聞いて,ぐっすりと寝ておった大神が驚いてとび起きたのでの,垂木ごとに結ばれておった髪の毛に引かれて,その室屋が引き倒されてしもうたのじゃ.そのために,すぐにはあとを追うこともできなくての,スサノヲが倒れた室屋の垂木の一つ一つに結びつけられたおのが髪の毛をほどいているすきに,オホナムジとスセリビメは,遠く遠く逃げることができたのじゃった.

 

 それでもスサノヲは,葦原(あしはら)の中つ国につながる黄泉(よも)つ平坂まで追って行っての,ようようにはるか遠くにふたりの姿を望み見て,オホムナジに呼びかけたのじゃ.

 

 その,お前の持っている生太刀(いくたち)と生弓矢(いくゆみや)とをもって,そなたの腹違いの兄どもや弟どもを,坂の尾根まで追い詰め,また,河の瀬までも追い払い,おのれが葦原の中つ国を統(す)べ治めてオホクニヌシとなり,また,ウツシクニタマとなりて,そこにいるわが娘スセリビメを正妻(むかひめ 原文“嫡妻”)として,宇迦(うか)の山のふもとに,土深く掘りさげて磐根(いわね)に届くまで宮柱を太々と突き立て,高天の原に届くまでに屋(や)の上のヒギ(神社などの屋根の上に高く伸びた棒)を高々と聳(そび)やかして住まうのだ,この奴(やつこ)め.

 

 そこでオホナムジは,その生太刀(いくたち)と生弓矢(いくゆみや)とをもって,八十(やそ)の神がみを追い払い遠ざけての,坂の屋根ごと追いつめ,河の瀬ごとに追い払(はろ)うて,葦原の中つ国を統(す)べ治め,はじめて国を作りたもうたのじゃ.

 

語り部独白 こうしてオホナムジはの,スサノヲにもろうたオホクニヌシの名のとおりに,葦原の中つ国の主になりたもうたのよ.稲羽(いなば)への旅に始まって,苦しくはるかな道のりじゃったよのう.)

 

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