おとめ座（＊新7）
1. アストライアー（Astraea）/ユースティティア（Iustitia)
2. デーメーテール（Demeter）/ケレース（Ceres）
3. エーリゴネー（Erigone）
4. テュケー (Tyche）/フォルトゥーナ（Fortuna）
5. パルテノス（Parthenos）
今日は，4. テュケーの(2).
テュケー(1) http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/04/17/110322
運命（fortune），運/巡り合わせ（chance），摂理（providence），宿命（fate）を司る女神．ローマ神話では，フォルトゥーナ（Fortuna）．運命を司るという大きな力をもつ女神で，ピンダロス，アイスキュロス，アイソーポス（イソップ），アルクマン等，古代ギリシャの詩人・作家たちの著作に登場します．その出生については，定説が見当たりません．ヘーシオドスによればその数三千人のオーケアニス（オーケアニデス）の一人．
4. テュケーの(2)
運命（fortune），運/巡り合わせ（chance），摂理（providence），宿命（fate）を司るテュケー．
the Theoi projectのサイト TYCHE (Tykhe) - Greek Goddess of Fortune & Luck (Roman Fortuna)
によれば，テュケーは様々な象徴物とともに描かれています．
TYCHE CULT - Ancient Greek Religion
以下，英文の拙訳で（私には難しい英文で，うまく訳せません．間違えがあると思います）
舵をもち，道案内して，世の中の出来事を指揮している神と考えられ，その点では，彼女は“モイライ”の一人と呼ばれ（＊）ます．
変わっていく不安定な運命を象徴し，どの方向へも転がすことができる球をっています．
プルースト（デーメーテールの息子で富を司る盲目の神）またはコルヌコピアイ（豊穣の角）と共に描かれ，彼女は沢山の幸運の贈り物のシンボルとなっていました．
Tykhe was depicted with a variety of attributes--holding a rudder, she was conceived as the divinity guiding and conducting the affairs of the world, and in this respect she was called one of the Moirai (Moirae, Fates)
; with a ball she represented the varying unsteadiness of fortune, unsteady and capable of rolling in any direction
; with Ploutos (Plutus) or the cornucopia, she was the symbol of the plentiful gifts of fortune. TYCHE (Tykhe) - Greek Goddess of Fortune & Luck (Roman Fortuna)
ネメシス（公平な分配）（＊＊）は，間違えないよう注意しなければいけませんが，テュケーのダウンサイドと見なされます．彼女は幸運でもたらされる行きすぎた恵みをチェックします．
Nemesis (Fair Distribution) was cautiously regarded as the downside of Tykhe, one who provided a check on extravagant favours conferred by fortune.TYCHE (Tykhe) - Greek Goddess of Fortune & Luck (Roman Fortuna)
このペア（ネメシスとテュケー）はギリシャの壺絵で連れ添って描かれています．
YCHE (Tykhe) - Greek Goddess of Fortune & Luck (Roman Fortuna)
この壺の絵では，右のネメシス（義憤）が腕をテュケー（幸運）にからめ，ヘレン（ヘレネー）を指さし告発しています．ヘレンはパリス（＊＊＊）と駆け落ちすることをアフロディーテーに勧められていました．
The pair were often depicted as companions in Greek vase painting.
In the vase painting (right) Nemesis (Indignation) with her arm around Tykhe (Fortune) points an accusing fingure at Helene, who Aphrodite has persuaded to elope with Paris.TYCHE (Tykhe) - Greek Goddess of Fortune & Luck (Roman Fortuna)
＊
モイライ
モイライは運命の女神を意味し，クロト (紡ぐ者) ，ラケシス (分け与える者) ，アトロポス (曲げえない者)の３姉妹を指します．Moiraiとは - コトバンク
各人のためにその運命の糸を紡ぎ，糸巻きに巻取り，断ち切るとされた．
MOIRAE (Moirai) - The Fates, Greek Goddesses of Fate & Destiny (Roman Parcae)
アトロポスが過去，クロトが現在，ラケシスが未来を司る．（ブリタニカ国際大百科事典小項目事典より） モイライとは - コトバンク
この３姉妹は，テュケーの役割と重なりますが，テュケーがモイライと呼ばれることはほとんどないように思います．
しかし，ピンダロス（古代ギリシャ詩人）はテュケーをモイライの一人で，姉妹たちよりパワフルな力を持つ女神と扱っていたとのことです．TYCHE CULT - Ancient Greek Religion
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ネメシス
ギリシア神話の女神．
不当な事柄に対する義憤，とくに人間の高慢な言動に対する神の怒りと，神罰としての報復の擬人化と解釈されている．［伊藤照夫］（日本大百科全書 ニッポニカ）
ヘシオドスによれば，この女神はニクス（夜の神）の娘とされているが，女神アイドス（羞恥(しゅうち)）とともに「鉄の時代」になると人間界を見捨ててしまう．
また白鳥に身を変じたゼウスと交わって，ヘレネとディオスクロイを生んだとも伝えられる．
ネメシスは文学，とくに悲劇にしばしば登場し，その性格が深化されている．崇拝の対象としては紀元前6世紀ごろにすでに祭儀が執り行われていたといわれ，アッティカ地方のラムヌスにある神殿は有名であった．［伊藤照夫］（日本大百科全書 ニッポニカ）
＊＊＊
パリス Paris
ギリシア神話のトロヤ伝説に現れる英雄．
トロヤ王プリアモスの子で，アレクサンドロスともよばれ，その神にも似た美しい容姿は有名であった．彼はやがて国を滅ぼすもとになるであろうとの夢占いから，生まれるとすぐイデ山中に捨てられた．そして羊飼いとして育てられたパリスは，美貌(びぼう)もさることながら武勇にも優れた青年に成長する．
ペレウスとテティスの婚礼の際，その宴席に投げ込まれたエリスの黄金のリンゴをめぐって，ヘラ，アテネ，アフロディテの三女神が「いちばん美しい女」をそれぞれ主張して争ったとき，ゼウスはイデ山中にいるパリスにその審判をゆだねた．
三女神はそれぞれに美しく装い，さらにパリスに贈り物を約束した．ヘラは全アジアの支配権を，アテネはつねに戦争に勝つことを，またアフロディテは人間界でいちばん美しい女を与えようといった．
そしてパリスはアフロディテを選んだ．［伊藤照夫］（日本大百科全書 ニッポニカ）
そこで女神はパリスをスパルタ王メネラオスの妻ヘレネのもとへ導いた．彼はスパルタで歓待されたが，メネラオスがクレタ島へ行っているすきにヘレネを説き伏せ，スパルタを出奔する．［伊藤照夫］（日本大百科全書 ニッポニカ）
こうしてヘレネをめぐってトロヤ戦争が始まる．
ホメロスでは，パリスは柔弱な美男子として描かれている反面，雄々しく戦場を駆け巡る勇者としても描かれている．
とくに弓の技に優れ，アキレウスの唯一の弱点であるその踵(かかと)を射て不死身の彼を倒した．
しかし，彼もフィロクテテスの射るヘラクレスの毒矢を受けたので，その傷の治療法を知っているイデ山のニンフでかつての彼の妻オイノネに尋ねたが，彼女は捨てられた恨みから拒否したため，パリスはこれがもとで死んだ．後悔したオイノネは自殺したという．ただしこのオイノネのエピソードは，ヘレニズム時代の追補であろう．［伊藤照夫］（日本大百科全書 ニッポニカ）
